イスラエルの宣戦布告

私だけでなく、ほとんどの方が願うのは「殺し合いは止めてほしい」ということだろう。

イスラエルとパレスチナは宗教的、政治的な理由などから過去何十年にもわたって対立してきた。だが、どんな重要な理由があったとしても、無垢な市民を殺害していいわけがない。戦争という状況は人の意思を無視して、大量殺戮がおこなわれるところに残虐性があり、人間の醜悪さがでてしまう。

過去数日での死者数は、1973年の第4次中東戦争以来で最悪という報道もあり、両サイドはまず撃ち合いをやめなくてはいけない。だが、ネタニヤフ首相は8日、「イスラエル基本法第40条に基づく戦争状態の宣言」を発表し、50年ぶりに宣戦布告を行って全面戦争に突入した。

同地域ではこれまでも多くの衝突があったが、アメリカなどが歯止め役として一役買ってきたことで全面戦争を避けられてきた。しかし今のバイデン大統領に両サイドを説き伏せて撃ち合いを止めさせるだけの技量があるようにはみえない。むしろバイデン氏はイスラエル側について、戦争の加担者になるようにも思える。もちろん日本に仲裁役が務まるとも思えない。

「バイデンよ。眼を覚まして動いてくれ!」

問われる国連の意義

日本時間19日、ニューヨークの国連総会にウクライナのゼレンスキー大統領が登壇した。ロシアに軍事侵攻された国の代表であり、初めて訪れた国連でどういった話をするのかが注目された。

「我々は団結することで各国に平和をもたらせることができ、団結することで戦争を防止できるはずです。ロシアの欺瞞と侵略を許容してしまうと、この会場の多くが空席になるでしょう。どんな戦争も最終戦争につながりかねないのです。侵略戦争が二度と起きないように我々は団結するしかないのです」

たいへん真っ当な主張である。国連という場で、特にロシアの代表団に平和の尊さを訴えたかったに違いない。だが、皮肉にも、会場には多くの空席が目立ったばかりか、ロシアの代表団はゼレンスキー氏の演説中にスマホを見ながら談笑していた。

こんなことでいいのだろうか。国連という場が以前よりも軽視されてきているように思えてならない。同氏はこうも述べた。

「兵器化を抑制し、戦争犯罪を罰し、国外追放された人々を帰国させ、占領者は自国に戻らなければならない。私たちは団結してそれを実現しなければならない」

まさにその通りで、国連という場を最大限に利用し、国際機関としての役割を強化してロシアの蛮行を止めなくてはいけない。米国だけでなく日本政府も役割を担って、戦争防止に努める必要がある。これは机上論としてではなく、国際舞台で本当に動いてほしいと真に願う。

ブリンケン国務長官の訪中

ブリンケン氏が訪中するのはバイデン政権下では初めてのことで、冷えついた米中関係を少しでも改善できればという意図が伝わる。

日本を含めた世界がもっとも望まないのが、米中全面戦争である。両国が戦火を交えれば、日本も当然のように巻き込まれ、ただ事では済まない。そうでなくとも、台湾問題では両国の利害が対立しているため、まず交渉の場を定期的に設けることがなによりも重要になる。

南シナ海や台湾海峡では、中国軍と米軍の戦闘機が接近する事態が頻繁におきている。中国はいずれは台湾を手中におさめたいと思っているが、台湾は独立国家として存在していると考えているので、両者の間には軋轢がある。もし中国が武力を行使して台湾を占領しようとしたら米国は黙っていないし、その時は大規模な交戦に発展する可能性が高い。

米国は台湾への武器供与をつづけているし、中国側はこれを内政干渉と捉える。武力に打ってでる前に、両国はテーブルを挟んでじっくりと交渉し、打開策をみつけなくてはいけない。

G7サミットの真意

今月19日から広島でG7サミットが始まる。今回のG7での議題はいくつもあるが、究極的にはG7を中心とした西側諸国が中国とロシアが主導する上海条約機構(SCO)とどう対峙し、国際秩序を保っていくかに尽きるかと思う。

今月上旬にはインドでSCOの外相会議が開かれており、G7を意識した対立構造はできあがってきている。SCOは現在8カ国で構成されているが、今後はイランやクウェート、ミャンマー等を取り込み、構成メンバーを増やしていくつもりだ。

世界が二つのブロックで分割されても、いい意味での緊張が保たれることで武力衝突が起きなければいいが、私が憂慮するのはブロックの規模が大きくなることで突っ張り合いが激しくなり、有事に発展してしまうことである。

その時は第三次世界大戦のような規模になりかねず、その前に両陣営は人智を尽くして和平の重要さを認識しなくてはいけない。

日韓シャトル外交

岸田首相は7日、ソウルで尹(ゆん)大統領と首脳会談をおこない、12年ぶりに「日韓シャトル外交」を再開することで一致した。何よりである。常識的なことだが、微妙な関係にある知人・友人と仲たがいしない最善の方法は、コミュニケーションを頻繁にとって相互の考え方を理解することである。

喧嘩をしそうになっても、時間をかけて納得するまで話し合えば、多くのことは争いにいたらずに済む。個人間でも国家間でもコミュニケーションの重要さということは同じである。ましてや韓国という隣国といがみ合うことはデメリットでしかなく、両国政府は風通しをよくしておくべきなので、今回のシャトル外交の再開は「グッドニュース」である。

いまだに徴用工の問題が尾をひいているが、両者が納得のいく形で決着をつけられると信じている。それこそが政治家の役割であり、使命である。

実は私が1982年にアメリカの大学院に留学したとき、学生寮のルームメイトは韓国人だった。最初は彼も私も意識しすぎてギクシャクしたが、ある日、喧嘩になり、その時に相互に思っていることをとことん出し合ったことで、以後急速に仲がよくなった。それからはなんでも言い合える友人になった。

だから、私にとって韓国は理解しあえる相手という認識で、またそうしていかなくてはいけないと考えている。