今年、注目すべき米関連ニュース3点

1点目: アメリカとイランは戦争に突入するのか

昨日、米軍がドローンを使ってイランの司令官を殺害したことで、両国関係は一気に緊張の度合いを高めた。昨年12月28日にアメリカの民間業者がイラン・シーア派によって殺害されたため、トランプが報復攻撃をしかけたのだ。

だが両国の軋轢は昨日、今日に始まったわけではない。2018年5月にトランプがイラン核合意から一方的に離脱し、イランへの制裁と圧力を強めたことでイランは反発。その後、アメリカの同盟国であるサウジアラビアがイランに攻撃される事件があり、すでに「ドンパチは始まっている」と表現する関係者がいるほどだ。

2点目: アメリカと北朝鮮は戦火を交えるのか

金正恩が昨年末、ミサイルのクリスマス・プレゼントをアメリカに贈るかどうかが話題になった。長距離弾道ミサイルを使うかのどうか、さらにトランプがどう北朝鮮を迎え撃つのか。2020年、急速に高まる北朝鮮の脅威で書いたように、最悪の事態も想定しておく必要があるだろう。 

3点目: トランプは再選されるのか

2月3日から予備選が始まる。私は同月7日からアメリカに飛び、ニューハンプシャー州予備選を取材予定だ。夏の党大会までは民主党の候補者選びが話題の中心になる。トップ4(バイデン、サンダーズ、ウォーレン、ブダジェッジ)の誰かに決まるだろうが、私はブダジェッジにもっとも大きな可能性があると思っている。

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バイデンにはキレがないし、ブルームバーグ(4人の中に入らない)には広範な支持が集まっていない。サンダーズとウォーレンは左に寄り過ぎている。現在37歳の若さが抜きん出る気配を感じる。(敬称略)

トランプが送った怒りの書簡

トランプはいまにも米連邦下院で弾劾訴追されようとしている。当欄ですでに記したように、下院で弾劾決議案が通過しても、上院での弾劾裁判では無罪になることがほぼ決まっており、トランプがホワイトハウスを追い出されることはまずない。だがトランプの心中は穏やかでないようだ。

日本時間19日未明に行われる下院本会議場での採決を前に、トランプはいてもたってもいられなかったらしい。下院議長のナンシー・ペロシに6ページにおよぶ怒りの書簡(写真)を送っている。トランプ本人ではなく、スピーチライターが書いたものであろうが、もちろん本人も読み、納得したので直筆のサインをしている。

「この弾劾は民主党議員による前例のない非合法な職権の乱用であり、アメリカの250年におよぶ憲政史上でも類を見ないことである」と述べている。この段落の「民主党議員による」の部分を「トランプ大統領による」に代えて、そのままそっくりトランプにぶつけてやりたいくらいである。トランプこそが職権の乱用を犯したことを理解しなくてはいけない。

トランプを弾劾訴追しなければ、将来の大統領が「これくらいのことはやって構わない」と思うことになり、断固として弾劾手続きを進めるべきである。

だが党派対立による数の論理によって罷免できず、年明けに笑うのは結局トランプだったという結論になりそうである。(敬称略)

アメリカの分断

トランプ大統領(以下トランプ)が追い詰められつつある。

トランプはウクライナ疑惑もやり過ごせると思っていたかもしれないが、日に日に弾劾の現実性は高まりつつある。(弾劾については・・トランプ大統領弾劾へ ペロシ下院議長も …

だが弾劾を推し進めているペロシは今春まで、「弾劾は国家を分断させます。やむにやまれぬ証拠があったり、圧倒的と言えるような超党派の力で弾劾を推し進められない限り、すべきではないと考えます」と言っていた。しかし態度を変える。

実は春に述べていたことは、状況を的確につかんだコメントでもあった。というのもキニピアック大学の最新世論調査によると、米国民の弾劾への賛否は「47%対47%」で、いまのアメリカはトランプ弾劾で真っ二つに割れている。

トランプは「弾劾されるべき」と考える人と、トランプは「民主党によって不当に扱われている」と考える人がいるが、それは民主党支持者と共和党支持者の拮抗でもある。2016年選挙の結果同様、2020年選挙でもトランプと民主党候補の得票数はほぼ互角になるはずで、これがいまのアメリカの姿である。

けれども政権発足以降のトランプの言動をみる限り、資質や人格といった観点だけでなく、政治家として、また一人の良識ある人間として、トランプはホワイトハウスにいてはいけないというのが個人的な見解である。(敬称略)

トランプ弾劾へ

あれほど「弾劾はすべきではない」と言っていた人が変われば変わるものである。

下院議長ナンシー・ペロシがトランプをホワイトハウスから追いやるために、とうとう腰をあげた。今春まで「弾劾は国家を分裂させるから」と、難色を示していたが、トランプがウクライナ大統領ゼレンスキーに電話で理不尽な要求をしたことで、事態は180度変わった。

私は昨日の午前中まではそれほど重くみていなかったが、今日になって実際にトランプがゼレンスキーに強請した内容が明るみになってきて、一国の大統領が口にすべきものでないことがわかった。あらためてトランプの悪性を目の当たりにし、弾劾にあたいする大統領であるとの結論に達した。

トランプが民主党ジョー・バイデンを何としても蹴落としたいことは子どもでもわかる。だが、それだからと言って、ゼレンスキーを動かしてバイデンに不利になるような状況をつくりだすというのは大統領のすることではない。

トランプのように、カネと権力を使えば何でも思いどおりにできると思っている「ビジネスマン大統領」はホワイトハウスを去るべきである。

アメリカ史上初めて「弾劾で職を追われた大統領」にすべきだろう。そのために憲法第2条第4節(弾劾)があるのだ。(敬称略)

悪魔の化身

「ずっとお会いしたかったです。なにしろあなたは悪魔の化身だと聴いていましたからね」

前国防長官のジェームズ・マティスが2018年3月、ペンタゴン(国防総省)の入り口でジョン・ボルトンと初めて会った時のセリフである。もちろんジョークであり、2人は笑っていたが、初対面の人に対して「悪魔の化身」という言葉はなかなか使わない。

私はアメリカに25年間住んだが、いくらアメリカでも初対面で悪魔の化身と言った人を他に知らない。それはある意味で、ボルトンがどういう人物かを物語っている。

そのボルトンがホワイトハウスを去る。トランプはボルトンに辞めるように促したとツイッターで記した。正確には「ホワイトハウスでの公職はこれ以上必要ないと昨晩、ジョン・ボルトンに伝えた、、、辞職するように促した」であるが、ボルトンは自らのツイッターで「昨晩、大統領に辞意を申しでた。大統領は明日、話し合おうと言った」と書いている。

「辞職します」が先なのか、「お前はクビ」が先なのかは今後わかるだろうが、トランプがボルトンと意見が合わないことは国家安全保障担当の補佐官になる前からわかっていた。イラン政策や北朝鮮政策など、強硬派であるボルトンがどういう政策を提唱するかは折り込み済みだったはずだ。それでもトランプは安全保障政策担当のトップに彼を据えた。

ワシントンから伝わる情報では、トランプはそんなボルトンを強硬派の先鋒として、またバランスをとるために穏健派の補佐官も置き、その中で政策を決めてきたという。しかしボルトンは最近、政権内で孤立しはじめ、ミーティングにも欠席することがあった。たぶんトランプとボルトンの関係はかなり冷え込んでいたのだろう。

まだボルトンが首都ワシントンのシンクタンク、AEI(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所)にいる時、インタビューしたことがある。その時は穏やかな表情を浮かべ、和やかに会話したことを覚えている。

ただトランプがボルトンと不仲になることは、最初から時間の問題にも思われた。なるべくしてなったという流れだが、トランプ政権発足後、辞めた(辞めさせられた)閣僚はこれで18人目である。(敬称略)

bolton9.10.19

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