混迷の世界へ

仕事がら毎日、世界のニュースに目を這わせているが、過去数日は重要なニュースが追いきれないくらい起きている。

個人的な判断から、あえて国際ニュースに順位をつけてみた。

1 日韓対立の激化:元徴用工の問題から日本と韓国は意地の張り合いで、現在は着地点が見えない。本当に底がないくらいの泥沼にはまってしまった感がある。アメリカ(ポンペオ)も両国を沼から引っ張りあげられない。韓国人の友人が以前「韓国人ははずかしめを受けたことは一生忘れません」と言っていたのを思いだす。

2 米中貿易摩擦の激化:トランプは9月1日から中国に第4弾の制裁関税を課す。上海で開いていた米中閣僚級会合でも関税協議は決着せず、トランプは3000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を課す。何を考えていえるのか。勝者はいないー。

3 北朝鮮が弾道ミサイルを発射:過去1週間で3度目。今月5日から20日まで行われる米韓合同軍事演習への反発と思われるが、トランプはいまだに金正恩を信じているようで「気にしない発言」が大いに気になる。

4 FRB(連邦準備制度理事会)が10年半ぶりに利下げ:利下げを発表しても株価は下落。FRB議長パウエルが継続的に利下げをしていくわけではないと述べたことへの市場の失望感と、トランプの追加関税発表の影響。ドルが買われて1ドル106円半ばまで円高が進んだ。

5 INF(中距離核戦力)全廃条約が失効:これによりアメリカは移動式の地上発射型巡航・弾道ミサイルを開発する予定だ。半年前、トランプとプーチン両氏がINFの破棄を決めたが、明らかに時代を逆行する動き。

トランプが世の中を悪いほうに、悪いほうに引っ張っていっているかのようで、急に好転する気配が見えない。(敬称略)

有志連合は入る必要なし

新しく米国防長官になったマーク・エスパーがもうすぐ来日する。オーストラリア、ニュージーランドを回ってからくるが、対イランに向けての有志連合への参加を日本に促すためだ。

トランプはイラン嫌いのポンペオとボルトンに影響をうけて、イランへの強硬姿勢を強めている。もちろん戦争をしかける準備であるが、現時点でイランに軍事攻撃をすることは国際法上も道義的にも合理性がともなわないし、理不尽である。

イランが進めている核開発をこころよく思わないことは理解できる。だがウラン濃縮度の上限が2015年の核合意できめた数値(3.67%)を超えても、まだ核兵器を製造したわけではない。イランが核保有国になったという証拠はまだない。イランが他国を軍事攻撃したわけでもない。

湾岸戦争時、アメリカは多国籍軍を先導してイラクに攻め込んだ。当時、イラクがクウェートに軍事侵攻したこと自体が大問題であり、国連が多国籍軍の派遣を決定した経緯があって戦争にいたっている。

しかし今、核兵器を所有してもいないイランに軍事攻撃をしかける理由が見当たらない。トランプ政権の暴挙としか言えない。もし核開発ということが理由であるなら、なぜ北朝鮮を攻撃しないのか。

日本はエスパーに有志連合に説得されても逆に「軍事攻撃などもってのほか」と諭さないといけない。(敬称略)

トランプ政権内のばらつき

6月30日に行われた板門店での米朝首脳会談が、実は事前に下準備が整えられていたことがわかってきたが、アメリカ側で会談実現に尽力したのは北朝鮮政策特別担当代表スティーブ・ビーガンだった。過去2回の会談でも影でトランプを支えた人物だ。

米ネットニュースによると、ビーガンはオフレコの話として「アメリカは北朝鮮の核・ミサイル開発の凍結を求めている」と語ったという。凍結というのはこれまでのアメリカ政府の立場とは違う。強硬派で知られるジョン・ボルトンなどはいまでも完全な非核化、つまり政権の北朝鮮政策は「廃棄させること」であり、意見の対立がみられる。

トランプも金正恩を前にしたときに「何が何でも完全非核化」を求めているとは思えず、政権内に政策面でのばらつきが見られる。実はトランプは2017年夏、北朝鮮への軍事オプションを口にし、国家を崩壊させるといった超強硬路線の思いを述べていたので変われば変わるものである。

現実的には、北朝鮮がすべての核弾頭と核開発を廃棄するとは思えず、多くの方もそう感じているはずだ。となると、パキスタンモデルを踏襲して「保有しているけれども使用・売却させない」という方向にいくようになるのではないか(北朝鮮問題の落とし所)。そこまでいくにもずいぶん時間がかかりそうだが・・・。(敬称略)

トランプの反協調主義

今日の昼、ブルームバーグがトランプの日米安保条約破棄の可能性を言及したニュースを配信した。私的な会話のなかでトランプが条約破棄について触れただけなので、いますぐ事態が動くわけではない。

いかにもトランプらしい「反協調主義」の表れであるが、条約破棄の意向そのものは何も新しいニュースではない。大統領選の最中である2016年5月、ほとんど同じ内容のことを口にしている。

日本は日米貿易では黒字が続いており、日本はアメリカに頼らずに自分で防衛すべきという、まっすぐ過ぎる思いである。

だがこれは戦後の両国関係の流れを無視したあまりにもうぶで、思慮に欠けた発言である。3年前も発言直後は問題視されたが、周囲に諭されてそれ以上安保条約破棄について発言することはなかった。

たぶん、今回はG20を前にして日本をけん制する意味があったのだろう。3年前は、米軍が日本から撤退したあとは、日本は核武装することになるといった愚見を述べてもいて、あまりにも詰めの甘い言い分にあきれてしまう。

政治家経験がないことから、外交はいまでも素人であることを証明している。地政学的な日米同盟の重要性も認識しておらず、もっとも信頼できるはずの同盟国を裏切ることになる危険性を理解していない。

これは単に自分勝手というレベルでは済まないことである。アメリカが反協調主義を採ることで、世界がどれだけ不安定になるかをわからないといけない。

イラン攻撃を中止したトランプ

今週、早稲田大学オープンカレッジの春学期最後の授業があった。毎回90分、トランプ政権の動向を中心に、国際問題の解説をしている。毎回、90分も話が続くだろうかと思って臨むが、最後の方はいつも時間が足りなくて、急ぎ足になってしまう。

毎回あちらこちらに飛びながら、なんとかこなしているというのが実情で、もう少しまとまりのある話ができれば、と思っている。最後の回でイラン問題についての話をしようとも思っていたが、かなわなかった。

昨日、トランプがイランへの軍事攻撃を取りやめたというニュースが伝わった。賢明な判断だったと思う。

トランプはツイッターで「攻撃10分前に中止した。急ぐことはない。米軍はさらに強くなっているし、いつでも出撃できる。世界でダントツのトップだ」と誇った。内外に軍事力を誇示する愚かさは相変わらずトランプらしいが、「推定死亡者が150人であると聴いたからだ」という中止理由も虚しい。

というのも、トランプは今回のイラン攻撃計画の説明を受けた時点で、推定死亡者150人という情報を間違いなく聴いていたからである。だから攻撃10分前になって推定死亡者数が伝えられたというトランプの説明は正しくない。これは元米軍将校からの情報だ。

トランプは死傷者に対する感傷を持ち合わせていないと思われる。政権発足後の2017年4月、シリアに59発のミサイル攻撃をしかけている。そして翌18年4月には105発のミサイルを発射している。17年の攻撃だけでも80人の死亡者がでて、数百人が負傷したと伝わる。それでも翌年にまた撃ったのだ。

今回、イランの攻撃目標になっていたのは3カ所で、トランプが「攻撃しろ」と命令を下せばミサイルはすぐに発射されて、多くの死傷者がでるところだった。中止した理由は他にあったと思われる。シリアとイランの国情の違いか、長期にわたる戦いになる可能性を危惧したためか、別の理由があったからとも考えられる。

いずれにしても「犠牲者がでるから」というのはトランプらしくない言い訳である。結果的に攻撃中止になったことはよかったが・・・。(敬称略)