これを民主主義と言えるのか

イギリスに新しい首相が誕生した。

インド系のリシ・スナク氏(42)に個人的な敵愾心があるわけではないが、首相を選ぶプロセスに首をかしげざるを得ない。

イギリスといえば議院内閣制や二院制、複数の政党制など、世界中で採用されている民主主義の制度を生みだした国家であるが、今回のスナク氏を選択したプロセスは旧態依然としており、「2022年になってこれでいいのか」という思いを抱かざるを得ない。

というのも、トラス氏が首相を辞任した後、保守党内で党首選を行って新たな党首(首相)を選ぶ流れの中で、今回はスナク氏だけが立候補したのである。単独の候補がそのまま選ばれ、イギリスという国家の首相に収まるのである。それが「決まりごと」であることはわかるが、本当にこれが民主主義と呼べるのかと本質的な疑問を投げたい。

日本と同じで、一般の有権者は首相選に一票を投じられない。それだけに一つの政党に所属する政治家だけに選ばれるプロセスが、真の意味で民主主義と言えるかどうか大きな疑問である。その点、有権者が一票を投じて大統領を決めるアメリカのシステムの方がより健全なのではないかとの思いがある。

議員内閣制のルールを変えることはかなり高いハードルであることはわかるのだが、今回のイギリスの件には苛立ちさえ覚えた。

ウクライナで戒厳令発動

20日早朝、ネットでニュース記事をひらくと、真っ先に「プーチン氏併合4州に戒厳令」というタイトルが飛び込んできた。

「やってくれるものである」というのが第一印象。多くの方も同じ印象を持たれたのではないだろうか。プーチン氏は9月末、ウクライナの4州(ドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソン)を自国領に組み込むと一方的に宣言。それだけでも「プーチンらしい横暴さ」がでた行動だと思ったが、今度は戒厳令である。

戒厳令というのは一般的に、戦時下において司法、立法、行政を軍部に任せるという意味である。正式にはロシアの上下両院の承認をへて発動がきまるが、プーチン氏が音頭をとっているかぎり、ほとんど決定と思ってさしつかえないだろう。

軍隊が社会を取り仕切るということは、民主的な手続きを踏まずにモノゴトが上からの命令できまるということであり、明確な理由がないままに、官憲に逮捕されることもあるということだ。もちろんウクライナ4州に住む多くの人たちは「たまったものではない」という思いを抱いているだろう。

上から強制的にモノを押しつけて、それで社会の平静が保てるとプーチン氏は本当に思っているのだろうか。歴史を振り返れば答えは歴然としており、早晩、プーチン氏は自身の政治生命の危機を迎えることになるだろうと推察する。

全面戦争を憂う

ロシア軍は10日、ウクライナ全土の20カ所以上にミサイル攻撃や空爆を行った。クリミア大橋で8日に起きた爆発の報復であると、プーチン大統領は断言しており、これはもう、今年2月に始まった「ロシア対ウクライナ」の争いが全面戦争に入ったとみていい。

プーチン氏は これまで、ウクライナへの侵攻はあくまで「特別軍事作戦」でああって、「戦争」「攻撃」「侵攻」と表現することは違法であるとしてきた。 「虚偽の情報を広げた場合には刑事罰を科す」との法律を発布したほどである。だが、10日の首都キーウをふくめた広範な地域への軍事攻撃は、あらためてウクライナに宣戦布告をしたと言って差し支えないだろう。プーチン氏自身が戦争という言葉を使うのは時間の問題かもしれない。

私が憂慮するのはここからである。米国は先月末の段階で、すでに 162億ドル(約2兆3000億円)もの軍事支援をウクライナに行ってきたし、今後も継続して支援する姿勢を示している。プーチン氏が今後、戦争という言葉をつかい、ウクライナだけでなく、支援国家とも剣を交えることになると、最悪の場合は第三次世界大戦という流れになりかねない。

その時にネックになるのはやはりプーチン氏という独裁者の思考である。単独の権力者が国家の進む道を決め、盲目的といえるような政治決断をすることで負の連鎖がうまれる。被害者はいつの時代でも一般市民である。

なんとしてもプーチン氏の愚行を止めなくてはいけない。

米中間選挙:民主党有利に動いている理由

アメリカでは11月8日に中間選挙(4年ごとの大統領選の中間年)が行われる。連邦議会上院の3分の1議席(34)と下院の全議席(435)が改選される。歴史上、中間選挙はホワイトハウスに入っている政権党が議席を失うことが多く、今年も春先まで、民主党が議席を減らす公算が高かった。

しかし共和党の勢いが6月以降、衰え始めており、このままいけば11月の選挙では民主党が多数党を維持する可能性がでている。理由の一つはトランプ前大統領への支持が分裂しはじめていることだ。

2024年の大統領選に出馬する意向があるトランプ氏は、相変わらず党内では根強い人気を維持するが、機密文書持ち出しをめぐる様々な不正疑惑が浮上してきており、保守派の中にはいま「嫌トランプ派」が増えてきている。唯我独尊的な言動も、疎まれる理由になっている。

さらに過去3カ月、ある理由によって共和党よりも民主党に追い風が吹き始めてもいる。それは日本国内では大きな報道になっていないが、人工妊娠中絶をめぐる、ある判決が起因している。6月24日、米最高裁は1973年に認めた人工妊娠中絶の判断を覆したのだ。

過去半世紀、アメリカでは人工妊娠中絶は女性がもつ当然の権利であるされてきた。73年の「ロー対ウェイド事件」で、最高裁が人工妊娠中絶を認めたことによるのだが、その最高裁が6月の「ドブス判決」で、一転して中絶を違憲であるとしたのだ。

州によって判断はわかれるが、すくなくとも6月の最高裁判断以降、半数以上の州では人工妊娠中絶が違憲となってしまった。この流れはこれまで米女性が築いてきた権利がガラガラと崩れることに等しく、今後大きな変化がもたらされることになる。

そこでいま、女性や若者、そして民主党支持者が中心となり、中絶を支持する政治活動が活発化しており、11月の中間選挙にむけて有権者登録が増えているのだ。ドブス判決以降、民主党の新規有権者登録者数は、たとえばペンシルベニア州では共和党の約2倍になっている。さらに共和党寄りの中部カンザス州でもドブス判決後、女性の有権者登録数が2ケタも伸びている。こうした流れにより、中間選挙では上下両院で民主党が多数党になる可能性がでてきている。

米国の「台湾防衛」はすでに折り込み済み

米連邦議会のペロシ下院議長が台湾で蔡英文総統と会談したことで、中国はいきり立っている。習近平主席は「レッドラインを踏み越える行為」と発言し、ペロシ氏の訪台を真っ向から反対し、軍事行動も辞さない構えだ。

中国側にとって中台統一は長年の悲願であり、米国が最大の障害になっていることに変わりはない。ペロシ氏だけでなくバイデン氏も5月下旬、「台湾防衛のために軍事力を行使する意思があるか」と記者に問われた時に「イエス」と発言し、米国はホワイトハウスも議会も「台湾のために血を流しても構わない」方向に舵をきったと解釈されている。

それは米国の中台問題の政策が「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」へとシフトしたということでもある。

米上院外交委員会のロバート・メネンデス委員長(民主党)も、ツイッターで「バイデン大統領は正しい選択をした。台湾を守るために行動することは既存の政策と矛盾するものではない。確固たる抑止力というものには勇気と明瞭さが必要になる。我々は台湾の活気ある民主主義を全面的に支持する」と記したほどだ。

これは米国による明確な台湾防衛の意思表示であり、もう「中国からのちょっかいに指を咥えているだけではありません」ということでもある。もちろん中国も米国も軍事交戦は避けたいと思っているが、米国は以前よりもより台湾防衛に真剣になったということだ。