ウクライナ停戦は実現するか?

ロシアがウクライナに軍事侵攻してからすでに3年が過ぎた。ウクライナが今月11日、米国との高官協議を行い、一時停戦の提案を受け入れたことはグッドニュースであるが、ロシアが停戦に応じるかは現時点ではわからない。先日も当ブログで記したように、戦争を歓迎している市民など皆無に等しいはずなのに、政治家が自分たちの利益を追求して愚かな行為を繰り返してしまう。

ただ、トランプ政権については賛否両論はあるが、ウクライナ戦争を終わらせるという点ではプラスにはたらいており、停戦が実現しそうな段階にまできたことは何よりかと思う。ゼレンスキー大統領は自身のSNSで「双方の代表団は建設的な話し合いをした。トランプ大統領に感謝している」とまで書いた。

トランプ氏の選挙時の公約の一つが「世界各地の戦争を早期に終わらせる」だったので、本当に停戦が達成されれば公約が果たされることになる。ただ問題はロシアの出かたで、今回の戦争を始めたロシアが停戦の提案をすぐに受け入れるかは微妙なところだ。ロシア上院のコサチョフ副議長は米国とウクライナによる停戦の提案は拒否すべきとの態度を示しているため、すぐには和平に結びつかないだろう。

ロシア国内にも戦争を終わらせるべきとの考え方を支持する動きはあるが、政府トップは最終的に「ゼレンスキー氏の排除」を目論んでいることから、簡単に終着点にたどり着くことはできないかもしれない。現実の政治の難しさはこういうところにある。

人間は戦争をやめることができるのか

死者1000人-。

シリア北西部で続く暫定政府の治安部隊とアサド旧政権残党の衝突で、過去3日間で兵士約260人、市民 約740人が命を落としたという。これだけの人数が短期間で死亡したという事実に驚愕すると同時に、日本で生活しているかぎり実感として受けいれることは難しい。

私はこれまでちょうど50カ国を訪れてきたが、シリアには足を踏み入れたことがないし、戦場といわれる危険地域にも行った経験がない。兵士であれば死というものを覚悟しなくてはいけないだろうが、一般市民が戦闘に巻き込まれて命を落とすということは、本来あってはいけない境遇のはずである。ところが、2025年になったいまでも地球上では戦争が続いており、市民が巻き込まれるという悲劇が続いている。

日本が他国から攻撃をうけ、都内を砲撃されて数百人の死傷者がでたという状況を想像できるだろうか。もちろんいまの日本を取り巻く政治状況を鑑みれば、そうした事態に陥ることはほぼないのだが、世界にはいまだに市民が巻き込まれて兵士とあわせて約1000人が死亡という現実がある。

いかに戦争が悲惨なものであるかを国の指導者たちは心の底から理解する必要があるし、政治目的で武力を使ってはいけないことを肝に銘じなくてはいけない。いつの日か、地球上から戦争・紛争がなくなることを願っているが、叶う日は来るのだろうか・・・。

米中が「戦争準備完了」を表明

トランプ大統領が米時間4日に行った連邦議会での施政方針演説や、中国の李強首相による全国人民代表大会での施政方針演説にメディアの注目が集まっているが、私がそれ以上に関心を寄せているのが、過去数日、米中両政府がともに「戦争準備を完了した」と言及したことである。

米首都ワシントンの中国大使館はXで、「関税戦争であれ、貿易戦争であれ、その他どんな戦争であっても、米国が戦争を望むのであれば、我々は最後まで戦う準備ができている。最後まで戦う」と発言したかと思えば、米国のピート・ヘグセス国防長官はフォックスニュースの番組『 Fox & Friends 』で、「準備万端だ。どういったタイプの戦争でも闘う準備はできている。平和を願う者は戦争に備えなければならない」と述べ、まるですぐにでも米中両国が戦争を始めるかのような響きさえある。

この発端となったのはトランプ氏が中国に対し3日、中国からの輸入品に新たに10%の追加関税を課して計20%にする大統領令に署名したことによる。すると中国は対抗措置として、国防費を7.2%増加させる計画を発表。さらに3月10日から特定の輸入品に10~15%の 相互関税を課すとした。

それによりすぐに両国が戦火を交えるわけではないが、李強首相は5日、立法院での演説で「中国の主権、安全保障、発展の利益を確実に守るため、軍事訓練と戦闘態勢を強化する」と述べた。さらに中国は今週、米国の軍事力に対抗するため、これまでのどの艦船よりも大型で先進的な原子力空母を建造中であることを明らかにした。外野席から眺めると、両国とも「やる気満々」に映る。

ただ両国の軍事予算を眺めると、2025年の米軍事予算は約8950億ドル(約134兆円)であるのに対し、中国は 1兆7800億人民元(約36兆5000億円 )とその差は歴然としており、中国が世界一の軍事力を誇る米国をそう簡単に負かせるとは思えない。

こういう時こそ、力のある第三国がでて行って仲裁に入ることが望ましいのだが、日本政府にその役割は、、、無理か。

トランプが犯した過ち

2月28日にホワイトハウスで行われたトランプ・ゼレンスキー会談が決裂し、大きなニュースになっている。テレビカメラが入った会談だったが、トランプは大声でゼレンスキーに対し、「あなたは私に指示する立場にない」「(あなたは)カード遊びをしている。数百万人の命を賭けている」「一度でも米国に感謝の言葉を述べたことがあるか」と声を荒げた。

トランプはゼレンスキーに対して、「米国への感謝が足りない」という態度でおり、それが会談のいたるところに現れた。ゼレンスキーの方も、どこかの国のようにトランプに対してペコペコと頭を下げて従うという姿勢ではなかったことから、両首脳が熱くなるのは必然とも言えた。

ただ冷静になってウクライナを取り巻く国際関係を眺めたとき、国際法を違反して侵略戦争を仕掛けてきたのは紛れもなくロシアで、トランプはそのことを棚の上にあげて、プーチンの側に寄り添ってゼレンスキー批判を繰り広げた。バイデンとは真逆の立場である。このところロシアとの融和を推進しているトランプにしてみると、ゼレンスキーの態度は「失礼極まりない」ということになってしまう。

ただゼレンスキーのトランプへの態度も褒められたものではない。力関係は歴然としており、米国からの軍事支援が途絶えてしまえば窮地に陥るのは目に見えている。そのリスクを敢えて犯してトランプの痛いところを刺激して怒らせてしまった。政治家であれば、そのあたりはもう少し巧みにこなすべきだった。(敬称略)

トランプ・石破会談

ホワイトハウスでのトンラプ・石破会談が無事に終わり、日本政府関係はほっと胸をなでおろしたようだ。日本にとって日米関係が最も重要な二国間関係であることは中学生でもわかることで、トランプ氏を怒らせたり警戒感を抱かせないように、周囲は細心の注意を払っていたはずだ。

私はワシントンに25年ほど住み、ホワイトハウスもカバーして多くの首脳会談を取材したのでわかるのだが、実際に首脳同士が顔を合わせる時には会談の「ほぼ7割は終わっている」と考えていいかと思う。それまでに両国政府の関係者が綿密な打ち合わせを行って内容を詰める。

両国の首脳がその筋書きに沿って話を進めていけば成功裏に終わるのだが、トランプ氏のような政治家であると突然、「不規則発言」をする可能性がある。その時に、どういった流れになるのかは誰も読めない。だが、今回の会談ではトランプ氏は脱線せずに話をまとめたようだ。

というのも、日本が2027年度に防衛費をGDP比で2%にするといったことや、対米投資で1兆ドルという巨費を打ち上げたことでトランプ氏は石破氏を、「やはり日本の首相は米大統領についてくる」と思わせたことが功を奏したと思われる。ある意味で、日本はいまだにアメリカに頭が上がらないということでもある。