最高値をつけた株価

日経平均株価が22日、34年ぶりに最高値を更新した。終値は3万9098円。奇しくも、米国のダウ平均株価も初めて3万9000ドル台に乗り、終値は3万9069ドル。円とドルの違いはあるが、両国ともに3万9000という数字で一致した。

ちなみにダウ平均が1万ドルを超えたのは1999年のことで、今から25年前である。私がまだワシントンに住んでいた時で、四半世紀でほぼ4倍になったことになる。

株価は経済成長と密接な相関関係があり、株価が上がれば投資家たちは資金を市場に投入させて動きがさらに活発化する。ただ、上げ潮に乗った株式市場は時に弾けて急速に冷却される時がある。それでも金融市場への依存度はプロの投資家だけでなく一般市民にも広く根付いており、急速な株価上昇が新たなバブルを生むことにもなる。

そこには汗水垂らさずに「楽をして儲ける」という心理があるためで、利ザヤで儲けることにある種の偏見と蔑みがあることはわかっていても、一度そこで利益を手にしてしまうとなかなか抜け出せなくなる。

以前は「カブ屋」という言葉でさげすまれたこともあったが、いまや政府でさえコントロールできなくなるほど肥大化したところに社会的な歪みが内在している。今後の株価の動きを正確に読める人は誰もいないところがまた株式市場の魅力になっているのかもしれない。

日米比較:マンション価格

数日前、ニューヨーク市マンハッタンの家賃が2年ぶりに下落したというニュースがあった。下落率をみると、月々の家賃の中央値(平均ではない)が4095ドル(58万1500円)から4000ドル(56万8000円)に下がっていた。

下がったといっても56万円である。ニュースでは中央値という言葉が使われているだけで、部屋の間取りや広さについての言及はない。東京の一般的なマンションに比べればマンハッタンであってもかなり広いはずだが、それでも56万円という値段はかなりの高額である。

それでは東京の平均的なマンションの家賃はいくらなのか。NHKが発表している数字では、単身者向き(30㎡)の平均が8万8769円、カップル向き(50㎡)が13万6233円、ファミリー向き(70㎡)が20万5923円、そして大型ファミリー向け(70㎡以上)が35万6552円となっており、ニューヨークと比較するとかなり割安感がある。

家賃が高いということは、給与も日本よりは高いことが想像できる。国家間の給与比較をするサイト「Salary Explorer」によると、アメリカ人の平均年収は$94,700(約1344万円)であるのに対し、日本人の平均年収は457万円(9月発表の国税庁の数字)。こうした数字を眺める限り、東京の家賃が70㎡で約20万円であることは十分に納得がいく。

私が2007年にアメリカでの永住をやめて日本に戻る前、首都ワシントンに隣接するバージニア州アーリントン郡のマンションに住んでいた。30年ローンで購入したのだが、月々のマンション管理費が900ドル(約12万8000円)だった。家賃ではなく管理費が12万強というのは異様な高さだと当時思っていた。そこに月々のローンの返済がある。いま考えると、よくやっていたと思う。

一般的に家屋の価格は日本よりもアメリカの方が安いとのイメージがあるが、場所によってはアメリカの方がはるかに高いのである。

自動車産業の聖地、デトロイトがITとEVで大変身

「デトロイト」という都市名を聞いて、何を思われるだろうか。

米中西部ミシガン州最大の都市で、メジャーリーグ、デトロイト・タイガースの本拠地であり、「モーターシティ」と呼ばれる自動車産業のメッカでもある。米自動車メーカーが同地で興隆を極めたのは数十年も前のことで、実は人口が185万のピークに達したのは1950年代であり、2020年には64万にまで減少している。

日本車に押されて自動車産業の雇用が奪われ、「デトロイトは不可逆的な都市崩壊の状態にある」という形容さえ使われるようになった。

さらに犯罪率も高く、2022年の「世界人口調査(ワールド・ポピュレーション・レビュー)」によると、デトロイトは全米で2番目に危険な都市にランクされている。何しろ中・大都市で唯一、人口10万人あたりの暴行罪の発生件数が2000件を超えているのだ(続きは・・・自動車産業の聖地、デトロイトがITとEVで大変身)。

資本主義の次に来る世界

資本主義の次に来る世界

いま注目している新刊本である。『資本主義の次に来る世界』というすぐにでも読みたくなるタイトルがついている。実はまだ購入していないのだが、買う前に当ブログを読まれている方にもお知らせしておこうと思い、ご紹介した次第。

この書籍のオリジナルは2020年8月に英語で出版されていて、日本語版は先月、東洋経済新報社からだされたばかり。著者のジェイソン・ヒッケル氏は エスワティニ(旧スワジランド)出身 の経済人類学者で、英王立芸術家協会のフェローでもある。

英語版でよく売れている書籍ということで、日本語版をだしたのだろうが、オリジナルのタイトルは『Less is More:脱成長で世界は救われるのか』。「資本主義の次に来る世界」というフレーズは英語版にはない。出版社が「いかにも売れそうな」タイトルをつけたのだろうと思う。いずれにしても、手にとる価値はありそうだ。

日本経済の元凶:供給過剰

今日(6月3日)の日本経済新聞のオピニオン欄に、在英経営者のデービッド・アトキンソン氏のコラムが載っていた。同氏はいま小西美術工藝社の社長だが、菅内閣時代はブレーンの一人として首相に助言していた経済通の人物だ。

日経のコラムではまず、日本の生産年齢人口(15から64歳)が減り続けているために経済成長率が下がらざるを得ないことを指摘。ピークの1995年から2020年までに1271万人も人口が減っているので、日本経済に力がないのは当然であるとの論理を展開する。しかも生産年齢人口が減って困るのは労働力が減るからではなく、消費が活発な層の人口が減ることで経済力が落ちることにあるという。

モノを買う人口が減れば自然に供給過剰の状況に陥ることになる。

日本経済が最近成長しないのは需要が不足しているからだとの言い分もあるが、お金がないからモノを買わないのではなく、社会全体から見ると人口が減ったから需要が伸びていないのだ。

アトキンソン氏の処方箋は「イノベーションに尽きる」と断言する。新しい商品を開発し、新しい需要を掘り起こす。それを積極財政で支えるていくべきだと記す。それができないので「新しい資本主義」といった絵空事が議論されると説く。

このままでは「日本国民は窮乏し、希望が見えないままになる」と警告する。