ぜひNPRを聴いてください

先日、東京丸の内にある外国特派員協会で出会った30代の女性から、次のような単刀直入な質問をうけた。

「堀田さん、英語がうまくなるにはどうしたらいいんですか」

この質問の答えはたくさんあるかと思うが、私がその女性に述べたのは、「とにかく浴びるように英語を聴いてください。その時に日本語に訳さないで、英語をそのまま理解するようにしてください。時間はかかるでしょうが、それが近道だと思います」だった。

具体的には「NPR(米国公共ラジオ放送)を聴き続けてください」と提言した。ご存じの方も多いかと思うが、NPRは24時間、標準的なアメリカ英語を流しつづけているラジオ局で、ニュースもあればトークショーもある。

npr.org

英語を学ぶ上で聴く力は必須である。 いちいち日本語に訳してから理解するという行為は遠回りであるだけでなく、本当に英語を理解することにならない。NPRは24時間流れているので、いつでも耳にすることができる。

最初はいくつかの単語を拾えるだけかもしれないが、だんだんと聴きとれる単語の数が増え、そのうちに文章として理解できるようになるはずである。なにしろ私がそうだったからだ。確かに時間はかかるが、辛抱強く聴き続ければ少しずつわかってくると信じている。

Hey, you look drip!

今日、仕事場で知人のアメリカ人記者にそう言われた。

私はしばらく意味が飲み込めずに無反応でいたが、すぐに能登地震の話に移ったので、そのあと「you look drip」については何も訊かなかった。

彼との話が終あわった後、私は「drip」についてネットで検索した。25年もアメリカで生活した経験があるが、知人・友人に会ってすぐにこのフレーズが使われた記憶はない。「drip」の本来の意味は「滴る」だが、私は滝のような汗をかいていたわけではない。どういうことなのか。

辞書には本来の意味の「滴る」の他に、スラングとして最近は「カッコイイ、スタイリッシュ」という意味で使われるとあった。

「フー、そうだったのか」

その褒め言葉にしばしニンマリし、今度誰かスタイリッシュな人に会ったときのために胸に忍ばせておくことにした。

これで英語が話せるようになりますか?

今日、ランチを食べた後に有楽町駅前にある三省堂書店に立ち寄った。英会話本のコーナーにいくと、たくさんの新刊本が並んでいる。

英会話本はいつの時代にも高い需要があるが、それで日本人の英会話力が高まったかどうかは定かではない。誰もが知ることだが、英会話本を数冊読んだところでペラペラになれるわけではない。知らない表現を覚えることはできるが、それが会話の中でスッと出てくるかどうかは別問題である。

私はアメリカに25年も住んでいたので、できて当たり前だが、いま振り返ると「いちおう喋れるようになってきた」と実感したのは2年ほどしてからである。言語を習得するためには、特に話ができるようになるためには、毎日浴びるように耳から英語を入れないといけない。それはとりも直さず、頭の中で英語から日本語に訳すのではなく、英語をそのまま理解し、英語でモノを考えるということに他ならない。

日本語に訳して理解している間はまだ英語が自分のものになっていないということだ。だから「これで英語が話せます!」的な本には首をかしげざるを得ない。

新しい英語(13)

今朝、ネットで英語の記事を読んでいると、これまで目にしたことのない曜日を表す単語が目に入った。

Blursday(ブラーズデー)。

少なくとも、最後に「day」がついているので曜日であろうことは想像できたが、そのあとがはっきりしない。ネットで調べるとすぐに分かった。意味は「あいまいな日」だった。

「ぼんやりした」とか「曖昧な」という意味の「blur」を最初につけて、dayの前にSを置いた造語だった。昨年からコロナが世界的に蔓延し、リモートで仕事をする人が増えたことで曜日の感覚が希薄になり、「今日は何曜日なんだろう。まあ、いいか」といった日をブラーズデーということにしたようだ。

「Go To Travel」はトホホな英語

「旅行に行く」という日常的に使われる言葉をそのまま英語にした「Go To Travel」という言い回しは、残念ながらトホホな英語である。英米人が耳にすると「?」ということになる。

「Go To Travel」は観光庁が力を入れているキャンペーンであることはよくわかるし、意味もわかる。

しかし、日常的な英語表現に直すと「go on a trip」というべきで、「go to travel」どころか「 go on a travel」とも言わない。これはあまりにも決まりきった言い回しなので、英米人であれば間違う人はいない。

少し説明させていただくと、travelという単語は漠然とした「旅」という意味で、特定の「2泊3日の熱海温泉旅行」という時にはtripか journeyを使う。だからtravelという単語を使いたければ、「you can travel」というべきである。逆に「you can trip」とは言わない。

これは生活の中に入った表現なので、英米人であれば感覚的にわかっている。日本では単語そのものが日本語になってしまっているので、英語に置き換えるとおかしなことになる。ただ意味はわかるので、いま英米メディアでは「Japan’s Go To Travel Campaign」とカッコつきで使われている。