有料の救急車

救急車の有料化が話題になっている。

三重県松阪市では今年6月から、救急車を呼び、患者が入院にいたらなかった時、 保険適用外の「選定療養費」として1人あたり7,700円(税込)を徴収しはじめた。そして今月2日から、茨城県でも救急車を呼んで患者に緊急性がないと判断された場合、1100円から1万3200円が請求されるようになった。

これまで救急車は税金で賄われるため、「無料」という認識があったかと思う。だが、救急車の要請件数が増え、地域によっては無料ではたちゆかないレベルにきたということなのだろう。ちなみに、茨城県の場合、昨年の救急搬送件数は14万件を超えたという。この傾向は全国レベルで広がると思われるので、これからはどの地域でも「救急車を呼んだら搬送料をチャージされる」と思っていた方がいいかもしれない。

ただ、私は米国で25年間生活した経験があるので、救急車を呼ぶと「おカネがかかる」というのは当たり前という認識である。首都ワシントンで生活していた時、幸いにも救急車にお世話になったことはなかったが、米国では日本よりもはるかに高額な搬送料がチャージされる。

いま調べると、1回の搬送料は500ドル(約7万5000円)から3500ドル(52万5000円)で、保険で賄われることもあるが、自己負担であればかなりの額になる。かつては米国でも無料だったが、1985年にシカゴで有料化がはじまり全米に広がった。米国は広いので、地域差だけでなく、どれほどの距離を搬送されたのか、さらに受けた医療レベルによっても値段が違ってくる。

救急車は社会生活においてはなくてはならない医療サービスなので、できるだけ低額に抑えていただきたいものである。

米国:同性愛者が結婚を急ぐ理由

いま米国内で、同性愛者による結婚が急速に増えているという。理由を簡単に述べると、来年1月にトランプ政権が誕生した後、同性愛者の結婚が違憲と判断される可能性があるため、「いまのうちに結婚しておこう」との考えがあるためだ。

ご存じの方も多いかと思うが、米国では2015年に最高裁が同性婚を認める判決(オーバーゲフェル対ホッジス裁判)を下したことで、同性愛者の婚姻が許可された。その後、米社会では同性愛者による結婚が「普通」になり、2022年にはバイデン政権下で婚姻尊重法が制定されて、同性婚と異人種間婚の保護が成文化された。

しかしトランプ氏は選挙期間中にトランスジェンダーの人たちに対する差別的発言をしただけでなく、同性愛者に対する問題発言もあったことから、懸念が広がっている。婚姻が成立してしまえば、その後に無効になることはないため、トランプ政権が誕生する前に籍を入れる動きが加速しているのだ。

米東部マサチューセッツ州ピーボディ市にある結婚式場を営むサラ・ナルカスさんはいま、「早く結婚したい同性カップルからの問い合わせの多さに圧倒されている」と地元メディアにこたえている。

トランプ氏は第一次政権時、性的マイノリティの権利を制限する方向性を明らかにした。それまで米国では同性愛者への権利拡大が進んでいただけに、保守層からの反動はトランプ氏の背中を押して、大きなうねりになった。

ある同性愛者がネット上にこんなつぶやきを書き込んでいた。

「ホワイトハウスに誰が座っているかで、私の人生設計が狂わされることなどあってはいけない」

Black Friday

日本でもBlack Friday(ブラック・フライデー)という言葉が一般的になってきた。この言葉は米国の感謝祭(Thanksgiving)の翌日の金曜日のことで、今年であれば11月29日にあたる。米市民にとって、感謝祭はクリスマスに次ぐ祝日といえる日で、家族が集まって七面鳥を食べるのが慣わしだ。

その金曜からクリスマスショッピングが始まり、小売業界では1年でもっとも売り上げが見込める日であるため(黒字)、この言葉が使われている。私が渡米した年(1982年)の感謝祭、アメリカ人の友人がオハイオ州の実家に招いてくれて、生まれて初めて七面鳥の丸焼きを目の当たりにし、舌鼓をうった。その時にブラック・フライデーという言葉を耳にし、意味を教えられた。日本では知らなかった米文化に触れた思いだった。

米国でBlack Fridayという言葉が使われはじめたのは1950年代からだという。そしていま、Cyber Monday(サイバー・マンデー)という言葉が登場している。感謝祭の翌週の月曜日からはじまるオンラインによる一大商戦のことで、週が明けてからゆっくりとオンラインで買い物をするところが特徴だ。いずれにしても、年末商戦にネーミングをすることで売り手側にとっては大きな利点となっている。