
私が北方領土をのぞめる北海道根室半島の先端、ノサップ岬に足を運んだのは2012年8月のことである。その時はちょうど天候が悪くて島々は見えなかったが、この地点から3.7キロ先に貝殻島(ロシア領)がある。
「返ってくるわけないでしょう。戦後67年間(当時)、動かないんだから」
岬の断崖のすぐ横で食堂を切り盛りする女将はこともなげに言った。話をしているうちに、女将のロシアに対する猜疑心の強さがわかり、ほとんど諦めている姿勢もうかがえた。
プーチン大統領が今月13日、北方領土の択捉島を訪問したが、これはある意味で「北方領土はまったく返す気はない」という意思表示とも受けとれる。一度手にいれたものは返さないという思いが今後たやすく動くとは思えない。ただ、「返す・返さない」という日本・ロシアの姿勢は何十年も硬直したままなので、柔軟さをもって対応すれば明かりは見えてくるのだろうと思う。
第二次世界大戦後、米国は奄美群島、小笠原諸島、沖縄等を奪ったが、交渉の後、段階的に奄美群島(1953年)を、68年には小笠原諸島、72年には沖縄を返還した。こうし事実をふまえつつ、それをロシアとの北方領土問題にも当てはめて二島の先行返還をまず実現させて、最終的に四島返還させるという方策は十分に可能なはずである。
外交は人間同士が交渉して決めてゆく過程が大切であって、さまざまな手法を試す余地が残されている。そのため、「もう返ってこない」と決めつけることは得策ではない。北方領土返還は可能だと、私は思っている。
