横尾忠則:朝日新聞に「語る」

朝日新聞が文化面で掲載している「語る」欄で、昨日まで横尾忠則が連載を続けていて、興味深く読んだ。今年6月で88歳になる横尾はいまでも毎日、絵を描き続けており、そのモチベーションの源泉をかいま見た思いがした。

私はまだ66歳で、彼より20歳以上も若いが、正直に言えば、すでにやりたい仕事はおおかたやって、あとは好きなモノだけを書いていこうと思っていたので、88歳になったいまも150号の大作を制作している横尾のバイタリティーには舌を巻くしかない。

朝日の記者が「今後の目標は?」と訊くと、「全然、ゼロ。その日にくるものが僕の未来を創造します」と飄々と述べる。そしてこう言うのだ。

「計画や目的を持つと束縛されて不自由です。毎日、努力して描いていると思われるかもしれませんが、これは日常だから努力と言わないんです」

そしてなるほどと思えることを呟く。

「実は、もう絵を描くことに飽きてしまっています。でも飽きた気分で描いた絵を見てみたい。飽きた方が、意欲という存在から解放されて自由になると思う。だから絵はずっとずっと描き続けるでしょうね」

ここまでの境地に達するには、私にはもう少し時間が必要かもしれない。(敬称略)

岸田訪米:日米間の差

岸田首相がバイデン大統領と会談し、日本のメディアは大きな扱いをしている。テレビはもちろん、新聞各紙は一面で岸田訪米を取り上げた。日本にとって米国は最重要国であり、時代を越えて首相の訪米はビッグニュースである。

ましてや今回の岸田・バイデン会談は「未来のためのグローバル・パートナーシップ」と題された、新しい日米関係のあり方を模索するものであるだけに、日本の行く先が提示される重要な会談との位置づけだ。

4月11日の朝日新聞朝刊の一面トップは「日米『指揮統制』を連携:同盟強化 首脳会談合意へ」で、読売新聞も一面で「日米同盟新時代へ:防衛産業で連携 ウクライナ支援念頭」、日本経済新聞もやはり一面で「対中にらみ抑止力統合:日米同盟が軸、豪韓比と」といずれも大きく紙面を割いた。両国は今後、防衛産業の連携を視野にいれて定期協議をひらき、優先分野を決めていく予定なので、重視されて当然だろう。

ただ当ブログのタイトルにも記したように、今回の会談では「日米間の差」が改めて際立った。何のことかというと、両国の主要メディアでの扱いの差である。上記の日本の3紙は一面トップで大きく報道しただけでなく、その他のページでも同会談を大きく扱った。

しかし、である。米紙の扱いは驚くほど小さいのだ。ワシントン・ポスト紙は地元で会談が行われているにもかかわらず、一面トップどころか中のページですら会談についてはほとんど記していない。さすがにニューヨーク・タイムズ紙は一面の上段で記事を載せたが、ウォールストリート・ジャーナル紙も一面では扱わず、米国内の記事の一つとして出しただけだ。USAトゥデイ紙も一面では扱っておらず、「その他の記事」として載せている。

こうした日米メディアによるアンバランスな扱いは今に始まったことではない。80年代に私が米新聞のダイジェスト版をつくる仕事をしていた時から気づいていた。それは冒頭でもふれたが、日本にとって米国は最も重視すべき国なのだが、米国にとって日本はOne of themにすぎないということだ。米メディアにもそうした考え方があるため、日米首脳会談という重要な会議であっても、一面トップのニュースにならないのである。

お年寄りの国へ:日本

日本の総人口は2024年1月1日の概算値で1億2409万人。前年同月比で66万人の減少で、近年、日本の人口が少しずつ減ってきているということは、すでに多くの方がご承知かと思う。

人口減少率にすると、0.53%という小さい数字であるが、いくつか指摘したいことがある。最初は年齢別の人口減少で、15歳未満は減少率が2.22%であるのに対し、65歳以上は0.08%である点だ。つまり、子どもが少なくなり、老人はほとんど減らないということである。75歳以上の数字に目をやると、逆に73万7000人(増加率3.83%)も増えており、日本が「老人国家」と言われる理由がよくわかる。

私も66歳なので、りっぱな老人(高齢者)と言っていいが、総務省が発表した数字では65歳以上の人口は現在3622万8000人。総人口に占める割合は29.1%という高い数字で、極論を述べれば、右を向いても左を向いても「ジジババばかり」と言っていいかもしれない。

そんな時、朝日新聞が4月6日朝刊の一面で「身寄りなき老後」という記事を組んだ。高齢者が増えている中で、頼れる身寄りがいないまま老後を迎える人が増えているというのだ。

誰にも迷惑をかけずに死にたいと思っている人は多いが、高齢者の一人暮らしは20年前のおよそ2倍。病院や介護施設に入る時の保証人や金銭の管理、さらに火葬や葬儀、遺品の整理などを果たせる人がいないという問題が浮上してきている。

これは結婚していないとか、自分には子どもがいないということと同時に、兄弟や親戚がいても積極的に面倒をみてくれる人が少なくなっているためだ。金銭的な負担が大きいため、「身内」であってもリスクを取りたがらない人が増えているのだ。自助、公助という言葉があるが、安心して天国へいける社会制度をつくっていかなくてはいけないと思うことしきりである。

さくらという花

近くから眺めても、距離をおいて望見しても、この春花はいつも人の心を穏やかにしてくれる。

仕事場の近くに咲いていたこの桜は誇示しているようでいて控えめで、寂寥感を漂わせていた。

健大高崎:初めての選抜優勝

センバツ高校野球で31日、 群馬の健大高崎(高崎健康福祉大高崎高校)が 初優勝を果たした。全国のトップに立つことがいかに大変であるかを本当に理解しているのは、たぶん当事者だけなのだろうと思う。

創部22年で全国優勝を果たした青柳博文監督(51)は 「スケールの大きな選手を育てたい」と述べていて、打撃に力をいれてきた。自身も高校時代に選抜大会に出場しているが、優勝は初めてのことだ。

監督を引き受けた直後は、野球場どころか練習場所にもこと欠くありさまだった。10人ほどの野球部員とテニスコートほどの広さの場所で練習を続け、ときどき部員たちをマイクロバスに乗せて、近くの球場に連れていった。専用グラウンドが完成したのが2007年。いまでは部員数は100名近くになった。

地道に少しずつ階段を登るようにして力をつけ、2012年に初めて甲子園に足を踏み入れた。今回、群馬県勢としては初めての優勝で、監督だけでなく選手たちも心の底から嬉しさを噛みしめていることだろう。

Congratulations!