豊かさの限界

いま読んでいる本の中に学生時代によく耳にしたフレーズがでてきたので妙に懐かしくなり、噛み締めるようにじっくり読んでいる。

読んでいるのは講談社現代新書の「新しい世界:世界の賢人16人が語る未来」という本で、その中にダニエル・コーエンという経済学者の章があり興味深い。懐かしいフレーズというのは「マルサスの法則」と「イースタリンの逆説」である。

ご存知の方も多いかと思うが、マルサスの法則は18世紀から19世紀にかけて生きた経済学者トーマス・ロバート・マルサスが導きだした法則で、食料の生産速度よりも人口増加の方が速いために、世界は必然的に食料不足や貧困に直面するというものだ。もちろん19世紀の世界のことなので、20世紀から21世紀になって食料の生産性が上がったことで同法則に支配されることはなかった。

もう一つのイースタリンの逆説というのは、米経済学者のリチャード・イースタリンが1974年に発表した学説で、社会が経済成長を遂げて豊かになっても、市民は必ずしも幸福を得られるわけではないという内容だ。「お金=幸福」ではないのでパラドックスであるとの指摘である。

後年、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが幸福度と収入は一応比例するが、約800万円が上限で、それ以上稼いでも幸福度は大きくかわらず、経済的欲求が満たされたあとは、個々人がどういった生活をするかにかかっていると記している。

実はほとんどの方はこうした記述を意識的に、または無意識的に理解しているはずで、日々の生活のなかでいかに自分らしい幸せを見出していくかが大切になるのだが、なかなかこれが難しい、、、のが実感である。

初めての胃カメラ

いまだに「人生初」というものがある。

これまで私は胃カメラ(内視鏡)による検査を受けたことがなかったが、今日(20日)初めて経験した。多くの方は40歳前後に胃カメラを飲むようだが、私は遅咲きというか、出遅れもはなはだしく、63歳になってようやく内視鏡経験者の仲間入りとなった。

ずっとフリーランスの立場でいるため、いままで受けてきた区役所の定期健診に内視鏡検査は入っておらず、こちらが追加料金を支払って「胃カメラをやります」と言わなかったので、してこなかった。胃腸の不具合は感じていないが、たまには総合病院でしっかり検査をしてもらおうと考え、今回人間ドックを受けることになった。

胃カメラについては多くの知人・友人から「痛かった」とか「吐いてしまった」といったネガティブなコメントを聴いていた。同時に、「麻酔(鎮痛剤)を打ってもらうと楽」という話も耳にしていたので、以前から「胃カメラを飲むなら麻酔だな」と思っていた。人間ドックの申し込みをする段階から「鎮痛剤」のところに印をつけたので、今日も「しごく当然」という流れで鎮痛剤を打ってもらって胃カメラに臨んだ。

人間ドックだったので、血液も随分採取される。胃カメラの前に採血があり、静脈に針がささったままになっていて、そこから鎮痛剤が入れられた。担当の方から「緊張していますか」との質問がきて、「少しだけ」と答えてからたぶん10秒も経っていないうちに、私はもう意識を失くしていた。

次に目を開けたのは「ホッタさん!」と名前を呼ばれた時である。名前を呼ばれた瞬間、私は上半身を起こして「ハイ」と答えていた。胃カメラ検査はすでに終わっていた。

気分そう快で、朝に目が覚めた時よりも爽やかな感覚だった。だがすぐに食道に違和感を覚え、少し咳き込んだ。しかし痛みはまったくない。5分後には水分も食事も摂っていいということだったので、麻酔に感謝という気持ちである。

検査のため朝から何も食べていなかったので、昼は久しぶりにカツ丼の「上」を食べたが、ベッドの上で意識がなかっただけに「胃カメラをやった」という達成感などはなく、何となくカツ丼が浮いてしまった感じのまま自宅にもどった。

I’m high on life!

ある英語雑誌を読んでいたら、上の一文にであった。

意味は「人生、最高潮にある」というニュアンスで、波に乗っているときに使える表現である。実はこの表現は俳優リチャード・ギアが20年以上前に出演した映画「プリティウーマン」の中で使っていて、印象に残っているセリフなのだ。

というのも、相手役のジュリア・ロバーツが「あなたはタバコも酒もドラッグもやらないけど、楽しいの?」と訊いてきたあとに呟いているのだ。ホテルのスイートルームで、デスクに向かって仕事をしているギア。ロバーツはテレビを観ながらはしゃいでいて、静かに仕事をしているギアに質問を投げかける。

仕事に人生をかけて、しかもそれを楽しんでいる。それ自体が人生を最高潮にしているので、タバコも酒もドラッグも別に必要ではないと返事をしたのだ。映画を観たときは「なんと粋なセリフなのだろう」と思って、いつか自分も実生活で使える日がくるだろうかと願ったが、いまだに使ったことはない・・・。

「ノマドランド」

観たい!観たい!観たい!

久しく映画館に足を運んでいないこともあるが、米時間25日夜にアカデミー賞で作品賞や監督賞などを獲った「ノマドランド」を早く観たいという思いが募っている。

アカデミー賞の発表後、Youtubeで22分にまとめられたダイジェスト版を観たら、すぐにでも全編が観たくなった。内容は企業倒産によって住む家を失った女性がキャンピングカーでの生活をはじめ、全米各地でいろいろな人と出会って人生を見つめ直すというストーリーだ。主演のフランシス・マクドーマンドはアカデミー主演女優賞を獲得している。

派手なアクションも甘い恋愛もない映画だが、22分のダイジェスト版を観ただけでも「生きている間にぜひ観ておくべき映画」という印象をうけた。

脚本も手がけたクロエ・ジャオ監督の紡ぎだすセリフに打たれもした。ジャオ氏は中国生まれの39歳で、こぼれ落ちんばかりの才能が感じられ、映画全体の魅力とおのおののシーンがそれぞれ光を解き放っており吸い込まれそうになった。

はやく観たあああい!

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菅・バイデン会談

日本時間17日午前に米首都ワシントンで、菅首相とバイデン大統領が初めて対面による会談を行う。菅氏は日本を発つ前、こういうことを口にしていた。

「バイデン大統領と信頼関係を構築し、日米同盟をさらに強固なものにしていきたい。自由で開かれたインド太平洋の実現にむけて、日米のリーダーシップを世界に示したい」

この内容に何の異論もないが、「いかにも菅氏らしい」教科書的で無難な言い回しである。私にはむしろそこが心配である。菅氏だけでなく、首脳の周辺からも今回の会談の主な目的は、菅・バイデン両氏が信頼関係を築くことであるとの見方が伝わってくる。

もちろん会談では中台問題や地球温暖化問題、さらに中国の半導体問題まで話し合われるだろうが、菅氏はアメリカという同盟国で、かつ世界最強国に合わせていくという基本姿勢を崩さないのだろうと思う。

官房長官をやっていたとはいえ、外交のプロではない。1973年から上院議員をやっているバイデン氏が具体的に中台有事の際に、「いまの日本であれば、これくらいはできますよね」と約束ゴトを迫ってきた場合、菅氏はどこまで頷くのか、またどこまでノーと言えるのか、私にはわからない。

話の細部は外部には漏れないだろうが、どこまで菅氏は用意ができているのか。戦後ずっと日本の首相はほとんどの日米会談で受け身に回ってきており、こちら側からズケズケとものを言うべき時は言わなくてはいけない。菅氏はどこまで外交官としての手腕を発揮できるのだろうか。