人間の愚かさ

いきなり表題に「人間の愚かさ」と記したので、何のことかと思われるかもしれない。世界を見渡すと相変わらず無益な戦争が継続されており、「人殺し=戦争」の愚かさがあらためて浮き彫りになっている。

日本はいま、他国と軍事的な戦争をしている状況にないので、多くの人が殺害されるという現実を実感しにくい。ただ過去数日だけでも、ウクライナではロシアから数十発のミサイル攻撃を受けて30人以上が死亡しているし、パレスチナ自治区ガザではイスラエル軍の空爆により少なくとも16人が亡くなっている。

世の中は21世紀に入ってから四半世紀が経とうとしているが、いまだに戦争を止められずにいる。私が学生だった頃、「あと何十年かしたら、人間は戦争の悲惨さを知り、愚かな戦争を繰り返さなくなるかもしれない」と思ったものだが、いまのところそうした展開にはなっていない。

過去5000年の人類史をひも解いても、「戦争の歴史」と述べても過言ではないほど繰り返し戦争が行われてきた。いつかはなくなる日がくるのではないかとの希望的な観測もあるが、いまのところ絶えるようには思えない。それは人間が本当の意味で賢くなっていないからなのかもしれないし、人間が人間である以上、争いごとを止めることはできないからなのかもしれない。皆さまはどうお考えだろうか―。

藤井聡太はこれからの人

すでにニュースで伝えられている通り、藤井聡太氏が20日、叡王戦で伊藤匠七段に敗れた。メディアはしきりに「8冠から7冠に後退した」という伝え方をし、藤井氏でも負けることがあるんだというニュアンスを漂わせている。

確かに8冠を獲得してから約8ヵ月、トップの座を守り続けて無敵の強さを誇っていたので、私などは「この人はもう誰にも負けないのではないか」と思っていたほどだ。今回負けたことで「彼も人間だった」との思いが去来した。

私は将棋は素人なので、深く考察できないが、今回、藤井氏は前半に優勢をたもっていながら時間を使いすぎてしまい、後半は1手を60秒未満で指さなくてはいけなくなり、熟考できずに敗れたと解釈している。本人はタイトルを一つ失っただけでも相当のショックを受けていると思うし、映像を見るかぎりでも青ざめているように見えたが、まだ21歳である。

人生の勝負はこれからであり、私はできるだけ長期間に渡って将棋界をリードしていってほしいので、ぜひ8冠に返り咲いてほしいと思う。いや彼ならできるはずで、こうしたタイトルを失う経験を積むことで、今以上に強い棋士になっていくことを願っている。

なぜ男女格差が埋まらないのか

スイスに本部を置く国際機関、世界経済フォーラム(WEF )が12日、2024年版の「ジェンダーギャップ報告書」を発表した。2日前に当欄で、「相変わらずの男社会」というブログが書いたばかりだが、同報告書での日本の順位は146カ国中118位で、男女格差は相変わらず改善していない。

G7(主要7カ国)では相変わらず最下位だし、3年前に出された同報告書を眺めると、 日本の男女平等ランキングは156カ国中120位で、そこから大きな変化はない。今年は韓国が94位、中国が106位で日本よりも上位にきている。日本はセネガル(109位)やネパール(117位)といった国よりも下で、国家レベルで改善すべきといったムードを醸成する必要があろうかと思う。

小池百合子氏と蓮舫氏が都知事を争っていることは大変いいことだが、衆議院議員の女性比率はいまだに低いままだ。昨年6月に自民党は今後10年で女性の国会議員比率を30%にするという目標を発表したが、現時点では12%。まだまだ先は長い。男女両方から格差是正へ積極的に動かなくてはいけないが、そうなってはいない。

女性側の働きかけはもちろん、男性の中には「女は男の3倍働かなくてはいけない」といった偏見( ジェンダーを考える )もあり、少しずつ着実に男女の溝を埋めていく必要がある。

水原一平:終身刑でもいい?

お騒がせの通訳、水原一平被告(以下水原)が米時間4日、有罪答弁を行い、銀行詐欺と虚偽の納税申告の罪を認めたが、私はどうも釈然としない。

なにしろずっとそばにいた大谷氏の口座から26億円超の大金を借金返済目的で引き出したのだ。いくら大谷氏が超のつく億万長者であっても26億円という金額はとてつもない額である。しかも「大谷のお金を使うことしか思いつかなかった」としゃあしゃあと発言し、普通では考えられないほどの醜悪さを見せつけている。もはや単なる詐欺師というより「極悪の犯罪者」と呼んだほうがいいだろう。

水原は「有罪です」と起訴内容を認め、すでに司法取引に応じているため、量刑は5~6年になると言われている。 本来であれば量刑は33年の拘禁刑になってもおかしくなかった。だが米国では、量刑がガイドラインにそって数値化されているので、初犯で、しかも控訴しないという条件下ではそれくらいの期間になるという。

しかし、である。これだけ世間を騒がせ、自身の雇い主だった大谷氏から26億円もの巨費を盗み、発覚するまで平然としていた悪鬼である。個人的には「こいつはもうシャバに出してはいけない。終身刑くらいがちょうどいい」と思うのだが、皆さまはいかがお考えだろうか。

あらためて村上春樹

自宅の本棚を眺めていると、まだ読んでいない本が目にとまった。

本はまとめて数冊買うこともあるし、1冊だけ買いたいものを手にとることもある。その本は昨年出版された村上春樹氏の文庫本で、どうしたわけか本棚の奥にひそんでいて読んでいなかった。

村上氏は私の大学の先輩で、あまりにも人気がある書き手なので、長い間敬遠していた。だがある時から読み始め、「やはり面白い。読者をストーリーの中に引き摺り込む術を心得ている」と思ってからはよく読むようになった。

その本は昨年、文藝春秋社から出た『一人称単数』という文庫本で、8本の短編がまとめられている。さっそく今朝(25日)、『石のまくらに』という最初の小説を読んだ。主人公は大学2年の青年で、バイト先でであった歳上の女性と一晩を共にする話なのだが、相変わらず読みやすい筆致でどんどん進む。

いまさら私が村上氏の作品の良さを説明することほど野暮なことはないだろうが、今朝、あらためて思ったことをいくつか記したいと思う。ひとつ目は誰にでも起こりうることを題材にしていながら、その題材を正面や裏面だけでなく、多角的に眺めながらさりげなく書いている点である。さらに読者が疑問を抱くことをよく理解しているので、その答えを自然に物語の中に配置して読者の満足感を高めている。

さらに心に残るセリフはずっと後まで残るほどで、やはりモノ書きとしてのセンスの良さを感じざるを得ない。たとえば、文中で「人を好きになるというのはね、医療保険のきかない精神の病にかかったみないなものなの」というセリフを主人公に言わせる。これは村上氏らしい表現で、ウウウと唸ってしまった。

またしばらく村上熱が蘇りそうだ。