インド・パキスタンの停戦合意は本当か

インドとパキスタンは10日、これまで続けてきた軍事攻撃を即時停止し、停戦することで合意したという。両国は1947年の第一次印パ戦争以来、繰り返し衝突してきているので、今回の米国による仲介で今後2度と戦火を交えなくなるとは考えにくいが、取り敢えず、トランプ政権による関与で一時的にせよ、停戦にいたったことはないよりかと思う。

ルビオ国務長官とバンス副大統領が、インドのモディ首相やパキスタンのシャイフ首相らと協議して今回の停戦にいたったようだが、トランプ大統領はさも自分が仲裁にあたったかのような態度で、Xで次ようにコメントをだした。

「米国が仲介した長夜の協議の結果、インドとパキスタンが完全かつ即時の停戦に合意したことを発表できることを嬉しく思う。常識と優れた知性を駆使した両国を祝福する。ありがとうございました」

戦争というものがほとんどの一般市民にとっては不幸しかもたらさないということを両政府の政治家たちは知らなくてはいけない。日本であれば、半世紀以上ものあいだ他国と戦火を交えるということは考えられないが、印パ両国民は「ここまで戦い続けた以上、勝つまでは・・・」との思いがあったと思われる。

たとえばパキスタン側の報道を読むと、「インドからの攻撃に対し国民から『弱腰だ』と受け止められないためにも反撃せざるを得なかった」という記述がある。ここに戦争が長期化してきた理由が潜む。弱腰であっても戦争をしない方がどれほど賢明なチョイスであるかを国民にわからせる必要がある。

こうしたメンタリティーをもつ国民に本当の停戦はくるのだろうか?

トランプ支持率、過去80年で最低

誰も驚かないーー。

トランプ大統領(以下トランプ)の就任後100日目の支持率が39%という数字で、歴代の大統領としては過去80年で最低であることがわかった。

米国だけでなく、日本にいてさえトランプのことを好ましいと思っている人は少なく、それが数字となって表れた。80年前に不人気だった大統領というのはフランクリン・ルーズベルト氏で、第二次世界大戦で米国が疲弊していたことから支持率も低かった。この数字はワシントンポスト紙とABCニュース、Ipsos3社による共同調査によるもの。

いまトランプ氏の経済政策に賛同していない人は多く、「トランプ関税」が3月に発表されて以来、株式市場が混乱しているばかりか、物価上昇への懸念が強まり、不況を憂慮する声も多い。ちなみに、回答者の72%が不況に見舞われると予測している。

私は1982年に留学のために米国に渡って以来、ずっと米大統領の動向や支持率を注視しているが、経済状況の変化が支持率と密接にむすびついている点に着目している。トランプのようなもともと不人気な大統領であっても、経済が好調で、株価もズンズンあがっているような社会状況だと、支持率が高くなる傾向がある。

まだ新政権が始まって3カ月なので今後はどうなるかわからないが、しばらくは辛抱する日々が続きそうだ。

相変わらずの弱腰外交

もっと強く出ていいーー。

ホワイトハウスで日本時間17日、トランプ大統領(以下トランプ)と会談した赤沢経済財政・再生相は、「格下も格下と直接話をしてくれたことに感謝している」と語り、相変わらず日本的な自身を卑下する姿勢でいることに呆れてしまった。

私は1982年にワシントンに渡り、90年からジャーナリストとして日米会談を長い間注視してきたが、日本の首相や閣僚が米大統領におうかがいを立てる姿勢は何十年たってもかわらない。こうした「大統領閣下、お目にかかれて幸栄です」的な態度でいるかぎり、米国に交渉の主導権を握られることは当たり前で、日本的な相手を敬う態度は理解できるのだが、こうした国際的な会談や交渉の場ではマイナスに作用することの方が多いので、強気な姿勢で臨まなくはいけない。

自民党の政治家はすでにこうした交渉術を会得しているかと思っていたが、まだまだ始めから「1本取られる」ような姿勢はいただけない。いくらトランプであっても対等な立場で臨むべきであって、プッシュするくらいであっていい。それによって日米両国の緊密な同盟関係が崩れることはないし、何でも言い合えるという関係こそが重要なのである。

こうした国際交渉の場では、どの国も自国の利益を追求してくるのが当たり前で、トランプが強気で攻めてくるのであれば、日本も負けずに強気で対抗し、日本側の主張をとことん突き詰めていけばいい。(敬称略)

米国が抱える世界的責任

国連の食料支援機関である世界食糧計画(WFP)は9日、 米国から「14カ国に対する支援を打ち切る」との通知を受けたと発表した。日本のテレビニュース等では大きく報道されていないが、これはビッグニュースと言って差し支えない。トランプ政権になって、 米国がこれまで貧国を中心に差し伸べてきた経済的支援を中止するというのは、受け手側にとっては大打撃である。

アフガニスタンやイエメン、ハイチ、パプアニューギニアといった国々に、米国はこれまで食料や水、医薬品を提供してきたが、契約の打ち切りは、「数百万人に死刑宣告をだすようなもの(WFP)」と捉えられている。米国が拠出してきたWFPへの寄付額は約45億ドル(約6570億円)で、この額は寄付総額(約98億ドル)のほぼ半分にあたる。

なぜこのような暴挙と呼べるようなことをするのか。少し探ると、トランプ大統領は米国際開発庁(USAID)をなくそうとの考えを持っており、その一環として世界的に重要な責務をになっているWFPを打ち切る決断をしたようだ。もちろん「先立つものはカネ」であり、米国家予算を少しでも浮かせるという意味合いが強い。

ただ内外からの批判を受けて、支援打ち切り発表のあと、資金援助が再開された国(エクアドル、イラク、レバノン、ソマリア、シリア)もあるが、すべての国でない。たとえばアフガニスタンは米国の支援がなくなることで、40万の栄養失調の子どもたちを含む計200万人が食糧危機に見舞われるといわれている。

今年1月、トランプ氏は「 米国はもはや米国民に見返りのないお金をやみくもにばらまくつもりはない 」と発言しており、自己中心的な考えをもった人物があと4年近くも政権の座につくことになるかと思うと空恐ろしくなる。

最長新記録 25時間4分:米上院での演説時間

それにしても凄い記録である。一人の上院議員が連邦議会の壇上に25時間以上も立ち続けて喋りつづけたのだ。これまでの記録は1957年に作られた24時間18分。ニュージャージー州選出の民主党コーリー・ブッカー議員(55)は最初からこの記録を破るつもりだったという。

Who is Cory Booker, the Democrat from New Jersey holding the Senate floor?
(Photo courtesy of AP)

ブッカー氏は米時間31日(月)午後6時59分に話をはじめ、ほとんど休憩を取らずに夜中も話しつづけ、翌4月1日午後7時18分まで壇上に立ち続けた。目的はドナルド・トランプ大統領とその政権の行動に抗議するためで、本人は「身体的に可能な限り、合衆国上院の通常業務を妨害するつもり」と発言して演説を始めた。

時間がたってもブッカー氏の話の流れや勢いはとどまるどころか、ますます加速していくようにみえた。私もユーチューブを使って演説の一部を聴いたが、よく話が長時間も途切れずに続けられるものだと感心した。準備されたノートもあったが、ときどき目を落とすだけで、ほとんどの内容はその場で決めていたようだ。

「さまざまな米国民が不必要な苦難を背負わされ、我が国の特別で貴重な、独自の制度が(トランプ政権に)悪影響を受け、攻撃され、粉々にされようとしている」

「すべての議員たちに言いたい。 憲法はドナルド・トランプ氏を排除するか、少なくともその活動を鈍らせるための手段をあなた方に提供している。手遅れになる前に、その手段を使うべきだ」

ただあまりに長すぎて、すべての演説を聴き続けた人はまずいないだろう。それでも記録的な演説を行ったということがニュースとして取り上げられ、要旨が紹介されたので、やった意義はあると思う。