米国の「台湾防衛」はすでに折り込み済み

米連邦議会のペロシ下院議長が台湾で蔡英文総統と会談したことで、中国はいきり立っている。習近平主席は「レッドラインを踏み越える行為」と発言し、ペロシ氏の訪台を真っ向から反対し、軍事行動も辞さない構えだ。

中国側にとって中台統一は長年の悲願であり、米国が最大の障害になっていることに変わりはない。ペロシ氏だけでなくバイデン氏も5月下旬、「台湾防衛のために軍事力を行使する意思があるか」と記者に問われた時に「イエス」と発言し、米国はホワイトハウスも議会も「台湾のために血を流しても構わない」方向に舵をきったと解釈されている。

それは米国の中台問題の政策が「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」へとシフトしたということでもある。

米上院外交委員会のロバート・メネンデス委員長(民主党)も、ツイッターで「バイデン大統領は正しい選択をした。台湾を守るために行動することは既存の政策と矛盾するものではない。確固たる抑止力というものには勇気と明瞭さが必要になる。我々は台湾の活気ある民主主義を全面的に支持する」と記したほどだ。

これは米国による明確な台湾防衛の意思表示であり、もう「中国からのちょっかいに指を咥えているだけではありません」ということでもある。もちろん中国も米国も軍事交戦は避けたいと思っているが、米国は以前よりもより台湾防衛に真剣になったということだ。

米フォワード党の価値

先週水曜(7月27日)、米カリフォルニア州ロサンゼルスで新しい政党の立ち上げが発表された。「フォワード(Forward)」党という第3政党で、9月24日にテキサス州ヒューストンで正式な発足会が行われる予定だ。

米国政治は2大政党制が基礎で、民主党と共和党以外の第3政党が連邦議会で躍進したことはなく、両党どちらかの議員を選ばざるをえない状況が長く続いてきた。ただロス・ペロー氏の改革党やラフル・ネーダー氏の緑の党など、これまで第3政党が登場しなかったわけではない。それでも支持は広がらず、議会での議席は確保できていない。

それではフォワード党は有権者から広範な支持をえられるのだろうか。現時点で同党の政策綱領が発表されているわけではないのではっきりとは言えないが、有権者の中に民主・共和両党の政治に辟易しているという声が少なからずあり、そうした声が集積されることで支持が広がる可能性はある。

特に「新しもの好き」の米国人には、民主党のリベラルさでも共和党の保守主義でもない中道の魅力として捉えられるかもしれない。ギャラップ調査ではすでに第3政党が必要と回答した人が6割近くもいることから、支持拡大の期待はもたれている。

それでも私はフォワード党の大きな躍進というものには現時点ではあまり期待していない。というのも同党を立ち上げる民主党のアンドリュー・ヤン氏と共和党のニュージャージー州元知事のクリスティーン・トッド・ウィットマン氏が2人とも、米政界では大物ではなく「中粒」の政治家だからだ。

全米だけでなく、全世界に新風をふかせ、新しい政治文化を根付かせるくらいの勢いがあるとは考えにくいので、フォワード党がどこまでやれるかは正直、疑問が残る。ただ同党がすばらしい候補を擁立し、2024年の大統領選で新大統領を誕生させられる可能性がないことはない。いまはそれに期待したいと思っている。

戦略的曖昧さ

この言葉を聴いて、すぐにピンとくる方は東アジアの外交政策に通じているのだろうと思う。

ジョー・バイデン大統領は23日、東京で岸田首相と共同記者会見を行った。その時、バイデン氏は記者から「台湾防衛のために軍事的に関与する意思はあるのか」と訊かれ、「イエス」と答えている。中国が台湾を軍事攻撃した時、アメリカはこれまで全面的な軍事衝突を避けるため、軍事介入には明確な意思表示はせず、わざと曖昧なままにしておく政策をとってきた。それが「戦略的曖昧さ(Strategic ambiguity)」である。過去の米政権の方針でもある。

しかし「イエス」という回答は軍事的に対抗するという意味で、これまでとは違う反応であったため、ホワイトハウスはすぐに「米政府の方針はこれまでと変わっていない」とバイデン発言を打ち消してみせた。同時に、「バイデン氏はまた失言をした」という流れになった。

だが本当にそうだろうか。バイデン氏はこれまでもたびたび失言をしてきたし、79歳という年齢を考えると、またミスを犯したと思えなくもない。 ただ私は、意図的に「イエス」と答えたのではないかと思っている。 というのも当件は大変重要な問題で、36年間も上院議員を務め、副大統領も2期こなしたバイデン氏が台湾問題を知らないわけがないのだ。上院外交委員会の委員長もつとめた人物が間違えるとは思っていない。

「台湾を守る」というのはバイデン氏にとって、当然の行為になっている気がする。中国に対してはっきりした態度を示すべきとの思いがあるのではないか。実は連邦議員の中にも「戦略的曖昧さから戦略的明確さへと軸足を移すべき」(トム・コットン上院議員)という意見や、「曖昧にしている時間は終わった」(リチャード・ブルーメンソール上院議員)という声がでてきている。

中国に対して一歩引いた態度から、日米は積極的な中・長期的ビジョンを持たなくてはいけないと思っている。

玉城デニー知事会見

5月6日午前10時から日本外国特派員協会で沖縄の玉城デニー知事の会見があり、出席してきた。普天間基地の返還を含めて、基地の整理・縮小がいっこうに進む気配が見られないので、私はその点について知事に訊いた。すると知事はこう返した。

「私がこれまで接触してきた米政府関係者の感触から申し上げると、日本政府と米政府はお互いの立ち位置を守っているということです。両国政府が互いに(同問題を)問いかけると、それについての回答はあるが、それ以上の反応はないです」

過去何年も基地問題に進展がないのは、「お互いの立ち位置を守っている」ということに尽きるかと思う。さらに「それ以上の反応はない」ということは、両国は身を切ってまでこの問題を解決しようとは思っていない証なのではないか。

つまり、現状維持でも大きな支障がないのだから「このままでいいのではないか」との思いである。

特に米国側は基地を日本に返還するメリットが少ないので、沖縄に駐留し続けたいはずである。1972年に沖縄が日本に返還されて、今年でちょうど50年になる年だからこそ、基地問題を進展させるべきだと思うが、政府関係者はそうは考えていないようだ。このままでは当分、沖縄の基地問題の解決はなさそうである。

クレムリン内からの不満

ロシアがウクライナに軍事侵攻してから間もなく2カ月になる。西側諸国を中心に、多くの人がプーチン氏の暴挙に怒りをおぼえ、戦争が早く集結してほしいと願っているかと思う。

ただロシアの世論調査では、国民の約8割がそんなプーチン氏を支持している。言論統制が取られている国なので、本当に8割もの人がプーチン支持なのかは疑問が残るが、プーチン氏がすぐに政権トップの座から引きずり降ろされることはないだろう。

しかし、私が得ている情報によると、クレムリン内部で最近になって変化が起きているという。ウクライナへの軍事侵攻に疑問をもつ政府高官が増えているというのだ。それは紛れもなくプーチン氏に抱く疑念であり、戦争に反対することが真っ当な考え方であるとの思いが流布しはじめていることである。なかにはウクライナへの侵攻そのものが「破滅的なミスだった」と表現する高官もいるという。さらに、西側諸国が推測している以上に、ロシアへの経済制裁が効いているとの情報もある。

それでもロシア人は日本と似た気質があり、耐えることができる国民だとも言われる。そのため経済制裁が続いても、国民はすぐに音をあげたりせず、じっと耐え忍ぶというのだ。しかも国民からのプーチン氏への信頼は依然として厚い。さらに国防省のセルゲイ・ショイグ氏は依然としてプーチン氏の片腕として尽力しているし(プーチンを動かしている男)、ワレリー・ ゲラシモフ国防次官やニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記といった親プーチン派のメンバーも健在だ。

「壊滅的なミスだった」という真っ当な見解がはやくクレムリン内を包み込むように力をもってほしいと思うことしきりである。