ブリンケン国務長官の訪中

ブリンケン氏が訪中するのはバイデン政権下では初めてのことで、冷えついた米中関係を少しでも改善できればという意図が伝わる。

日本を含めた世界がもっとも望まないのが、米中全面戦争である。両国が戦火を交えれば、日本も当然のように巻き込まれ、ただ事では済まない。そうでなくとも、台湾問題では両国の利害が対立しているため、まず交渉の場を定期的に設けることがなによりも重要になる。

南シナ海や台湾海峡では、中国軍と米軍の戦闘機が接近する事態が頻繁におきている。中国はいずれは台湾を手中におさめたいと思っているが、台湾は独立国家として存在していると考えているので、両者の間には軋轢がある。もし中国が武力を行使して台湾を占領しようとしたら米国は黙っていないし、その時は大規模な交戦に発展する可能性が高い。

米国は台湾への武器供与をつづけているし、中国側はこれを内政干渉と捉える。武力に打ってでる前に、両国はテーブルを挟んでじっくりと交渉し、打開策をみつけなくてはいけない。

G7サミットの真意

今月19日から広島でG7サミットが始まる。今回のG7での議題はいくつもあるが、究極的にはG7を中心とした西側諸国が中国とロシアが主導する上海条約機構(SCO)とどう対峙し、国際秩序を保っていくかに尽きるかと思う。

今月上旬にはインドでSCOの外相会議が開かれており、G7を意識した対立構造はできあがってきている。SCOは現在8カ国で構成されているが、今後はイランやクウェート、ミャンマー等を取り込み、構成メンバーを増やしていくつもりだ。

世界が二つのブロックで分割されても、いい意味での緊張が保たれることで武力衝突が起きなければいいが、私が憂慮するのはブロックの規模が大きくなることで突っ張り合いが激しくなり、有事に発展してしまうことである。

その時は第三次世界大戦のような規模になりかねず、その前に両陣営は人智を尽くして和平の重要さを認識しなくてはいけない。

日韓シャトル外交

岸田首相は7日、ソウルで尹(ゆん)大統領と首脳会談をおこない、12年ぶりに「日韓シャトル外交」を再開することで一致した。何よりである。常識的なことだが、微妙な関係にある知人・友人と仲たがいしない最善の方法は、コミュニケーションを頻繁にとって相互の考え方を理解することである。

喧嘩をしそうになっても、時間をかけて納得するまで話し合えば、多くのことは争いにいたらずに済む。個人間でも国家間でもコミュニケーションの重要さということは同じである。ましてや韓国という隣国といがみ合うことはデメリットでしかなく、両国政府は風通しをよくしておくべきなので、今回のシャトル外交の再開は「グッドニュース」である。

いまだに徴用工の問題が尾をひいているが、両者が納得のいく形で決着をつけられると信じている。それこそが政治家の役割であり、使命である。

実は私が1982年にアメリカの大学院に留学したとき、学生寮のルームメイトは韓国人だった。最初は彼も私も意識しすぎてギクシャクしたが、ある日、喧嘩になり、その時に相互に思っていることをとことん出し合ったことで、以後急速に仲がよくなった。それからはなんでも言い合える友人になった。

だから、私にとって韓国は理解しあえる相手という認識で、またそうしていかなくてはいけないと考えている。

デサンティス知事

Governor DeSantis
from Florida State Government

次期大統領選に共和党から出馬が予定されている米フロリダ州のロン・デサンティス知事(44)が来日している。昨日は岸田首相と会談した。

実は先週から日本外国特派員協会がデサンティス知事を記者会見に呼ぼうと画策していた。だが、先方は「イエス」といわなかったようだ。同協会だけでなく、他のメディアも会見を開こうとしていたようだが、今回はそうした機会を設けなかった。

というのも、いまは日本を含めたワールドツアーの途中で、フロリダに戻ってから大統領選への出馬を宣言するようなので、その前に出馬について触れたくなかったかにみえる。もし会見が開かれていたら、私は「トランプ氏に勝つためのシークレット・ウェポンは何ですか」ということを訊きたかったのだが、残念である。

バイデン氏にしてもトランプ氏にしても、申し訳ないが大統領選が「おじいちゃんの争い」になっているので、40代の候補が躍進してほしいと思っている。

キャサリン・タイ通商代表来日

4月20日午前11時、日本外国特派員協会の記者会見に現れたキャサリン・タイ米通商代表部(USTR)代表。1時間にわたり、記者から質問を受けた。

私はUSTRが最近になって、中国にFTA(自由貿易協定)を求めないというスタンスでいる理由を問うた。関税引き下げというアプローチは今はもう機能しないというのが米政府の考え方で、最近は「新しい物語をかく」という姿勢に変わってきている。

従来型の関税撤廃と自由化の追求は、中国に非市場的慣行を行わせることになり、貿易問題を解決することにはならなかったというのがタイ代表の見解。

「米国は貿易政策を革新する必要がある」

これまでとは違う、新しい貿易政策を模索しているという。今後の米政府の出方に注目したい。