2012年大統領選、ただいま混戦

2012年大統領選の最初の予備選・党員集会(1月3日・アイオワ州)まで2カ月を切った。

民主党はもちろん現職大統領のオバマ。国務長官のヒラリーが出馬すれば間違いなく共和党候補を破るという見方もあるが、ヒラリーにその気はない。もちろん現職大統領を差し置いて、党内からレースに出馬する権利はあるが、彼女は国務長官職も1期で終える可能性が高い。

共和党のレースは混戦である。今夏、ミネソタ州の下院議員ミシェル・バックマンが短期的に勢いをつけたが、すぐに失速した。直後、テキサス州知事のリック・ペリーが注目を集めたが、こちらもメディアを騒がせただけで支持率は下降。

その後に急浮上してきたのがゴッドファーザーピザの元CEOハーマン・ケインだ。黒人候補でありながら、保守共和党で減税による景気刺激策を打ち出す。「999(法人税9%、所得税9%、消費税9%)」とする税制を打ち出して、一躍人気を博した。

本人は元カンザスシティ連邦準備銀行頭取を務めたことのある人物で、数字に強いはずだが、ライバル候補からは「999」という考え方は税制を単純化しすぎている上、現行の税収額に達していないと、こき下ろされている。

それでも全米レベルでの共和党内の支持率では安定感のある前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニーとほぼ互角で、今後の展開はわからない。

20年前と違い、ほぼ連日どこかのメディアや調査会社が支持率を発表している。総合すると、今選挙を行った場合、オバマとロムニーではほぼ互角。オバマとケインではオバマがやや優位といった情勢だ。

それでも、長年大統領選をみていると、1年後の本選挙でカギとなる州がいくつか浮上する。注視したい12州(コロラド、フロリダ、アイオワ、ミシガン、ウィスコンシン、ネバダ、ニュー・ハンプシャー、ニュー・メキシコ、ノース・カロライナ、オハイオ、ペンシルバニア、バージニア)の中でも特にフロリダとオハイオの2州が重要だ。

専門家の中にはすでに両州の駆け引きと票の流れを計算している人もいる。ただ計算には今後1年間の事故や事件、経済状況が含まれないので、現時点ではなんともいえない。

確実に言えることは、オバマに黄信号が点灯しているということだけだ。(敬称略)

                  

  

                  by the White House

ペイリン参戦せず

前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが2012年大統領選に出馬しないことを決めた。支援者への書簡の中で、次のように述べている。

「私が何に仕えているかと言えば、神、家族、国家、これが順番です」

この一文を読んだときに、ペイリンは家族との合意が取りつけられなかったのだと察した(ペイリンの決断 )。共和党内から「出馬するな」という声が強かったことや、共和党の代表候補になれる可能性が低いといった要因も当然あっただろうが、神が最初で2番目に家族、そして国家が3番目という序列を聞いた時、ウソではないと感じた。

神を最初にもってくることはアメリカでは極めて自然だし、家族の同意がなければ踏み出さないという行動規範も、特に共和党の人間としては当たり前のことだろう。これは四半世紀アメリカで暮らして得た思いである。

そのため、「他に理由があるに違いない」との邪推は当たらないかと思う。もちろん、本人と周囲の人間にしか理解できない事情もあるだろう。だが、神という概念と家族はアメリカを考える上では外せない。むしろ基礎と言っていいかもしれない。

すべての事象に裏があるとする斜に構えた見方もあるが、アメリカの本質はキリスト教の理念と切ってもきれないことを改めて思うのである。

出馬が噂されていたニュージャージー州知事のクリス・クリスティーも出馬しないことを決めた。これで共和党レースは前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニーとテキサス州知事リック・ペリーとの2強に、元ピザチェーンCEOのハーマン・ケイン、元下院議長ニュート・ギングリッチ、下院議員ミッシェル・バックマン他が続く形となった。(敬称略)

ペイリンの決断

アメリカの大統領選は9月に入って本格的なキャンペーンに突入した。

民主党からは再選をめざす現職大統領オバマが、共和党ではテキサス州知事リック・ペリー(リック・ペリーという候補 )、前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニーの2強にミネソタ州下院議員のミッシェル・バックマンを含めた数候補が追随するという戦いだ。

ペリーが参戦したことで、それまでのロムニーとバックマンの2強対決の図式が崩れ、ペリーとロムニーの2強対決へと変化した。8日にカリフォルニアで行われた共和党8候補による討論会をYouTubeで観ると、支持率で先頭をゆくペリーの大胆発言が目立っていた。それに他候補がかみついている。

オバマという彼らにとっての究極のライバルと戦う前に、同じ政党の候補たちをやり込めなくてはいけない。税制と雇用が当面は大きな論点になるが、これまでの何十年もの選挙戦と同じように、有権者は政策のよしあしだけで候補を決めはしない。それぞれがプラスアルファーを胸の内に秘める。むしろそのプラスアルファーの比重の方が大きいことが多い。

あとは前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが出馬するかどうかである。本人は今月末までに決断するとしている。彼女がアイオワ州で演説した映像を観ると、すでに大統領候補のように演説し、候補のようにメディアと接し、候補のように有権者と握手をしている。

アイオワ州は全米最初の党員集会(コーカス・予備選)の開催州であり、そのあとニューハンプシャー州へと移る。ペイリンはニューハンプシャー州にも足を運んで候補気取りである。立ち振る舞いを見るかぎり、出馬表明したくてしょうがないという空気が漂っている。

家族からの全面的支援があれば、半年前に出馬表明していたかもしれない。他候補が討論会を行うなかで、一人外野席にいて得な理由は少ない。まったく出馬する気がないのであれば、今のように全米行脚はしないだろう。

あきらかに探っている。ただ08年の大統領選でマケインの副大統領候補として惨敗しているだけに、もう負けたくないという意識が強いようにも思える。出馬する限りは勝てないと立候補しないというスタンスかもしれない。

小沢のようなキングメーカー的な立場からティーパーティー(茶会党)が推すペリーかバックマンを裏で支えるという見方もあるが、それは彼女の本意ではないだろう。

保守系TVのフォックス・ニュースの最新世論調査では、 共和党員の71%はペイリンに「出馬してほしくない」という数字がでている。それが彼女をますます悩ませる。(敬称略)

リック・ペリーという候補

アメリカ大統領選の共和党候補選びが面白くなってきた。ここまで前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニーが世論調査ではトップを走り、2番手に下院議員ミッシェル・バックマンがつけている。

前回の大統領選ブログで、このままでは来年11月オバマ対ロムニーという凡常な戦いになる可能性があり、テキサス州知事のリック・ペリーか前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが参戦すれば候補選びという点で興味の深度は増すとかいた(オバマ対ロムニー )。

13日、大方の予想どおり、ペリーが出馬表明をした。ペイリンも個人的には参戦したいはずだが、家族、特に子供たちのプライバシー等を憂慮していまだに決断がついていない。

ペリーという政治家はアメリカの政界ではよく知られた人物である。直接インタビューしたことはないが、アメリカのメディアの受け答えを聞いたことがある。シャープな切り返しができず、論客とはほど遠い印象を受けた。 

「宗教色が強すぎるよ、彼は。親切に見えるけどかなり傲慢だな」

記者仲間の評である。

            

     

                           

外見は保守派の中高年に好まれそうで、壇上に立って笑顔を振りまくだけでニュート・ギングリッチやロン・ポールよりも票が伸びそうな手合いだ。前大統領のブッシュがテキサス州知事時代にずっと副知事を務め、ブッシュがホワイトハウスに来てからはテキサス州知事である。

減税の主張者で、もちろんビジネス優先。同性愛の結婚には反対で、死刑支持者という保守本流の政治家といってさしつかえない。オバマにとってはペリーのような対抗馬の方が攻撃しやすく、戦いがいがあるかもしれない。ただ、オバマの支持率は初めて40%を切り、今後の成り行きが見ものである。(敬称略)

オバマ対ロムニー

大統領選挙を「自分のライフワーク」などと公言しておきながら、このブログで選挙について記したのは5月23日(米ロ大統領選へ) が最後である。恥ずかしい限りだ。

今日まで、共和党からはほとんど勝ち目のない候補を含めて15人ほどが出馬宣言をしている。特定の州だけで出馬宣言をしている候補もいるので実際はもっと多いが、泡沫候補が大勢いるのは日本でも投票所に行って聞いたことのない候補がリストされているのと同じである。 

来年11月6日の本選挙までずいぶん時間はあるが、候補のネームバリュー、選挙資金、選対の力、有権者の反応、世論調査、政策の良し悪しなどを考慮すると、私の見立てでは現在のところ前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー、ミネソタ州下院議員のミッシェル・バックマンの2候補しかオバマと相対するだけの力量はないだろうと思っている。

ビジネスマンのハーマン・ケイン、前駐中国大使のジョン・ハンツマン、元下院議長ニュート・ギングリッチ、テキサス州下院議員ロン・ポール、前ミネソタ州知事ティム・ポーレンティーといった候補たちがこれからロムニーを追い上げ、予備選をトップで通過するようには思えない。

アメリカ政界の事情を熟知していない人でさえ、たとえばギングリッチやポールにほとんどチャンスがないことくらいはわかる。だが、新聞やテレビははっきりと言わない。

日本で政治記者が政局を外したら左遷である。「客観性を重視する」というセリフと「上部からの強い自制」によって選挙報道にはブレーキがかかる。本気で候補を平等に扱う姿勢を貫くのなら、泡沫候補すべてを報道すべきであるが、そうはならない。同時に大胆な予測もしない。

私はどこからの影響も受けないので、これまでの経験と分析ではっきりとモノを書いていくつもりである。

2012年の大統領選が熱を帯びてくるには前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが選挙戦に入ってくるか、テキサス州知事のリック・ペリーが出馬するかだろうと思う。ペリーは出馬していないが、いくつかの世論調査では2位につけている。

もし両者が選挙戦に加わらない場合、共和党の予備選はつまらないレースになる。このまま大きな波風が立たずに来年11月、オバマ対ロムニーの戦いになる可能性もある。(敬称略)

    

                               by the White House