ハリス・トランプ討論会

Photos: The Harris-Trump debate | CNN Politics
from CNN

お互い言いたい放題で、、、ドロー。

日本時間11日午前10時から行われた米大統領選挙の討論会を観た。最初から両者ともに興奮気味で、自分の言いたいことを巻くしたてた戦いで、これからアメリカ合衆国という大国のトップにたつ政治家がもつべき落ち着きや余裕が見られず、もう少し泰然自若な姿勢でいてほしかった。

ディベートというものは、究極的には 相手を攻撃して自分の主張を正当化させることにあるのだろうが、論点がかみ合わず、言いたい放題だっという印象が拭えない。

トランプ氏が「私は歴史上どの共和党議員よりも多くの票を得ました。実際どの大統領よりも、現職の大統領よりも得票しています」と言えば、ハリス氏は「私は多岐にわたるエネルギー源に投資し、外国産原油への依存度を減らすことを実現してきました。外国産の原油に頼りすぎてはいけないという認識は重要で、私たちは国内原油生産量を史上最大にしたのです」と自身の優位性を強調する。

そしてトランプ氏はこう述べた。

「中東で起きていることを見てみろ。(私が大統領だったら)こんなことが起こるはずがない。私はこの問題を速やかに解決する。ウクライナやロシアとの戦争も終わらせる。私が次期大統領になれば、そう、大統領になる前に終わらせる」

これを暴言と言わずして何と言おう。その通りになれば誰も文句は言わないが、お手並み拝見である。

ハリス勝利の予想:アラン・リクマン

米国では大統領選が熱を帯びてきている。9月5日に当欄で記したように、各種世論調査では、カマラ・ハリス氏(民主党)がドナルド・トランプ氏(共和党)をわずかにリードしているが、11月5日の投票日まで予断を許さない。

だが、1984年の選挙から当選者を的中させている政治学者がおり、この人はハリス氏であるという。この分野で私が最も信頼してきている政治学者、アラン・リクマン(Allan Lightman)氏(77)である。ハーバード大学で博士号を取得した同氏は、大統領に選出される候補の要件を「13」に分類し、それぞれを精査し、過半数である7以上の項目で相手候補よりも上にきていたらホワイトハウスに手が届くとしている。

その13の要件とは、①党からの支持、②党内での抗争、③現職かどうか、④第3政党の候補がいるか、⑤短期的経済動向、⑥長期的経済動向、⑦政策変更、⑧社会不安、⑨スキャンダルの有無、⑩外交・軍事政策の失敗、⑪外交・軍事政策の成功、⑫現職大統領のカリスマ性、⑬挑戦者のカリスマ性、となっている。

リクマン氏は現時点で、ハリス氏が8要件で有利に立っており、3要件で不利、残り2要件は未定であるとしている。同氏は米メディアに対し、「バイデン政権はいま、終わりの見えないガザでの戦争に深く関与している。同じ民主党のハリス氏がそれに引きずられているが、13要件のうち5つだけがネガティブなので、トランプ氏がホワイトハウスを奪還する可能性は低い」と述べる。同氏によれば次期大統領はハリス氏ということになるが、どうなるだろうか。

米大統領選:最新世論調査

米大統領選の投票日まであと2カ月となった。複数の世論調査を眺めると、カマラ・ハリス氏(民主党)がややリードしており、ドナルド・トランプ氏(共和党)は半歩うしろを歩いているという印象だ(以下敬称略)。

たとえばエコノミスト誌の数字はハリスが47%でトランプは45%。USAトゥデイ紙はハリス48%対トランプ43%でやはりハリス優勢だ。ウォールストリート・ジャーナル紙もハリス48%、トランプ47%、ニューヨーク・タイムズ紙はハリス49%対トランプ46%となっており、僅差ではあるが軒並みハリスがリードを維持している。だがラスムセン調査はトランプが48%、ハリスは46%でトランプのリードとなっている。

ただ、まだ2カ月という選挙期間があるので、何が起きてもおかしくない。多くの州ではハリスがリードを保つが、ノースカロライナ州をはじめ、ペンシルバニア州、アリゾナ州などではトランプがトップにきており、何も断言できないというのが今年の選挙である。

2012年の選挙でオバマのキャンペーン・マネージャーを務めたジム・メッシーナは米メディアに対し、「どの激戦州でもまだ誤差の範囲内にある」と述べたように、2人の差異はわずかなため、トランプはこれから巻き返すことが可能であると示唆する。

今年の大統領選はまだまだ何が起きるかわからない。

国のトップを決める選挙:改めて選挙資金を考える

日本では自民党の小泉進次郎氏(43)が総裁選に立候補する意向を固め、総理を目指すという。誰しもが思っていることだと思うが、小泉氏は石破元幹事長(67)や林官房長官(63)といった他の候補者よりも年齢が若く、外見も爽やかで、日本の将来に明るい光を射せるような印象がある。もちろん、それだからといって実質的に満足のいく政治力を行使できるかは別問題で、お手並み拝見というところである。

米国でも国のトップを決める選挙の真っただ中で、11月5日までトランプ対ハリスの戦いがつづく。今朝のニュースで、メロン銀行の相続人であるティモシー・メロン氏(82)が7月、5000万ドル(約72億7000万円)という巨費をトランプ氏のスーパーPAC(特別政治活動委員会)に寄付していたことがわかった。

米国では企業による政治家への直接献金が禁止されているため、スーパーPACという受け皿をつくり、無制限の献金を可能にしている。メロン氏は今年6月にもトランプ氏に同額の5000万ドルの献金をしており、何としてもトランプ氏に大統領になってほしいようだ。

私はこれまで30年以上にわたって米大統領選を取材しているが、長い間、米国では「より多くの選挙資金を集めた候補が勝つ」と言われてきた。それほどカネとホワイトハウスには密着なつながりがあった。それは集金額や使途する額に上限がないため、より多くの金をテレビやラジオ、さらには政治広告費等に使うことで影響力を高めることができたからだ。それで実際にカネのある候補が勝ってきた。

だが2016年で流れが変わる。それまではテレビの政治広告に莫大な資金が必要だったが、インターネットがテレビの影響力を凌駕する。それを成し遂げたのがトランプ氏だった。2016年は「ヒラリー対トランプ」の戦いで、ヒラリー・クリントン氏はトランプ氏の選挙資金より90億円ほど多く集めたが、負けるのだ。

今年はここまで、ハリス氏の方がトランプ陣営よりもより多くの資金を集めていると伝えられているが、ハリス氏がヒラリー氏の二の舞にならないことを祈りたい。

トランプと不法移民

ドナルド・トランプ前大統領(以下トランプ)が不法移民に対して厳しい態度を取ってきたことは多くの人の知るところである。2016年の大統領選でトランプが当選した理由の一つが移民対策の強化を打ち出したからだと言われている。

実際、トランプが当選してからメキシコからの不法移民の数は減り続けた。共和党支持者だけでなく、多くのアメリカ人は違法なルートで国内に入り込んでくる移民に対して快く思っていない。入国するのであれば正規の手続きをつかって入ってくるべきと考えるのは当然といえば当然である。

今年の大統領選の共和党大会で、会場には大きなプラカードが掲げられた。そこには「 Mass Deportation Now(今こそ大量強制送還を)」と記されていた。移民についてのアプローチは、民主党が歴史的に寛容策をとっているが、共和党は厳格な対応を推し進めてきた。

ただ米国は基本的に移民によって成り立っている国であり、移民を受け入れることで経済活動をより円滑にするとの見方があり、筆者は個人的にはこちらの考え方に賛同する。多くの移民を受け入れるという寛容な態度もアメリカには必要だからだ。

ただ、米国には推定1100万ほどの不法移民が滞在していると言われ、トランプは軍隊を使ってでも強制送還をするとの意気込みだ。しかも今年の選挙では、こうした強硬な移民政策を選挙キャンペーンの中心に据えている。不法移民を一網打尽にするために州兵を出動させ、収容所に収容し、強制送還させるつもりだという。

こうした強硬策が米市民に広く受け入れられるかどうかは11月の選挙にあらわれるはずだ。さて、どうなるのか。(敬称略)