ハリス VS トランプ

日本時間22日午前、米ジョー・バイデン大統領が大統領選から撤退すると発表し、後継者にカマラ・ハリス副大統領を指名したことで、11月の戦いは事実上ハリス対トランプに移行した。

すでに米メディアは2人が戦った時を想定して世論調査を行っており、いくつかの調査では、現時点でトランプ氏がハリス氏を平均2ポイントほどリードしている。「ニューフェイス」になったことで、ハリス氏がトランプ氏を引き離すとも考えられたが、実際には保守層のトランプ支持は厚く、大きく動いていない。ましてや共和党は党大会が終わり、党のまとまりを強めたところなので、ハリス氏は保守の岩盤層を崩せていない。

トランプ氏は撤退を決めたバイデン氏に対し、慰労を込めた敬意を表するのかと思ったが、実際にSNSで発した言葉は、「彼(バイデン)は史上最悪の大統領だ。群を抜いて最も劣悪な大統領」という散々な内容だった。

さらに「ウソとフェイクニュースを発信し、(自己防衛できる)地下から出ないことで大統領という地位をえた」といった憎まれ口をたたいて、バイデン氏を攻撃。トランプ氏の本音を垣間見たような気がした。

米国は本当にこんな節操のない人物を再び大統領にしようというのかーー。

バイデン:大統領選は辞退しろ

バイデン大統領の再選への道が険しくなってきている。なにしろ、身内である民主党議員や党員から「そろそろ身を引く時なのではないか」との声が強まってきているからだ。

米時間17日、カリフォルニア州選出の連邦下院アダム・シフ議員(64)が「これは自身が決めることだが、 私は(大統領の)バトンを渡す時がきたと思う」と述べたのだ。シフ議員は民主党の重鎮の一人であり、党内からここまで明確に現職大統領に「もう辞めろ」との意思表示をしたのは同議員が初めてであり、議会内にもバイデン降ろしの声が醸成されてきていることを示すものである。

バイデン氏本人はいまのところ選挙戦から降りるつもりはないと繰り返しのべているが、本人もこうした声が日増しに強くなっていることは重々承知のはずで、私は8月に行われる民主党全国大会の前後で辞退の決断をすることになると踏んでいる。

そうなると、「もしトラから確トラ」が本当に現実味をおびてくる。

副大統領候補:バンス氏が選ばれた理由

「やはりこの男は計算高い」

ドナルド・トランプ氏が米時間15日、副大統領候補にJ.D.バンス上院議員(オハイオ州)を選んだ時、脳裏にかすめた思いである。日本ではバンス氏の名前はほとんど知られていなかったし、米政界でも上院議員になって2年しかたっていない人物なので、大物とは言いがたい。それなのにトランプ氏が同氏を副大統領候補に指名したのには理由がある。

今年の選挙はここまで、支持率を眺めると、トランプ氏が数パーセントのリードを保っている調査が多いが、依然としてトランプ・バイデン両氏は接戦といって差し支えない。トランプ氏としては本選挙で、なんとかして現職大統領を突き放したいはずである。

しかも、トランプ氏は今回の選挙が中西部の一握りの激戦州で勝敗を決することがわかっており、重要州であるオハイオは落とせないとの判断から同州出身のバンス氏を選んだ可能性が高い。副大統領というのは大統領に不測の事態が生じた時には大統領に格上げされるが、それ以外は忠実な併走者という位置づけた。

あくまで「副」であり、自分よりも飛びぬけた才能がある人物である必要はないし、むしろイエスマンの方が大統領としては扱いやすい。そこで選ばれたのがバンス氏ということになる。

バイデンへの進言

The Biden-Harris Record | The White House
Photo courtesy of the White Houose

6月27日にアトランタ市で行われたバイデン大統領とトランプ氏とのテレビ討論会以降、バイデン氏の大統領としての能力に大きな疑問符がつけられているが、過去数日、これまで同大統領の「味方」であった人たちからも否定的なコメントが出始めている。

まずバイデン氏を「友人と思っている」とまで述べてきた俳優のジョージ・クルーニー氏が、匙を投げるコメントをした。ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、こうのべている。

「 私はジョー・バイデンを愛している。だが、我々には新しい候補が必要だ」と発言し、現在のバイデン氏に対して厳しい意見を投げた。クルーニー氏は3週間前に見たバイデン氏について、「もはや2010年に見たバイデン氏ではない。いや2020年のバイデン氏ですらない。年齢の問題だろう。このままでは今年11月の選挙で勝つことはできない」と否定的な見方をしている。そして、こうも述べる。

「これは年齢の問題だ。それ以上の何ものでもない。同時に、この問題を覆すことはできない。だからバイデン氏が11月に選挙で勝つことはできない。その上、下院でも勝てないし、上院でも負けるだろう。これは私だけの意見ではなく、個人的に話をした上院議員、下院議員、知事全員の共通する意見だ」

ここまではっきりと「バイデンは勝てない」と身内から発言されてしまうと、バイデン氏としては立つ瀬がない。やはり撤退する流れになる公算が強いと読む。

11月の米大統領選予想

米時間6月27日に行われたバイデン大統領とトランプ氏との討論会以降、同大統領の支持率が急落している(Trump Widens Lead After Biden’s Debate Debacle)。あの討論会を観たほとんどの人はバイデン氏の心許なさと脆弱さを感じたかと思う。アメリカという大国のリーダーとしてはもはや不適格なのではないかとの思いが強まった。

個人的には勇退すべきだと考えているが、本人は現時点ではまだまだやる気を見せており、すぐに辞めるという流れにはなっていない。周囲からの撤退の声には耳をかさず、「まだやれる」との判断なのだろうが、今後選挙戦から降りますという発表がなされる可能性は十分にある。

その時に誰が民主党の代表候補になるのか。

すでに予備選で多くの候補が脱落していったが、私が推すのはカマラ・ハリス副大統領である。バイデン氏が降りた場合、今年11月には「ハリス対トランプ」という戦いになるのではないかと邪推している。ただ結論を先に述べると、ハリス氏もかなり健闘するが、最終的にトランプ氏が返り咲くという流れになるのではないか。

これは個人的な希望とは逆である。できればハリス氏に勝ってもらい、「米史上初めての女性大統領誕生」というニュースをみたいのだが、「やはりトランプは強かった」という結果に落ち着くのではないか。これは30年以上も大統領選を追ってきた当方のハンチ(Hunch・予感)である。