トランプの支持率がいまだに高い理由

アメリカ大統領選の予備選(アイオワ州コーカス:2024年1月15日)が始まるまでにはまだ時間があるが、選挙活動はすでに活況を呈している。その中でも、共和党から出馬しているドナルド・トランプ氏の支持率が依然として同党ではトップで、このままの流れでいくと来年11月の投票日にはバイデン対トランプという「おじいちゃんの戦い」になる可能性が高い。

民主党の現職バイデン氏が再選を望むことは年齢を考慮しても「アリ」だろうが、共和党が再びトランプ氏を代表候補に推す意図がどうしても解せないのだ。これまで数々の暴言を吐いてきた人物であり、多角的に大統領としての適性を考えたときに、私の中には不適任という答えしかない。

それではなぜ共和党員たちはトランプ氏を担ぎ上げようというのか。最新のロイター通信の世論調査結果を眺めると、共和党指名争いで「トランプ支持」と答えた人は52%で、2位の デサンティス・フロリダ州知事は13% にとどまっており、トランプ氏が大きくリードしている。

トランプ支持者の多くはクリスチャンの白人男性で、近年は世間の関心が女性やマイノリティーにいきがちであるため、「自分たちこそが偏見の被害者である」との思いを強くしている。この思いこそがトランプ氏の政治家としてのキャリアのスタートで、白人男性の被害者意識がどれほどトランプ氏をもちあげているかは日本にいるとなかなか理解しづらい。

共和党有権者の多くがトランプ氏の非難を避けているということもある。ある世論調査では、回答者の3分の2は「白人男性こそがいまの米国ではもっとも差別されているグループ」と答えているほどだ。それを代弁してくれているのがトランプ氏なのだという。

さあ、トランプ氏はどこまで突っ走れるのだろうか。

もう一人の米大統領候補

来年11月の次期大統領選投票日までずいぶん時間はあるが、米選挙には選挙期間が設けられていないため、すでに何人もの候補が出馬を表明し、選挙活動をおこなっている。

民主党は現職ジョー・バイデン大統領が再選を目指しているが、なにしろ80歳という年齢なので、今後1年半の間に再選を辞退する可能性もある。その機会をうかがうように、民主党からはロバート・ケネディ・ジュニア氏(69)、作家のマリアン・ウィリアムソン氏(71)が出馬している。実はもう一人、私が注目している人物がいる。

まだ出馬表明をしていないので、候補とは呼べないが、今後出馬する可能性が高いと踏んでいる。その人物とはカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏(55)である。2003年にサンフランシスコ市長に当選し、07年には72%という高い得票率で再選を果たした。

その後、同州の副知事を務めたあと、2018年選挙で州知事に当選した民主党の期待の星である。

file photo

現在はバイデン氏の再選に助力しているが、ニューサム知事をよく知る関係者は「大統領を狙っている」と述べており、バイデン氏に何かあればすぐに出馬する意向があると言われる。2024年に挑まなくとも、その次の選挙にでてくる可能性はかなり高いと読んでいる。

「比較的近いうちに(再選への出馬を)発表するつもりだ」

米バイデン大統領が再選への意向をかためたようだ。米時間14日(金)に訪問先のアイルランドで、記者団に告げた。以前から2期8年を務めるつもりであると言われていたが、ようやく正式に表明することにしたようだ。

これで現段階では2020年と同じ「バイデン対トランプ」の戦いになる形勢になってきた。バイデン氏は1942年11月生まれで、すでに80の大台に乗っているが、自分ではまだ大統領職をこなせると思っているようだ。

確かに80歳でも元気ではあるが、米国の大統領という重職を86歳まで本当にこなせるのか、私は以前から疑問視してきた。すでに高齢による心もとなさは随所に見られる。本人は本当に2期目の最後まで大統領という世界トップの行政職を務められると思っているのだろうか。

ホワイトハウスにいる限り、職務の面だけでなく生活全般においても至れり尽くせりの環境ではあるが、緻密で冷静な政治判断をくだせるのか疑問である。次の大統領選で再選されても、カマラ・ハリス副大統領(58)があとに控えているとの思いがあるから再選に挑むのか。

もうそろそろ若い候補に譲るべきではないかと考えている。

次期大統領選の候補者

ご存じの方も多いかと思うが、私は長い間、米大統領選を取材してきた。次の大統領選は2024年11月だが、来年になると、米メディアは選挙報道を増やし始める。というのも、日本の選挙と違って大統領選には選挙活動期間が設けられていないため、次々と出馬表明する候補が出てくるからだ。

すでにトランプ前大統領(76)は出馬表明をしているが、当ブログでも書いたように(トランプ氏が再び大統領選に)、私は彼にはもう当選のチャンスはないと思っている。共和党からは他に、フロリダ州のロン・デサンティス知事(44)が参戦してくると思われるし、ジョン・ボルトン元大統領補佐官(76)も興味を示している。あとはテキサス州のテッド・クルーズ上院議員(52)、マイク・ペンス前副大統領(63)も出馬の可能性がある。

民主党からは現職ジョー・バイデン大統領が再選を目指すと思われるが、本人はまだ正式に「ゴーサイン」をだしていない。現職なので、焦る必要もないのだが、再選への表明を遅らせるということは「再選辞退」というオプションも十分に考えられる。個人的には、今年11月で80歳を迎えた人であり、一期だけで勇退した方が本人にとっても国家にとっても得策なのではないかと思っている。

予備選最初の州がサウス・カロライナに

ほとんどの日本人にとっては関係ないことかもしれないが、長年アメリカの大統領選挙を追っている私としては「ちょっとしたニュース」なのである。

というのも、2024年米大統領選の予備選で、最初に行われる州がこれまでの中部アイオワ州からサウス・カロライナ州に変更になりそうなのだ。私が大統領選を実際に取材するようになったのは1992年である。アイオワ州は1972年から全米50州の中では最初に予備選(実際はコーカス)を行ってきており、その結果が残りの州に少なからず影響を与えることから、候補たちはアイオワ州を重視してきた。

だが民主党全国委員会は24年から、サウス・カロライナ州を最初の予備選州にすることを承認したという。というのも、アイオワ州やニューハンプシャー州といったこれまで予備選の初期に行われた州の大多数の住民は白人で、有色人種からより多くの票を期待できるバイデン氏としては「勝ち」の可能性を上げたかったのだろう。

実際、アイオワ州での黒人の比率は4.3%でしかないが、サウス・カロライナ州での黒人比率は26.4%。バイデン氏は先月80歳になり、2年後の再選に本当に挑むのかどうかはまだわからないが、少なくとも勝てる環境づくりはしておこうということなのだろう。

予定では2024年2月3日がサウス・カロライナ州、6日にニューハンプシャー州とネバダ州、13日ジョージア州とつづく。個人的には、バイデン氏は退いて若くて有能な人物に任せるべきだと考えている。