ハリス敗北が意味するもの

ドナルド・トランプ氏が再び大統領になることが決まり、個人的には落胆している。ハリス氏よりもトランプ氏の方が米経済にとっては良好という見方は理解できるが、来年から「あのトランプ」が戻ってくるかと思うと意気消沈してしまう。

ただ、何故ハリス氏が負けたのかという点に注目すると、いくつかの限界を指摘できるかと思う。それは人種と性別である。オバマ大統領が誕生した時に、「黒人は大統領になれない」というジンクスが破られ、人種の壁は砕かれたはずだっが、黒人の血が入っているハリス氏は今回、結果的に敗北を喫してしまう。父親がジャマイカ人で母親がインド人という非白人のルーツが、有権者の判断に多少なりとも影響したのではないか。

さらに女性の大統領を誕生させるということに、「ガラスの天井」がいまだに存在することをみせつけられた。2016年にヒラリー・クリントン氏が敗れた時も言われたが、大国のトップに据えることを意識的、または無意識的に忌避する心性が多くの市民に残っていたのではないか。

ボストン大学のタミー・ヴィジル教授は米メディアにこう述べている。

「ハリス氏の敗北は、米国には男女関係や人種問題でまだまだやるべきことが残っていることを示している」

世界の中でも進歩的と思われている米国で、多くの市民の心中にはいまだに暗い影がまとわりついているということである。

開票中・・・

トランプvsハリスの戦いは現在(日本時間6日午後2時10分)開票作業が行われており、まだ最終的な結果が発表されていない。ただ、すでに当確がでている州があり、現時点での選挙人数はトランプ氏の230人対ハリス氏209人で、トランプ氏がリードしている。

全米50州に割り振られた選挙人の合計は538。過半数の270を奪った候補が勝つわけだが、トランプ氏は残り40人にまで迫っている。まだ開票途中であるが、ここで注目したいのは得票数である。

ここまでトランプ氏は 61,236,597票を得ている一方、ハリス氏は 57,041,934票。大統領選はどの州を奪うかが重要で、獲得票数ではないが、すでにトランプ氏は400万票以上も多く獲得している。

現時点ではトランプ氏が優位な立場にあり、このままゴールテープを切る可能性が高くなってきた。まだ何があるかわからないが、近々に「トランプ氏、大統領に返り咲き」というニュースが流れるかもしれない。

いよいよ投票日

当ブログではこれまで、米大統領選について継続的に記してきた。ジャーナリストなのでどちらかの候補に肩入れすることを控え、いちおう客観的に報道してきたつもりである。

ただ、いく先々で「どちらが勝つと思いますか」と訊かれる。その時はトランプ氏の可能性が高いですと答えてきた(11月の米大統領選予想)。個人的には「ハリス推し」なのだが、今年は稀に見る接戦で、ハリス・トランプ両氏の勝率は互角なため、予測が当たったとしてもそれは「たまたま」でしかないと思っている。

Kamala Harris, Donald Trump locked in tight national race: Survey
Photo courtesy of the Hill

問題はトランプ氏が大統領に当選した場合、どういった政策を採るかである。ここまで同氏は貿易政策を抜本的に改革し、社会保障給付への課税撤廃や法人税の大幅引き下げ等を行うとしている。その中でもすべての輸入品に10%から20%、特に中国からの輸入品には最大で60%の関税をかけるとしており、関係者は戦々恐々としている。

これがトランプ政権が誕生した時の真骨頂となる政策で、外国製品への依存を減らすことで自国産業と雇用を守ろうというのだ。製造業の雇用を増やすことで効果的にインフレを抑制し、日々の生活費の削減を狙う。こうした主張が米有権者の心にどこまで響いているかわからないが、結果はすぐに出るはずである。

堅調な米経済の中で、どちらが大統領になるのか

10月31日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙で、同紙の解説者であるグレッグ・イップ氏が興味深い指摘をしていた。それは今週火曜(5日)の大統領選で選ばれる次期大統領はいまの堅調な米経済を背景に、どちらが選ばれても政策に関係なく、いいスタートを切れるというのだ。過去1年間の米経済の成長率は2.7%で、先進7カ国の中ではもっとも高く、トランプ氏であってもハリス氏でも順風をうけることができ、経済面で大きな心配はいらないとする。

一方、2024年の日本の国内総生産(GDP)の実質成長率は日本経済協力開発機構(OECD)によると、マイナス0.1%になると予想され、主要7カ国(G7)の中では唯一のマイナス成長が見込まれている。少し統計を調べると、G7で経済成長率が1%を超えているのは米国だけである。

米国は生産性の向上によりインフレに陥りにくくなり、財政赤字が続いても体制を維持できるようになり、高い給与水準を保てている。それにより2023年下半期以降、米国の平均賃金の上昇率はインフレ率を上回ることになっている。

そんな時、共和党員と公言する米国人と話す機会があった。彼は「トランプ氏は嫌いだが、トランプ氏に一票を投じる」と矛盾することを言う。どういうことか問うと次のように説明してくれた。

「ハリス氏の経済政策は社会主義的で、けっして褒められるものではない。ギャラップ調査によれば、米国人の52%が4年前よりも自分や家族の生活が苦しくなっていると答えている。良くなったとしたのは39%だけ。バイデン=ハリス政権は多くの無料プログラムを提供して税金を浪費したばかりか、不法移民を含めた多くの移民の流入を許した。個人的にトランプ氏は嫌いだが、ハリス氏よりは何倍もいい」

一人の米有権者の意見でしかないが、皆さまはどうお考えだろうか。

米大統領選:どうなるのか

11月5日の米大統領選の投開票日まで残りわずかとなった。当サイトでお伝えしているとおり、民主党カマラ・ハリス氏と共和党ドナルド・トランプ氏の戦いは優劣がつかないまま、ほぼ互角の支持率を維持した形で投票日を迎えることになる。

ただ、南部と中部の保守層が多く住む州は確実にトランプ氏がものにするはずだ。たとえばテキサス州は51.3%対43.9%でトランプ氏がリード、モンタナ州も56.5% 対38.2%でトランプ氏が優勢を保っている

一方、西部や東部諸州はハリス氏が大きくリードしている。たとえばカリフォルニア州はハリス氏が59.4%だが、トランプ氏は34.9%でしかなく、同州でハリス氏が負けることはない。また東部マサチューセッツ州でもハリス氏の支持率は59.5%で、トランプ氏(33.6%)を大きくリードしている。

ただ激戦州と呼ばれる7州の支持率は両氏ともほぼ同率で、どちらがものにするかは選挙当日までわからない。あとは見守るしかない。