米大統領選現地リポ:激変した戦法

米東部ニューハンプシャー州で大統領選を取材した。

大統領選取材は今年で8回目になるが、最も先が見ない選挙と言って差し支えない。それほど混迷している。理由が3つある。

1つは米有権者がいま右派と左派でほぼ同率に分断していること。

2つ目は、過去の大統領選では選挙資金額と得票数に強い相関関係があったが、この見方が通用しなくなってきたこと。

3つ目が「サイコグラフィック(心理学的属性)マーケティング」などの新しい手法が選挙活動に応用され始め、有権者の投票行動が読みづらくなっていることだ。

以上の3点を詳述する前に、現地での様子を少し記したい(続きは・・・米大統領選現地リポ:激変した戦法)。

ブダジェッジ躍進

最初の予備選であるアイオワ州党員集会が終わった。

民主党では70歳代の候補が多いなか、38歳の民主党ピート・ブダジェッジが日本時間2月5日正午現在(開票率62%)、トップ(26.9%)にきている。開票率が100%になった時に現在2位のバーニー・サンダーズ(25.1%)に抜かれるかもしれないが、私がここまで予想してきた展開と言えるだろう。

アイオワ州でジョー・バイデンが1位通過することはないと踏んでいたとおりの展開になりそうだ。同氏はサウスカロライナ州やスーパーチューズデーで少し巻き返せるかもしれないが、1月27日のブログ(2020年米大統領選(25):バイデンは弱い候補?)で記したように、勢いは感じられない。早々に撤退ということもあり得る。

今後はサンダーズ対ブダジェッジの戦いに移っていくと読む。ブダジェッジの躍進は年頭に期待したとおりで(今年、注目すべき米関連ニュース3点)、「もしかするともしかする」かもしれない。オバマの時もそうだったが、同性愛の史上最年少大統領という斬新さが世界を騒がせるかもしれない。

ただ次回2月11日のニューハンプシャー州予備選では、サンダーズが勝つだろう。というのも、サンダーズは同州から遠くないバーモント州の上院議員で、ニューイングランド地方では健闘すると思われるからだ。

また選挙から目が離せない日々が続きそうである。(敬称略)

米大統領選:トランプも驚くサンダース躍進

米大統領選がいよいよ本格的に幕を明ける。

共和党は現職大統領のドナルド・トランプの再選で党内がまとまっているいるが、民主党は混戦のままだ。

その中でいま浮上してきているのが、バーモント州上院議員のバーニー・サンダーズである。

全米レベルでは今でも前副大統領のジョー・バイデンがほとんどの世論調査でトップにきているが、2月3日のアイオワ州党員集会(コーカス)と同11日のニューハンプシャー予備選に限ると、サンダーズが首位にきている世論調査結果が多い。

民主社会主義者を名乗る同氏が混戦の中から抜け出すのだろうか(続きは・・・米大統領選:トランプも驚くサンダース躍進)。

2020年米大統領選(25):バイデンは弱い候補?

民主党レースは数カ月前から「トップ4による戦い」と言われてきた。私もそう発言してきた。だが今月20日、「ニューヨーク・タイムズ」が全米の世論調査で現在5位の上院議員エイミー・クロブシャーを推薦。ニューハンプシャー州で最大の日刊紙「マンチェスター・ユニオン・リーダー」もクロブシャーを推薦して、予備選レースは4強から5強に移っていくかもしれない。

米新聞が特定候補を社説などで「イチオシ」する動きはアメリカの伝統的な慣習だが、大手新聞が推薦しても、その候補が勝てるわけではない。クロブシャーはABCテレビのインタビューで「私はどの候補よりも多くの新聞社から推薦を受けている」と胸を張ったが、今後2週間でどこまでやれるだろうか。見ものである。

過去1年、全米レベルでの支持率という点では、バイデンがずっとトップを走ってきた。いまでも多くの州でバイデンがリードを保つが、予備選最初の州であるアイオワと次のニューハンプシャーで勝ち進むかは微妙なところである。

from Youtube

私が否定的な見方をする理由が3つある。1つ目はバイデンの両州での支持率がトップを維持していないことだ。勝ったとしても圧勝にはほど遠い。安定した力強さがない。かつての副大統領で、誰もが知る人物であり、穏健派ということだけで消極的な支持が集まっているかに見える。

2番目は人望のなさだ。先週アイオワで開かれた集会には数十人しか聴衆が集まっていなかった。あまりにも寂しい。4年前のトランプや12年前のオバマの時は、どの会場も入りきらないくらい人が埋まり、まるでロックスターが登場したかのような騒ぎになった。だがバイデンの場合、まるで「望まれていない演歌歌手」が現れたかのようだった。すべての集会がそうではないが、「バイデンが近所に来るなら是非とも聴きに行こう」という人が少なすぎる。

3番目の理由は選挙資金である。大統領候補として、あまりにもカネが集まっていない。トップ4の中では4番目である。政治資金調査を行っている非営利団体「オープンシークレッツ」によると、バイデンの選挙資金集金額はここまで3676万ドル(約40億円)。サンダーズは約2倍、トランプは4倍強の資金を集めているだけに、あまりにも頼りない。有権者のバイデンへの期待値が高ければおのずと献金する人が増え、集金額も多くなるものだが、そうはなっていない。

バイデンが選挙戦をトップで走り続けられたとしたら、それは私にとっての「大きな驚き」になる。(敬称略)