72%の米有権者:バイデンは大統領として不適格

今朝(7月1日)、仕事場(外国特派員協会)にきてすぐ、ヨーロッパ出身の記者と二人で先週行われたバイデン氏とトランプ氏の討論会について話し合った。

彼がまず「あのディベート、どう思った」と訊いてきた。

私は率直に、「もはや2人ともにアメリカという大国のトップに座るだけの能力も資質ももちあわせていない。残念ながら、今年の大統領選はとんでもない人物を国家のトップに据えようとしている。考え直さないといけない」と述べた。

すると同僚もしごく同意し、「今からでも遅くないから、民主・共和両党は新しい候補を擁立した方がいい」と提案。3億3000万強もの人たちが住んでいるアメリカで、よりによって80歳前後の高齢者を両党の代表者に選んでしまったことは、皮肉といって差し支えない。

春先から予備選を行い、多くの候補が脱落していって2人が残ったわけだが、こうしたプロセスが本当に適切だったのかどうかを改めて考え直す必要があるだろう。現職バイデン氏は明らかに認知能力に限界がきているし、本人もそれを認めている。CBSニュースの世論調査では、72%の有権者がバイデン氏は大統領として不適格と回答している。これまで多年に渡って最適任者を選択するシステムが機能してきたと思っていたが、考え直す時期がきているだろうかと思う。

50歳前後で知力、体力が充実した有能な男女は数多くいるはずである。そうした人物を大統領候補に選出できなかったことは、この大統領選のプロセスに欠陥があることを証明しているのではないか。この点でも同僚と意見が一致した。本当の意味での「アメリカらしい変革」を実現してほしいと思う。

TV討論会: バイデンvsトランプ

二人は握手もせず、最初からずっと敵愾心をむき出しにしていた。心の中を覗いたら、信じられないような過激な言葉が隠されていたかもしれない。

米時間27日午後9時からジョージア州アトランタ市で始まったジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ氏のテレビ討論会。米国の大統領選には選挙期間が設けられていないため、長期間に渡って選挙活動を続けられるが、現段階ではすでに米有権者の8割がどちらに投票するか決めているといわれる。

討論会では経済問題から移民問題にいたるまで多くの議題で論戦が繰り広げられたが、相互に言いたいことを言い合う場面がほとんどで、議論が噛みあわない。バイデン氏は今回、1週間前から特訓を重ねていたが、声はかすれ、沈黙があったりと精彩を欠いた印象は否めない。

けなし合う場面も多く、トランプ氏が「あなたがやってきたこと、過去のことも含めて、もはや完全に犯罪だ」と糾弾すると、今度はバイデン氏が「あなたの言ってことのすべてがウソだ」と捲したてる。

私は1984年のレーガン・モンデール両氏の大統領選を現地でみて以来、ずっと追っているが、これほど明け透けに両者がけなしあった討論会はなかったかもしれない。それほどお互いの感情がむき出しになり、「両者ともに大統領という公職には相応しくないのではないか」と思ったほどである。しかも80歳前後のご高齢で、「若く、バイタリティーに溢れた候補はどこにいったのか」というシンプルな疑問が湧き上がってきて、今年の選挙にはいくつものクエスチョンマークがついている。

トランプの切り札:ララ・トランプ

Lara Trump, Wrightsville Beach native and daughter-in-law of Republican presidential candidate Donald Trump. Photo by Hannah Leyva.
photo courtesy of Hannah Leyva

大統領選に出馬しているドナルド・トランプ氏(以下トランプ)にこんな素敵な娘がいたことをご存じだっただろうか。

娘といっても次男エリック・トランプの妻なので義理の娘であるが、ララ・トランプ(Lara Trump)は現在41歳。もちろん義父トランプを支援しており、今年3月8日には共和党全国委員会の共同委員長に選出されて、選挙戦を全面的にバックアップしている。

テレビ局の元プロデューサーだったこともあり、トランプの広報に多大な影響力をもつ。これまでトランプの個人的なイメージはともすれば否定的に受け取られがちだったが、そうしたマイナスイメージを払拭しようとしている。

トランプの選対はいま、複数の訴訟に直面して多額の弁護士費用を必要としているため、ララは資金調達活動にも力を注いでいる。さらに、政党としての共和党とトランプ陣営を統合して、一つの組織として動かすことにしており、今後こうした動きがどこまで功を奏するかは見ものである。

バイデン対トランプ:Neck and neck

11月5日の米大統領選の投票日まで、5カ月を切った。民主党の現職バイデン大統領(以下バイデン)と共和党のトランプ氏(以下トランプ)の支持率は過去数カ月、ほぼ互角でNeck and neck(接戦)である。世論調査によってはトランプが数パーセントのリードを維持しているかと思えば、他の調査会社の数字は現職バイデンが頭ひとつ出ていたりする。

CBSニュースとYouGovの共同世論調査(9日発表)によると、トランプを支持すると回答した人は50%であるのに対しバイデンは49%。またヤフーニュースとYouGovの最新共同調査によると、バイデンが46%でトランプは44%という数字で、拮抗している。

以前にも当欄で記したが、上記の数字は有権者全体をならした時のもので、支持層によって数字には大きなバラつきがある。黒人だけの支持率を眺めると、バイデンが81%を奪うがトランプは18%でしかない。ただ65歳以上の有権者をみると、58%がトランプを支持し、バイデンは41%である。

いずれにしても、11月の投票日までほぼ互角の争いが続くと思われ、今年の選挙はどちらが勝つかを読むのは難しい。今後、第3の候補である弁護士のロバート・ケネディ・ジュニアが支持を拡大させて当選するという可能性はかなり低いので、やはり「おじいちゃん対決」を見守るしかないだろう。

老害が忍び寄るバイデン

新しいニュースではないが、このところ米メディアはバイデン米大統領(以下バイデン)の認知能力に強い懸念を示している。現在81歳のバイデンは、人の名前を混同したり、すでに他界した人を存命であると取り違えたり、メモを読んでいる時に急に長い間黙ってしまったりと、あきらかに高齢であるがゆえの言動が頻繁にみられるようになった。

そうした事態を表面化させないために、ホワイトハウスは最近メディアとのインタビュー機会を故意に制限しているといわれる。今年4月末までにバイデンが行った記者会見やインタビューの数は過去数十年、どの大統領よりも少ない。

同時に、連邦議員たちとの会合も減っている。大統領に就任した年には、議員との会合は年30回以上も行われたが、2年目はおよそ20回に、そして3年目には10数回に減った。

仮に今年11月の選挙で再選を果たしたとしても、次の4年間、大統領職をつつがなく全うできる可能性は低いだろう。バイデンはそうしたことを自身で解らなくてはいけない。そうした判断ができないということ事態、もうすでに大統領としては適任ではないと言えるのではないか。今からでも遅くない。考え直すべきだろう。