私は時々、自分が以前に書いた文章を読みかえす。「よくこんなことを恥ずかしげもなく書けたものだな」と思うこともあれば、「私にしてはなかなかいいことを言っている」という時もある。一応、プロの文章家として金銭をいただいてモノを書くようになってから35年が経つ。それなりに生活をしてきているので、「それなりのもの」を書いてきたと思っている。
先日、当ブログに書いた文章を読み返していると、「心に残るヒトコト」というタイトルの文章に出会った。ちょうど10年前の8月に書いたもので、私がインタビューした英国の写真家のコメントに感銘を受けて書いたものだった。今でも彼に話を聞いたあの日のことは昨日のことように思い出すことができる。
というのも、あの時の彼の言葉は今でも私の心の奥底にしっかりと張りついて残っているからだ。それは「写真家の生への姿勢」とでも呼べる言葉で、次のように述べたのである。
私が「これまでのベストショットと呼べる1枚はありますか」 と訊いた時だった。彼は次のように即答したのだ。
「まだベストショットは撮れていない(I haven’t taken my best shot yet)」
もちろん自分で「この1枚は凄い」と思えるショットもあったはずである。それまで数え切れないほど撮ってきたはずだが、彼はそれまで撮ってきた写真には満足せず、これからベストショットを撮るという心持ちでいたのだ。これこそがプロだなと思ったし、私もそういう心持ちで次の文章を書いていかなくてはいけないと思ったものである、、、さあ、イクゾー!