これまでの人生で心に残る一言というものがある。
先週、英国の写真家にインタビューした時、久しぶりに「これだな」と思える言葉を耳にした。
写真家は70歳代前半で、ベトナム戦争にも従軍カメラマンとして赴いた老練なフォトジャーナリストだ。ベトナム戦争以後、何万枚の写真を撮ってきたかわからない。
「死ぬまで撮り続けるだろう。それが俺の生き方というより、それしかないからな」
テーブルを挟んで、少しだけ斜にかまえ、あまり視線をあわせない。饒舌のようでいて、言葉を選んでいるようでもあり、独特のスピードで語る。ただ、ひたむきさが伝わってきた。
随分と打ち解けてきたと思った時に「これまでのベストショットと呼べる1枚はありますか」 と訊いた。
「まだベストショットは撮れていない」
即答だった。
その一言で、写真家の生への姿勢を垣間見た。帰路、「これだな、人生はこれだ!」と一人で妙に納得してしまった。
I haven’t taken my best shot yet!