アメリカの病理

アメリカ大統領選に出馬している不動産王ドナルド・トランプの勢いがとまらない。

多くの政治アナリストは「支持率が高いのは今だけ」と評しているし、私もそう考えている。年内には失速するかに見える。

ただ、共和党候補たちによる第1回目の討論回(8月6日)で暴言を吐いたあとも支持率はトップを維持している。というより、勢いが増した感すらある。どの世論調査でもトランプがトップである。もちろん共和党内の話で、民主党はヒラリー・クリントンがトップである。

トランプの支持率が高い理由は、他の政治家が吐かない本音をわかりやすい言葉で語っていることによる。ビジネスで成功した自信が言動にあらわれ、「俺ならこうやって解決する」という単純明快なスタイルが受けている。

個人的に、トランプが述べる話の約9割に賛成できないが、アメリカの一部の有権者の不満を代弁していることは確かである。湧き上がるエネルギーはジェブ・ブッシュの数十倍はあるような印象だ。

彼を支持するツイッターの書き込みをいくつかご紹介したい。

「(アメリカ国内への)不法移民の流入を、これまでどの政治家も阻止できなかった。彼なら本当に阻止できそうだ」(アメリカとメキシコ国境に万里の長城を築くという考えに対し)

「トランプこそが(ワシントンの)屁のように腐りきった空気を浄化できる男だ」

「メキシコ人やハイチ人、中東の人間、それにアフリカ人など、アメリカはこれまでスポンジのように彼らを受け入れてきた。彼らを自国に追い返すのが最良の策だ」(トランプの排他思想に賛同して)

こうしたトランプを推す排他的でかたよった保守思想は、アメリカ社会の中ではごく一部に過ぎない。民主党の有権者はもちろん、共和党の主流派にさえ毛嫌いされている。

これを「アメリカの病理」と呼んで差しつかえないだろう。短期的には反オバマ=反リベラルにスポットライトが当たっているということだ。(敬称略)

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Photo courtesy of Donaldjtrump.com