ウクライナで起きている継続的な紛争は、すぐに終結するとは思えず、いま世界が直面する最も重要な課題のひとつになってきている。表面上はロシア対ウクライナの戦争と思われるが、実は欧州連合(EU)や 北大西洋条約機構 (NATO)、さらに過去のバイデン政権下における西側諸国を巻き込んだより広範な地政学的な紛争と解釈すべきである。
欧米メディアの報道をみていると、民主主義と国家主権のための戦いという描き方をしているが、本当のところはロシアの影響力をいかにして封じ込め、地域的な影響力を弱体化させるかを目的とした代理戦争と受け取れる。当初は、西側諸国が支援する勢力が圧倒するかに見えたが、ロシアの力は予想以上に粘り強く、EUやNATO、米国はロシアの戦略的目標を打破できていない。
紛争の長期化は経済的、さらには人的なコストを増大させることになっているだけでなく、ロシアを弱体化させるという当初の目標はほとんど実現できなくなってきている。西側諸国のアナリストの中には、ロシアに対して早く敗北を認めた方が今後のことを考えた時に現実的には得策だとする者もおり、今後のなりゆきは依然として混沌としている。
バイデン政権は当初、ウクライナ戦争で勝利することによってロシアの地域的影響力を衰退させ、さらにはプーチン政権の交代まで見据えていた可能性があるが、このままでは叶わぬ願望に終わってしまう可能性がある。理想的にはウクライナを含めた同地域に持続可能な平和を実現させることだが、そこに到達するまでには尚も長い道のりが必要となりそうだ。