大地震に備えるということ

7日夜に起きた地震により、鉄道各線が影響をうけて、多くの帰宅困難者がでた。電車が使えなければバスかタクシーという流れになるが、長蛇の列ですぐには帰宅できない。ホテルも満室で、多くの方は本当にお困りになっただろうと思う。

朝日新聞(8日朝刊)によると、帰宅困難者がでた駅のある自治体がいくつかの施設を解放したという。ただ利用者数は震度5強を観測した足立区で47人、品川駅のある港区で7人、日暮里駅のある荒川区でたった2人だった。これはほとんど利用されなかったといっていい数である。

その理由は、ほとんどの方がこうした状況を想定していなかったため、近くの公共施設が寝る場所を提供していることを知らなかったからだろうと思う。さらに知らない場所で見ず知らずの人と寝るくらいなら、時間をかけてでも自宅に戻る方を選んだとも考えられる。さらに着替えも洗面用具もないため、特に女性は躊躇したのではないか。

ただ、今後の大地震などの自然災害に備えるため、公共の公会堂や体育館、さらに小中高は体育館を寝場所として解放する準備をすべきではないのか。同時にマットレス等の用意をしてもいいかと思う。こうした準備が広く認知されれば、鉄道各線が止まったときには近隣の施設に身を寄せられるようになる。少なくとも朝まで体を止められる場所があるという安心感だけでも提供できるので、いまと違うはずだ。いかがだろうか。

おカネで買えないもの

ドナルド・トランプが再び大統領選にもどってくるかもしれない。他メディアですでに記したように、次の大統領選に再出馬する可能性の方が、いまは高いと考えている( トランプ氏が多額の資金調達、大統領選へ準備着々トランプ氏が次の大統領選へ始動)。

ただ取材を続けていく中で、個人的にはトランプという人間を知れば知るほど嫌いになっていく自分がいることに気づく。理由の一つは、カネですべてを解決できると思えるような価値観を抱いているところだ。「カネで買えないものはない」といった考え方を信奉している人間を好きになれるはずもない。

端的に述べるならば、「カネで買えないものはない」と思うことほど浅薄な思想はないと考える。思想と呼んではいけなかった。単なる愚見だろう。というのも、本当に手に入れたいものはカネでは買えないからだ。簡単なことである。ハワイ州を買いたいと思っても安全保障上の理由から購入は無理である。国家間での土地の売買は可能であるが、21世紀になって異国の地を買うことは容易ではない。ハワイのコンドミニアムは買えるし、大金持ちであれば小島を購入することくらいはできるだろうが、ハワイ州そのものを手に入れたいと思っても叶わない。

カネがあっても空を飛ぶことはできない。飛行機やドローンを使ってではない。人間の四肢で大空を翔ることである。人間は地表を走れるし、海や湖で泳ぐことはできるが、空は飛べない。その点でカネは何の役にもたたない。

さらに学歴をカネで買うことはできない。知識や教養も買えない。思いやりや他人への配慮といったものも無理である。そして最も重要な「愛」というものを紙幣で手にいれることはできない。 そうなると、私が本当にほしいものはすべて買えないものと断言してもいいくらいで、安いモノだけがカネで売買されていると思えるほどである。時計やバッグ、車、そして家や土地などは相対的には安い買い物といえるかもしれない。

だからトランプが選挙資金を個人資産から賄い、湯水のように使えば当選を果たせると思わせたくないのである。 「おカネで買えないもの」もあったと悟らせたいのである。(敬称略)

中台の緊張

新聞やテレビのトップニュースには来ていないが、過去3日ほど、中国が軍用機を 台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入さ せており、軍事関係者から警戒の声があがっている。しかも過去3日間で計93機がADIZに侵犯しており、中国による軍事挑発であると見なされている。

中国が台湾侵攻を虎視眈々と狙っているとの見方は以前からあるが、米国が台湾の後ろ盾をなっている以上、もし中国による台湾侵攻があった場合は、軍事的にも経済的にも中国にとってはマイナス要素の方が大きいとも言われている。

中国が本当に軍事行動にでた場合、米国は国内のすべての中国保有資産を凍結し、台湾の独立政府を承認する可能性がある。さらに中国を敵国とみなして、中国とのビジネスやドル取引などを遮断するはずだ。米中の全面戦争になる可能性は低いが、米国は台湾、日本を含めた近隣国と協議して、地政学的な軍事的対応を講じて、「中国の台湾侵略」を可能なかぎり阻止する動きにでるだろう。

国連をはじめとして、国際社会から中国に対する非難が高まり、孤立していくかもしれない。こうしたマイナス要素が大きいと判断しても、習近平氏にとっては台湾統一は「中華民族の偉大な復興」と捉えており、多くの人の予想と反するかたちで軍事行動となって表れるかもしれない。

軍事評論家の中には「台湾有事」は「日本有事」であると考えるべきと述べる人もいる。いまから米軍がどういった行動をとり、自衛隊はどういった後方支援をするのかなど、十分に議論しておく必要がある。歴史を眺めると、こうした有事は予想していない時に、予想に反する形で勃発することがあるので、心の準備をしておくべきである。

岸田新首相への注文

「新首相」と書いたが、もちろんまだ正式に首相の座についたわけではない。だが事実上、次期首相になる人だろうから、少し早いが「新首相」と記した。

菅氏が首相としてあまりにも頼りなく、リーダーとしての気概も感じられず、明晰さの欠如さえ感じられるほどだったので、岸田氏が首相になることで少しばかり安堵している。先月13日に岸田氏の講演を聴いたとき、柔和で上品な立ち振る舞いを目にしたので、自民党としてはいい選択だったのだろうと思う(岸田氏あらわる)。

ただ岸田氏が提唱している「日本型の新資本主義」を眺めると、いかに社会格差を縮小させて富を分配し、安定的に経済成長をうながしていくかの具体的な見取り図はまだでてきていないようだ。たぶん、もっとも重要なのは財源を確保するために税制をどこまで変えていけるかだろう。高額所得者に課税していくことになろうが、国のトップに立つ以上、自民党の重鎮に気兼ねせず、失敗を恐れずに政策を押しすすめてほしい。

いま岸田氏がやろうとしているのは、60年代に池田勇人首相がやった「所得倍増計画」に似ているとの指摘がある。政治・外交よりも経済というエンジンの稼働率を重視して日本社会の貧富の差をなくし、さらなる高みに日本を押し上げようというものだ。これが実現できれば岸田氏の体制はしばらく続くことになるかもしれない。