パウエル氏の残像

コリン・パウエル氏が亡くなった。米国の元国務長官であり、統合参謀本部議長という米軍のトップに立っていた人物でもあった。91年の湾岸戦争を短期間で終わらせたとして、その手腕が高く評価されもした。

ただ私は個人的に、1995年11月のあるシーンが脳裏に焼きついている。ワシントンでフリーランスのジャーナリストとして独立して5年目だった私は、パウエル氏が96年大統領選に出馬する可能性を追っていた。当選すれば米国初の黒人大統領になるし、人物的にも能力的にも申し分のない人であると思っていた。

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当時の大統領は民主党ビル・クリントン氏。いくつかの世論調査ではパウエル氏が支持率で現職クリントン氏を上回っていた。だが95年11月初旬、同氏は大統領選には出馬しないという会見を開くのだ。

当時、パウエル氏のもとには「大統領になったら暗殺する」という脅迫が舞い込んでいた。そのためパウエル夫人が暗殺を憂慮して出馬を辞退させたという報道が出回った。ただ辞退した本当の理由は違うところにあると思っている。

パウエル氏はあの時、ある場所で「出馬を何度も何度も考えた」と述べたあと、次のようなことを口にしたのだ。

「自分の心の奥底をみつめてみました。35年間の陸軍勤務で国民との信頼関係を築いてきたとの思いはあります。しかし(大統領になるという)政治への情熱的なコミットメントが自分にはないことがわかりました」

これほど実直で、素直な心根を表にだせるということ自体、米軍トップにいた人としては稀有なことだろう。さらに自分自身に嘘をつかない態度はたいへん好感がもてた。私は政治的にはパウエル氏と違う立ち位置だが、人物的にはあれからずっとパウエル氏のファンでいた。

ご冥福をお祈り申しあげます。

習近平の危険な挑発:台湾上空の事故が招く惨劇に備えよ

台湾が設定している防空識別圏(ADIZ)に、10月1日から150機ほどの中国軍機が侵入したことで、中台関係の緊張がこれまで以上に高まっている。

中国と台湾の有事に発展してもおかしくないといった議論が散見される一方で、すぐに軍事衝突に入る可能性は低いといった冷静で一歩引いた言説もある。両国関係のイマを現実的に俯瞰してみたい。

中国軍機による防空識別圏への侵入は何も今に始まったわけではない。2020年だけでも380機が侵入しており、半ば常態化してきている。ただ今月に入ってから、侵入する機体数が急激に増えたことで、習近平国家主席の中国・台湾の統一の野望が全面に出てきたのではないかとの見方がある。

台湾の邱国正(チウクオチョン)国防相は10月6日、中国との緊張関係は過去40年で最悪の状態にあると述べ、両国間に偶発的な攻撃が生じるリスクが高まっているとした(続きは・・・習近平の危険な挑発:台湾上空の事故が招く惨劇に備えよ)。

今日のお宝(28):ソーキそば

今日は朝からどうしても沖縄そばが食べたかったので、有楽町駅の近くにある沖縄料理の店に直行しました。店に入る前は「沖縄そば」と思っていたのですが、メニューをみてから「ソーキそば」に変更。違いは沖縄そばが豚の三枚肉が乗っているのに対し、ソーキそばの方は骨がついたスペアリブです。

第6波は来るのか:新型コロナ(50)

過去数週間で、日本のコロナ新規感染者数は大幅に減り、東京では1日100人を切るようになった。数字だけを見る限り、何よりの傾向であり、このまま収束してほしいと願っている。

ただワクチンの接種率(2回)を眺めると、65歳以上の約9割が接種をおえている一方で、全体の比率を眺めると10月10日時点で64.7 %に過ぎない。この数字ではまだ集団免疫が獲得されたとはいえず、専門家の多くは第6波がくると予測している。

日本とほぼ同じ接種率なのが、フランス(66.9%)やドイツ(65.2%)だが、米国は56.8%、さらにインド(19.4%)やロシア(31.2%)といった国となると「まだまだ」と言わざるをえない。

米国はいま、日本と同じように第5波が収束しつつある段階だが、感染者・死亡者数の桁が違うので驚いてしまう。ここまで日本の感染者総数は約171万人、死亡者数は約1万8000人であるのに対し、米国の方はそれぞれ約4517万人、約71万人である。人口が日本の約3倍であることを考慮しても多すぎる。

米国ではここまで約7.3人に1人がコロナに感染した計算で、日本は約70人に1人である。この数字を眺めるかぎり、「アメリカよ、このていたらくは一体どうした」とつい口にでてしまう。

日本での感染者は減っているが、気を緩めてはいけないと真に思う。