「新首相」と書いたが、もちろんまだ正式に首相の座についたわけではない。だが事実上、次期首相になる人だろうから、少し早いが「新首相」と記した。
菅氏が首相としてあまりにも頼りなく、リーダーとしての気概も感じられず、明晰さの欠如さえ感じられるほどだったので、岸田氏が首相になることで少しばかり安堵している。先月13日に岸田氏の講演を聴いたとき、柔和で上品な立ち振る舞いを目にしたので、自民党としてはいい選択だったのだろうと思う(岸田氏あらわる)。
ただ岸田氏が提唱している「日本型の新資本主義」を眺めると、いかに社会格差を縮小させて富を分配し、安定的に経済成長をうながしていくかの具体的な見取り図はまだでてきていないようだ。たぶん、もっとも重要なのは財源を確保するために税制をどこまで変えていけるかだろう。高額所得者に課税していくことになろうが、国のトップに立つ以上、自民党の重鎮に気兼ねせず、失敗を恐れずに政策を押しすすめてほしい。
いま岸田氏がやろうとしているのは、60年代に池田勇人首相がやった「所得倍増計画」に似ているとの指摘がある。政治・外交よりも経済というエンジンの稼働率を重視して日本社会の貧富の差をなくし、さらなる高みに日本を押し上げようというものだ。これが実現できれば岸田氏の体制はしばらく続くことになるかもしれない。