順応する凄さ

この写真をご覧になって、たまたまうしろ脚で立ち上がった犬が写真に撮られたと思われるかもしれない。

実は、米コロラド州西部のユーレイという町に住むケイティー・パセックさんの飼い犬「デクスター」は、二足歩行する犬なのだ。6歳になるデクスターは5年前、交通事故にあって右の前脚に重症を負った。事故後すぐに獣医のところに運ばれたが、切断しか選択肢はなく、右脚を失った。同時に左の前脚も損傷を負っていたため、四足で歩くことはできなくなった。

傷が癒えるまで、数カ月かかった。だがパセックさんは、デクスターがうしろ脚2本で立ち上がり、みずから二足歩行を学習しはじめていたことに気づいていた。

いまでは「犬は二足歩行する動物」と思われるほど自然に立ち上がって歩く。順応という秘めた力には目を見張らざるをえない。

菅・バイデン会談

日本時間17日午前に米首都ワシントンで、菅首相とバイデン大統領が初めて対面による会談を行う。菅氏は日本を発つ前、こういうことを口にしていた。

「バイデン大統領と信頼関係を構築し、日米同盟をさらに強固なものにしていきたい。自由で開かれたインド太平洋の実現にむけて、日米のリーダーシップを世界に示したい」

この内容に何の異論もないが、「いかにも菅氏らしい」教科書的で無難な言い回しである。私にはむしろそこが心配である。菅氏だけでなく、首脳の周辺からも今回の会談の主な目的は、菅・バイデン両氏が信頼関係を築くことであるとの見方が伝わってくる。

もちろん会談では中台問題や地球温暖化問題、さらに中国の半導体問題まで話し合われるだろうが、菅氏はアメリカという同盟国で、かつ世界最強国に合わせていくという基本姿勢を崩さないのだろうと思う。

官房長官をやっていたとはいえ、外交のプロではない。1973年から上院議員をやっているバイデン氏が具体的に中台有事の際に、「いまの日本であれば、これくらいはできますよね」と約束ゴトを迫ってきた場合、菅氏はどこまで頷くのか、またどこまでノーと言えるのか、私にはわからない。

話の細部は外部には漏れないだろうが、どこまで菅氏は用意ができているのか。戦後ずっと日本の首相はほとんどの日米会談で受け身に回ってきており、こちら側からズケズケとものを言うべき時は言わなくてはいけない。菅氏はどこまで外交官としての手腕を発揮できるのだろうか。

火星でヘリを飛ばし、月に人間を送る米国の狙い

米国のジョー・バイデン大統領は2020年8月、ウィスコンシン州ミルウォーキーで行われた民主党全国大会で、聴く人の心をグッとつかむ話をしている。その日、同氏は新型コロナウイルスの影響を考慮して、デラウェア州の自宅からのオンライン参加だった。そこでこう述べた。

「民主党は米国人を再度、月へと送り込み、さらにもっと遠くの火星を目指します。NASA(米航空宇宙局)はその後、太陽系探査の段階に進む予定であり、私はその計画を支持します」

宇宙の話は過去も現在も、米国人の心をつかむという点では格好の題材であり、人の意識を未来志向にさせる最適のテーマである。しかも、すでに演説内容の一部は具現化している。

バイデン政権が2021年1月に誕生した翌月、NASAは最新の火星探査機「パーサヴィアランス(忍耐)」を火星に着陸させている。数日以内にも、「インジェニュイティ」という小型ヘリコプターを飛行させる予定である(続きは・・・火星でヘリを飛ばし、月に人間を送る米国の狙い)。

少しばかりのイライラ

ジャーナリストという肩書きで仕事をするようになって30年ほどがたつが、私の取材対象はアメリカを中心にした国外がほとんどなので、海外出張にいけないという状況は大袈裟に述べると片足を縛られている感覚に近い。

たとえば、10年前の2011年4月を振り返ると、初旬に北朝鮮の平壌に飛んでさまざまな場所を訪れ、帰国後すぐにアメリカのウィスコンシン州ミルウォーキー市に向かっている。そのあとカリブ海のジャマイカ島に飛んだ。その月は例外的に多忙な月だったが、動くことは苦痛どころか私にとっては快感なので、嬉しさが勝っていた。

だがコロナの影響で過去1年以上、国外にでていない。国外取材がかなわないので、一次情報としての海外ネタがとれず、いまはネットに頼らざるをえない。もちろんEメールやラインなどで海外からの情報を得ることはできるが、「少しばかりのイライラ」が募っていることは確かだ。

新型コロナウイルスに感染しないための行動はもちろんだが、先日も書いたように、国民がいち早く集団免疫を獲得できるように、政府は最善の努力をしてワクチンを国外から入手して接種していかなくてはいけない。明日から高齢者を中心にしたワクチン接種が始まるが「遅すぎた」と言ってもいいくらいなので、可能な限り早期に全国民レベルでの接種を望んでいる。