米国のワクチン接種率が如実に示す人種間格差

米社会にいまもって人種格差があることは、多くの人が知るところである。新型コロナウイルスによる死亡率でも、白人と黒人では開きがあり、白人よりも黒人の方が高いことが分かっている。

米民間調査機関APMリサーチラボが昨春公表したニューヨーク市の数字でも、黒人の方が白人より2.4倍も死亡率が高かった。黒人の方が医療保険に加入している割合が低いだけでなく、糖尿病や心臓疾患などの持病を抱える比率が高いことなども影響している。

いま新たに、ワクチン接種率でも黒人より白人の方がかなり高いことが分かってきた。ワクチン接種では、公共機関が人種格差や貧富差などに関係なく、機会均等を前提に実施すべきであるが、そうではなかった。

地域によって差はあるが、フロリダ州マイアミ・ヘラルド紙の調査チームがまとめた結果によると、白人と黒人のワクチン接種率には大きな開きがあった(続きは・・・米国のワクチン接種率が如実に示す人種間格差)。

サンデー毎日原稿

何か自慢のようになって申し訳ないですが、自分の書いた記事が 顔写真入りで「サンデー毎日」(5月9・16日合併号)に掲載されたのでお知らせいたします。


「ノマドランド」

観たい!観たい!観たい!

久しく映画館に足を運んでいないこともあるが、米時間25日夜にアカデミー賞で作品賞や監督賞などを獲った「ノマドランド」を早く観たいという思いが募っている。

アカデミー賞の発表後、Youtubeで22分にまとめられたダイジェスト版を観たら、すぐにでも全編が観たくなった。内容は企業倒産によって住む家を失った女性がキャンピングカーでの生活をはじめ、全米各地でいろいろな人と出会って人生を見つめ直すというストーリーだ。主演のフランシス・マクドーマンドはアカデミー主演女優賞を獲得している。

派手なアクションも甘い恋愛もない映画だが、22分のダイジェスト版を観ただけでも「生きている間にぜひ観ておくべき映画」という印象をうけた。

脚本も手がけたクロエ・ジャオ監督の紡ぎだすセリフに打たれもした。ジャオ氏は中国生まれの39歳で、こぼれ落ちんばかりの才能が感じられ、映画全体の魅力とおのおののシーンがそれぞれ光を解き放っており吸い込まれそうになった。

はやく観たあああい!

from twitter

菅会見で思うこと:新型コロナ(36)

昨夜(23日)、菅総理が新型コロナについての記者会見を開いた。施策が後手後手に回っているのは昨年からであり、どういった質疑応答をするのか気になってライブ映像を観たが、菅氏がこれから遅れを挽回できるとは思えなかった。

現時点で最も重要であるはずのワクチンの接種も、次のような発言を耳にして愕然とするばかりである。

「6月末までには合計1億回分を配布できるようにいたします。その上で、接種のスケジュールについては、希望する高齢者に、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう、政府を挙げて取り組んでまいります」

ワクチンについては治験が重要であり、時間がかかることは十分に理解しているつもりだが、それにしても動きが遅い。昨秋あたりに菅氏がみずから動いて、ワクチンを確保すべきであったのに、ファイザー社のCEOに電話で直接要請したのは先日渡米した時である。これでは日本国内の感染者が増え続けていくわけである。

ニューヨーク・タイムズがまとめた世界各国・地域のワクチン接種状況をながめると、日本はかなり下位に位置している。日本の数字は1.9%。人口の1.9%だけが接種されているというのは、先進国としては恥ずかしい。日本と同率に並んでいるのはミャンマーとラオスで、トーゴ(2.0%)や北マケドニア(2.1%)よりもワクチン接種率は低い。

逆にトップはインド洋に浮かぶセーシェルで、現時点でのワクチン接種率はイスラエルの60%よりも高い69%。イギリス50%、アメリカ41%、ドイツが22%という数字である。菅氏は「7月末を念頭に各自治体が、、、」といった悠長な話をしているが、菅氏の表情と言葉使いを見聞きするかぎり、鉄をも溶かすほどの情熱を感じないのは私だけだろうか。

感染爆発が起こらないことを切に祈りたい。

検査数を増やすべき:新型コロナ(35)

今月8日、当欄で「日本の感染者数が少ない理由:新型コロナ(34)」というブログを書いた。同じような内容になってしまうが、いま私が愚考しているのは、日本の潜在的コロナ感染者は数字で示されるよりはるかに多いのではないかということである。

いま東京も大阪も新規感染者数が増えつづけている。東京は今日(21日)の感染者数が843人で、大阪は1242人。すぐに収束する気配はない。メディアに出てくる数字は感染者数であって、分母にあたる検査人数はネットなどで調べないかぎり同時に公表されることは少ない。

検査数が一定でない中での「減った」「増えた」なので、こうした状況での一喜一憂はほとんど意味がないかと思う。東京であれば、検査数は1日多くて1万人超で「しかない」。8日のコラムでも述べたが、アメリカの検査数は日本の10倍以上で、たとえば東京都と比較される大都市ニューヨーク市ではいま、1日13万人から14万人の検査をしている。その中での新規感染者が4659人(20日)という数字で、検査数は過去1週間平均で約14万5000人(ニューヨーク・タイムズ紙)だ。

すでにコロナ禍に突入して1年以上がたつ中、日本はどうしてニューヨークと同じレベルの検査数をこなせる体制を確立していないのか。「していない」というより、単に「してこなかった」だけの話なのではないかとも思ってしまう。もし東京で1日10万人以上の検査を実施していたら、新規感染者は8000人くらいに増える可能性がある。

なぜ日本は検査数を増やさないのだろうか。多くの方は同じことを考えるはずで、1年以上もたっていながら「増やせない」というのは行政の怠慢でしかないだろう。行政側が故意に検査数を抑えているとは思いたくないが、地方自治体だけでなく、日本政府はいち早く全国民に対して無料の検査とワクチン接種を実施しなくてはいけない。