タクシーの中へ(10)

当ブログの「タクシーの中へ」シリーズは何年も前から続けているが、最後に書いたのは1年以上も前になる。その間も相変わらずタクシーにはたくさん乗っているが、運転手さんと以前のように話をしなくなったので、時間が空いてしまった。

先日、仕事場の前から乗ったタクシーの運転手さんは、こちらが乗るとすぐ、運転席で深々とお辞儀をして迎えてくれた。「ご乗車ありがとうございます」という優しい言葉もかけてくれる。久しぶりに運転手さんと話をしてみようという気になった。コロナ禍でタクシー利用客は減ったのか、増えたのかを訊いてみた。

昨年と比べると、外出する人の総数は減っているはずだが、電車やバスなどの公共交通機関を利用したくない人がタクシーを使うことで客足は悪くないかもしれないとの思いもあった。

丁重な対応をする運転手さんは言った。

「減ってますよ。特に4月、5月は悲惨でした。潰れたタクシー会社もありますから」

「潰れたところもあるんですか・・。いまも状況は同じですか」

「春に比べるとまだいいです。売上は昨年比で7割、8割くらいですかね。でも深夜が全然ダメです。われわれは夜中に稼ぐんですが、夜間は5割にいくかいかないかです」

そう言ったあとの運転手さんは、うしろからでも落胆がわかるくらいの暗さをまとっているようだった。同じ運転手さんの車に乗り合わせることはないだろうが、タクシーにはこれからも乗っていこうと思っている。

抵抗し続けるトランプ氏:2020年大統領選(56)

11月3日の本選挙が終わり、12月14日の選挙人による投票も終わり、すでに勝負はついたはずだが、トランプ大統領はいまだに抵抗をやめていない。日本では大統領選の報道が少なくなったが、トランプ氏はいまでもツイッターに「米国史上最悪の選挙不正があった!」(20日)と書き込んでいる。

前日の19日には「バイデンは選挙に勝っていない。6州のスイングステート(激戦州)で大きく負けている。何百、何千という得票が各州で捨てられた」と記した。すでに共和党議員を含む多くの共和党員はバイデン氏の勝利を認めているが、トランプ氏と熱烈な支持者はいまだに戦いの姿勢を崩していない。

不正があったとの主張は多くの訴訟件数にもあらわれているが、これまで共和党側は「不正の首謀者」の名前を挙げて糾弾してきていない。単に不正があったという話だけでは訴訟で勝てるわけがなく、裁判所が門前払いをするのも無理はない。たとえば「ペンシルベニア州ではこの男が不正を行った張本人です」といって容疑者を出しているわけではない。

それでも、実際に不正が行われたとの話は複数ある。たとえばテキサス州のラス・ラムズランド前下院議員(共和党)の主張がある。1カ月ほど前のことだが、同議員はミネソタ州の複数の地域で不正があったと述べた。有権者数よりも実際に投じられた票数の方が多かったというのだ。

特に同州ベンビル・タウンシップという村では、投票率が350%だったと指摘。これが本当であれば、どこかで不正が行われたはずである。だが投票した人が有権者の3.5倍も多かったというのはウソだった。同村は人口が85人しかいない小村で、登録有権者は71人。その中で今回投票した人は63人であり、実際の投票率は89%。350%というのは大ウソだった。

トランプ氏と共和党はどこまで突っ張るつもりなのだろうか。

子どもの心の扉

先日、『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)という本を読んでいて、ハッとさせられる記述に出会った。

「子どもの心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついていない」

この一文ですでにピンときていらっしゃる方もいるだろう。『ケーキの切れない・・・』は少年院に収監されている少年たちについて書かれた本である。著者は立命館大学教授の宮口幸治さんという人で、児童精神科の医師でもあり、医療少年院に勤務した経験もある。

少年院に収監される少年たちは窃盗、恐喝、暴行・傷害、強制ワイセツ、放火、殺人まで、ありとあらゆる犯罪を行ってきている。そうした少年たちに説教と呼べるような高圧的な言い方をすると、ほとんどの場合、聞き入れられない。

というのも発達傷害や精神傷害を抱えている少年たちがいて、ドアは外側から無理に開けようとしても開かないのだ。内側から自分たちの意志で開けるしかない。それは本人の「やる気」と言い換えることもできる。

さらに本のタイトルにもあるように、心に病をもった少年に「丸いケーキを三等分してください」と言っても均等に切れないことがわかった。想像できないほどの形で切りわけてしまうのだ。

自分の経験も重ねて話すと、小学校の時に母親から「勉強しなさい」とよく言われていたが、親からやれと言われてやっているうちは本当に身につく学びとは言えない。本当に学びたいと自分から思った時にはじめて多くのモノを学べることに気づいたのは、ずっと後になってからのことである。

心の内側の取手・・・。

米最高裁がトランプ氏にダメ出しした理由とその影響

米大統領選の投票日から1カ月半が経とうとしているが、いまだに米国では政治的葛藤が続いている。

12月14日は全米の州都で選挙人(538人)による投票が行われ、民主党ジョー・バイデン氏が次期大統領に選ばれる運びで、ドナルド・トランプ大統領に実質的な再選のチャンスはもうない。

だがトランプ氏は12月13日のツイッターで、「戦いは始まったばかりだ」と記し、いまだに戦う姿勢を崩していない。

というのも6000万人以上の共和党員がジョー・バイデン氏の勝利を否定しているばかりか、2週間前のエコノミスト誌の世論調査でも、共和党有権者の79%が「負けたことを認めるべきではない」とトランプ氏を後押ししているからだ(続きは・・・米最高裁がトランプ氏にダメ出しした理由とその影響)。

(同記事はヤフー・ニュースにも取り上げられているので、そちらのサイトも添付します。米最高裁がトランプ氏にダメ出しした理由とその影響