タクシーの中へ(10)

当ブログの「タクシーの中へ」シリーズは何年も前から続けているが、最後に書いたのは1年以上も前になる。その間も相変わらずタクシーにはたくさん乗っているが、運転手さんと以前のように話をしなくなったので、時間が空いてしまった。

先日、仕事場の前から乗ったタクシーの運転手さんは、こちらが乗るとすぐ、運転席で深々とお辞儀をして迎えてくれた。「ご乗車ありがとうございます」という優しい言葉もかけてくれる。久しぶりに運転手さんと話をしてみようという気になった。コロナ禍でタクシー利用客は減ったのか、増えたのかを訊いてみた。

昨年と比べると、外出する人の総数は減っているはずだが、電車やバスなどの公共交通機関を利用したくない人がタクシーを使うことで客足は悪くないかもしれないとの思いもあった。

丁重な対応をする運転手さんは言った。

「減ってますよ。特に4月、5月は悲惨でした。潰れたタクシー会社もありますから」

「潰れたところもあるんですか・・。いまも状況は同じですか」

「春に比べるとまだいいです。売上は昨年比で7割、8割くらいですかね。でも深夜が全然ダメです。われわれは夜中に稼ぐんですが、夜間は5割にいくかいかないかです」

そう言ったあとの運転手さんは、うしろからでも落胆がわかるくらいの暗さをまとっているようだった。同じ運転手さんの車に乗り合わせることはないだろうが、タクシーにはこれからも乗っていこうと思っている。