子どもの心の扉

先日、『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)という本を読んでいて、ハッとさせられる記述に出会った。

「子どもの心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついていない」

この一文ですでにピンときていらっしゃる方もいるだろう。『ケーキの切れない・・・』は少年院に収監されている少年たちについて書かれた本である。著者は立命館大学教授の宮口幸治さんという人で、児童精神科の医師でもあり、医療少年院に勤務した経験もある。

少年院に収監される少年たちは窃盗、恐喝、暴行・傷害、強制ワイセツ、放火、殺人まで、ありとあらゆる犯罪を行ってきている。そうした少年たちに説教と呼べるような高圧的な言い方をすると、ほとんどの場合、聞き入れられない。

というのも発達傷害や精神傷害を抱えている少年たちがいて、ドアは外側から無理に開けようとしても開かないのだ。内側から自分たちの意志で開けるしかない。それは本人の「やる気」と言い換えることもできる。

さらに本のタイトルにもあるように、心に病をもった少年に「丸いケーキを三等分してください」と言っても均等に切れないことがわかった。想像できないほどの形で切りわけてしまうのだ。

自分の経験も重ねて話すと、小学校の時に母親から「勉強しなさい」とよく言われていたが、親からやれと言われてやっているうちは本当に身につく学びとは言えない。本当に学びたいと自分から思った時にはじめて多くのモノを学べることに気づいたのは、ずっと後になってからのことである。

心の内側の取手・・・。