これで英語が話せるようになりますか?

今日、ランチを食べた後に有楽町駅前にある三省堂書店に立ち寄った。英会話本のコーナーにいくと、たくさんの新刊本が並んでいる。

英会話本はいつの時代にも高い需要があるが、それで日本人の英会話力が高まったかどうかは定かではない。誰もが知ることだが、英会話本を数冊読んだところでペラペラになれるわけではない。知らない表現を覚えることはできるが、それが会話の中でスッと出てくるかどうかは別問題である。

私はアメリカに25年も住んでいたので、できて当たり前だが、いま振り返ると「いちおう喋れるようになってきた」と実感したのは2年ほどしてからである。言語を習得するためには、特に話ができるようになるためには、毎日浴びるように耳から英語を入れないといけない。それはとりも直さず、頭の中で英語から日本語に訳すのではなく、英語をそのまま理解し、英語でモノを考えるということに他ならない。

日本語に訳して理解している間はまだ英語が自分のものになっていないということだ。だから「これで英語が話せます!」的な本には首をかしげざるを得ない。

新しい英語(13)

今朝、ネットで英語の記事を読んでいると、これまで目にしたことのない曜日を表す単語が目に入った。

Blursday(ブラーズデー)。

少なくとも、最後に「day」がついているので曜日であろうことは想像できたが、そのあとがはっきりしない。ネットで調べるとすぐに分かった。意味は「あいまいな日」だった。

「ぼんやりした」とか「曖昧な」という意味の「blur」を最初につけて、dayの前にSを置いた造語だった。昨年からコロナが世界的に蔓延し、リモートで仕事をする人が増えたことで曜日の感覚が希薄になり、「今日は何曜日なんだろう。まあ、いいか」といった日をブラーズデーということにしたようだ。

「Go To Travel」はトホホな英語

「旅行に行く」という日常的に使われる言葉をそのまま英語にした「Go To Travel」という言い回しは、残念ながらトホホな英語である。英米人が耳にすると「?」ということになる。

「Go To Travel」は観光庁が力を入れているキャンペーンであることはよくわかるし、意味もわかる。

しかし、日常的な英語表現に直すと「go on a trip」というべきで、「go to travel」どころか「 go on a travel」とも言わない。これはあまりにも決まりきった言い回しなので、英米人であれば間違う人はいない。

少し説明させていただくと、travelという単語は漠然とした「旅」という意味で、特定の「2泊3日の熱海温泉旅行」という時にはtripか journeyを使う。だからtravelという単語を使いたければ、「you can travel」というべきである。逆に「you can trip」とは言わない。

これは生活の中に入った表現なので、英米人であれば感覚的にわかっている。日本では単語そのものが日本語になってしまっているので、英語に置き換えるとおかしなことになる。ただ意味はわかるので、いま英米メディアでは「Japan’s Go To Travel Campaign」とカッコつきで使われている。

ティファニー・ツイステッド

いきなり「ティファニー・ツイステッド(Tiffany twisted)」と書いても、何のことかおわかりにならないかと思う。

実は昨日、外国特派員協会で久しぶりに顔を合わせたアメリカ人がこの表現を口にしたのである。正確には「She is a Tiffany-twisted girl」という一文だった。じつに懐かしい言い回しで、しばらくこの言葉を反芻してしまった。

ご記憶の方もいると思うが、この表現は1970年代に活躍したロックバンド「イーグルス」の代表曲「ホテル・カリフォルニア」に出てくるセリフなのである。いま歌詞を調べると、2番の歌詞の冒頭にでてきていた。

Her mind is Tiffany-twisted   She got the Merced Benz

「ティファニーのような高価なモノを身につけてベンツにも乗って」という意味である。

彼は共通の知り合いの女性についてコメントしたのだが、確かにその人はいつも高価な服を着て、貴金属品も身につけている。昔の表現だが、どこかとても新しい響きがあり、新鮮に感じたのはどうしてだろう。

70年代に舞い戻ったような気がして、帰りの電車の中ではユーチューブで「ホテル・カリフォルニア」を聴いていた。

新しい英語(12)

“You look fashion forward!”

ユーチューブでアメリカのテレビ番組を観ていると、トークショーの司会者がゲストの女優アリッサ・ミラノにこう投げかけていた。

fashion forward=ファッション・フォワード。ファッション業界の人は日本でも使っているかもしれないが、私にとっては初めて耳にする表現だった。

意味は「オシャレな」「流行の」という意味である。オンライン辞書をみると「2012年に登録」とあるので、新しい言葉だ。

ただ、いまの日本語に置き換えたときに「オシャレな」は古すぎる。「しゃれオツ」か「イケテル」くらいの感覚がfashion forward のニュアンスだろうか。

高校生だと「しゃれかわ」。

言葉は流転である――。