ティファニー・ツイステッド

いきなり「ティファニー・ツイステッド(Tiffany twisted)」と書いても、何のことかおわかりにならないかと思う。

実は昨日、外国特派員協会で久しぶりに顔を合わせたアメリカ人がこの表現を口にしたのである。正確には「She is a Tiffany-twisted girl」という一文だった。じつに懐かしい言い回しで、しばらくこの言葉を反芻してしまった。

ご記憶の方もいると思うが、この表現は1970年代に活躍したロックバンド「イーグルス」の代表曲「ホテル・カリフォルニア」に出てくるセリフなのである。いま歌詞を調べると、2番の歌詞の冒頭にでてきていた。

Her mind is Tiffany-twisted   She got the Merced Benz

「ティファニーのような高価なモノを身につけてベンツにも乗って」という意味である。

彼は共通の知り合いの女性についてコメントしたのだが、確かにその人はいつも高価な服を着て、貴金属品も身につけている。昔の表現だが、どこかとても新しい響きがあり、新鮮に感じたのはどうしてだろう。

70年代に舞い戻ったような気がして、帰りの電車の中ではユーチューブで「ホテル・カリフォルニア」を聴いていた。

新しい英語(12)

“You look fashion forward!”

ユーチューブでアメリカのテレビ番組を観ていると、トークショーの司会者がゲストの女優アリッサ・ミラノにこう投げかけていた。

fashion forward=ファッション・フォワード。ファッション業界の人は日本でも使っているかもしれないが、私にとっては初めて耳にする表現だった。

意味は「オシャレな」「流行の」という意味である。オンライン辞書をみると「2012年に登録」とあるので、新しい言葉だ。

ただ、いまの日本語に置き換えたときに「オシャレな」は古すぎる。「しゃれオツ」か「イケテル」くらいの感覚がfashion forward のニュアンスだろうか。

高校生だと「しゃれかわ」。

言葉は流転である――。

いつ英語が話せるようになるのか?

先日、スウェーデン人の青年を囲った食事会があった。日本にきて間もないので、日本語はポツリポツリである。こちらとの会話は英語になる。

北欧の人たちの多くが「普通に」英語を話すことは知っていた。彼もそうだった。

うらやましいのは「イギリスにもアメリカにも住んだことはありません」と言いながら、ほとんど英米人と同じレベルの英語を話していたことだ。

「スウェーデンでは英語を小学校2年からやります。私は他の人たちより、少しマシかな?」

2年生から高校卒業までの英語教育で、ほとんどの人が英語を話せるようになるという。言語学的にスウェーデン語が英語と近いという理由もあるが、日本人からみれば「ズルイ」以外にない。

私はアメリカに25年もいたので話せて当たり前だが、言いたいことを英語でスッと言えるようになるまでにはずいぶん苦労した。日本の英語教育だけでペラペラになった人がいたら、ご紹介してほしいくらいだ。

今春、「英語ができる」高校3年生と話をした時、愕然とさせられた。

というのも、彼女は大学受験の模試で偏差値83を取ったことがある生徒だったが、英語をペラペラ話せるわけではなかった。

都内の進学校に通い、「英語ができる」生徒でも話せないのが日本である。これは英語でモノを考えていないからで、頭の中で日本語から英語に翻訳しているかぎり、本当にしゃべれることにはならない。

文科省が主導して、全国の英語の先生たちに訳す作業をやめさせて英語だけで授業を進め、生徒たちに英語でモノを考えさせれば少しずつ変わっていくはずだ。

それでも英語が嫌いで、勉強をしない、話そうとしない、英語で考えようとしない人は今後もずっと英語は話せないままである。

新しい英語(11)

ある日の晩、会食の席でおいしいうどんを食べた。同席した女性2人は、真剣に英語を勉強しているという。

いまでも英語の勉強を続けている私としても励みになる話で、何もしなくなった時点で英語力は後退していくので前進しかないと思っている。

ただアメリカからもどって7年が経ち、英語力はゆるやかなくだり坂を下りている。英語圏にもどって住まないかぎり、わたしの英語力の再浮上はないだろうと思う。

先日、旅行関係の英語サイトを読んでいたら出会いました、、新しい英語。

Abolutely terrific!(最高にすばらしい)

普通の表現に思われるが、最初の単語「abolutely」に注目していただきたい。absolutely(最高に)の中の「s」が抜け落ちている。

これはスペルを間違えたわけではなく、故意に「s」を抜いたスラングだ。「s」を抜いた方が発音しやすいということだと思う。

これを英語の進化と呼ぶかは議論がわかれるが、私は新しい英語と位置づけている。

potomacriver1.jpg

よく走っていたポトマック川のランニング・トレイル(米ワシントンDC)

新しい英語(10)

テレビでもラジオでも、電車に乗っても英会話習得のための広告が目立つ。

35年前も同じだった。当時はカセットテープの教材で、繰り返し聴くべきだと勧められた。ずいぶん時間を費やしたつもりだが、喋れていると思ったことはなかった。

英会話教室にも通ったが、落ちこぼれた。

「ああ、もうこれで一生英語は話せるようにならないかもしれない」

少しだけ話せて、少しだけ聴けてという中途半端な状態がつづき、フラストレーションだけがつのった。

自分で「話せるようになった」と言えるだけのレベルに達したのは、アメリカに渡って2年ほどたってからである。そのあとも、知らない単語や表現がどんどん出てきて、語学は一生勉強だなという思いが強い。

短い表現でも「これは新しい」というものが少なくない。

That dinner was on hit!

この「….on hit」という言い方は昔からあるように思うが実は最近の言い回した。「very good」という意味。

日本語も新しい言い方がどんどん生まれているが、英語もしかりである。