「アメリカ湾」は受け入れられるか?

Executive Residence - Wikipedia
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ここまで横暴な米大統領がいただろうか。大統領が行政権を握っていることは誰もが知る。ただ、それは常識範囲内のことであって、独断でメキシコ湾をアメリカ湾に改名するという大胆な行為はそう簡単に許されるものではない。

Gulf of America' arrives on Google Maps | CNN Business
Image from CNN

アメリカ湾への改名は昨年からトランプ氏が言い続けてきたことだが、 2月9日を「アメリカ湾の日」に制定すると布告。この日、トランプ氏は現場海域の上空を飛行し、「メキシコ湾として知られていた海域は消し去ることのできない米国の一部だ」と発言して ご満悦の表情をみせた。グーグルマップはすでにトランプ流にならってアメリカ湾に改名した。

メキシコ湾という名称(スペイン語:golfo de México)は1550年の世界地図に初めて登場している。17世紀と18世紀には「メキシコの入り江」という表現も使われているが、アメリカ湾という表記はもちろん使われたことがない。500年近くも使われてきた名称を一人の大統領によって簡単に変えられていいものだろうか。

ロイター通信が行った世論調査では回答者の70%が改名に「反対」。25%だけが「賛成」だった。

トランプは貿易戦争に突入した?

2月3日付のフィナンシャル・タイムズ一面。トランプ大統領が関税を引き上げたことでインフレ懸念が高まり、同大統領はビジネス界からの反発に直面しているという内容。

記事中に「米国最大の貿易相手国3カ国に高関税を課すことで貿易戦争を開始」というくだりがあり、すでに貿易戦争(Trade war)という言葉が使われている。トランプ氏らしさが政権発足から際立っており、敵対的なアプローチが本格的な戦争を引き起こさないことを祈りたい。

シリアで起きていること

中東シリアのアサド政権が崩壊してから1カ月がたつ。親子2代でほぼ50年におよぶ独裁政権を築いてきたが、 反政府勢力の攻勢によって首都ダマスカスが陥落。アサド氏は空路でロシア・モスクワに亡命した。

シリアの内戦が始まったのが2011年で、10年以上にわたって反政府勢力と政府側との抗争が続いていた。この内戦により、国内ではこれまで40万人以上が死亡し、550万人以上が国外に難民として流出。今世紀最悪の人道危機といわれた。CIAの「ワールドファクトブック」によると、シリアの人口は約2156万人なので、約4人に1人が難民になった計算になる。

これを日本に置き換えてみると、人口1億2400万人のうち約3100万人が国外に流出するというとんでもない数字になる。誰も自分が生まれ育った国をあとにしたくなかったはずで、ディクテイター(独裁者)が去ったいま、ほとんどの人は祖国に戻りたいと思っていることだろう。

過去1カ月で、国外にでた難民たちが少しずつ母国に戻りはじめている。 国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR)によれば、アサド政権崩壊後、すでに11万5000人がシリアに戻ったという。今年半年で約100万人が帰国するとみられてる。何よりである。

寒波到来

今年は寒さが一段と増している。特に北陸から東北、北海道にかけては記録的な寒さで、上空5000メートルには氷点下36度という寒気が南下してきているという。

日本気象協会が発表した今冬の予想をみると、「2024年~2025年の冬は、暖冬となった前シーズンと比較して強い寒波の影響を受けやすい」という。さらに、「今月7日(火)以降は、日本の周辺で冬型の気圧配置が続き、8日(水)から10日(金)にかけて上空に非常に強い寒気が西回りで南下する」との予報である。

気になって少し調べると、日本国内のこれまでの最低気温は北海道旭川で記録されたマイナス41度(1902年)で、過去100年以上も破られていない。米国ではどうなのか。これまで記録された最低気温は、1971年にアラスカ州のプロスペクトクリークという所で記録されたマイナス62.1度。北極に近いアラスカであれば、これくらいの低さにはなるかもしれないが、氷点下62度という寒さはほとんど想像ができない。外にでて瞬きをしたら眼がくっついてしまうような怖さがある。

米国立気象局によると、今後1週間で米国では何千万人もの人々が過去10年間で最も激しい降雪と寒さに直面する可能性があるとしている。特にカンザス州、アーカンソー州、ケンタッキー州、ヴァージニア州は、極渦(polar vortex)に見舞われる可能性がある。

極渦とは、低気圧と寒気が地球の両極を車輪のように渦巻くことであり、厳重な警戒が必要になる。嵐が米東部に移動するにつれ、中部から大西洋岸に至る30州の約6000万人に気象警報が発令され、発達中の低気圧が今後3日間に大雪と氷をもたらす恐れがあるという。

長い間、地球温暖化が叫ばれていたが、どこに行ってしまったのだろうか。

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第三次世界大戦は本当か?

12月9日の当欄に「第三次世界大戦はすでに始まっている?」というブログを書いた。 ウクライナのヴァレリー・ザルジニー 元軍事総司令官 が、 「ロシアの独裁的同盟国がウクライナ戦争に直接関与することは、第三次世界大戦が始まったことを意味する 」という言説をもとに記したのだが、内外の情報を見聞きする限り、「すでに開始された」と解釈してもいいほどの状況になってきている。

当事国はロシアとウクライナだが、戦争開始から3年近くがたったいま、紛争地にいる兵士たちから聞こえている言語はロシア語やウクライナ語だけでなく、スペイン語、ネパール語、ヒンディー語、ソマリア語、セルビア語、韓国語などで、すでに地域紛争からグローバルな戦争へと変容しつつある。

ウクライナは「民主主義」を守るために戦っているというが、ロシアは米国の覇権主義や「集団的西側諸国( the collective West )」と戦っていると主張する。モスクワはさらに「多極的世界秩序( multipolar world order )」という言葉を使い、イランからシャヘド・ドローンを提供させるだけでなく、北朝鮮には弾道ミサイルと砲弾だけでなく数千人の兵士を送り込ませている。

さらに、ロシアにとっての最大の味方は中国で、ロシアが必要とする軍事技術だけでなく、西側の制裁からロシア経済を支える重要な役割も果たしている。他方で、モスクワは西側諸国の都市を核攻撃するかもしれないとの見方もあるが、核のボタンを押すことには大きな抵抗があるようだ。

著名な歴史家、セルゲイ・ラドチェンコ氏は「米国にとって、ロシアとの核戦争を回避することがこの紛争での最優先事項だ。二番目に重要なのはウクライナに勝利をもたらすこと」と述べており、当事国だけでなく、周辺国も含めたバランスのとれた安全保障政策が肝要であることは言うまでもない。