シリアで起きていること

中東シリアのアサド政権が崩壊してから1カ月がたつ。親子2代でほぼ50年におよぶ独裁政権を築いてきたが、 反政府勢力の攻勢によって首都ダマスカスが陥落。アサド氏は空路でロシア・モスクワに亡命した。

シリアの内戦が始まったのが2011年で、10年以上にわたって反政府勢力と政府側との抗争が続いていた。この内戦により、国内ではこれまで40万人以上が死亡し、550万人以上が国外に難民として流出。今世紀最悪の人道危機といわれた。CIAの「ワールドファクトブック」によると、シリアの人口は約2156万人なので、約4人に1人が難民になった計算になる。

これを日本に置き換えてみると、人口1億2400万人のうち約3100万人が国外に流出するというとんでもない数字になる。誰も自分が生まれ育った国をあとにしたくなかったはずで、ディクテイター(独裁者)が去ったいま、ほとんどの人は祖国に戻りたいと思っていることだろう。

過去1カ月で、国外にでた難民たちが少しずつ母国に戻りはじめている。 国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR)によれば、アサド政権崩壊後、すでに11万5000人がシリアに戻ったという。今年半年で約100万人が帰国するとみられてる。何よりである。

寒波到来

今年は寒さが一段と増している。特に北陸から東北、北海道にかけては記録的な寒さで、上空5000メートルには氷点下36度という寒気が南下してきているという。

日本気象協会が発表した今冬の予想をみると、「2024年~2025年の冬は、暖冬となった前シーズンと比較して強い寒波の影響を受けやすい」という。さらに、「今月7日(火)以降は、日本の周辺で冬型の気圧配置が続き、8日(水)から10日(金)にかけて上空に非常に強い寒気が西回りで南下する」との予報である。

気になって少し調べると、日本国内のこれまでの最低気温は北海道旭川で記録されたマイナス41度(1902年)で、過去100年以上も破られていない。米国ではどうなのか。これまで記録された最低気温は、1971年にアラスカ州のプロスペクトクリークという所で記録されたマイナス62.1度。北極に近いアラスカであれば、これくらいの低さにはなるかもしれないが、氷点下62度という寒さはほとんど想像ができない。外にでて瞬きをしたら眼がくっついてしまうような怖さがある。

米国立気象局によると、今後1週間で米国では何千万人もの人々が過去10年間で最も激しい降雪と寒さに直面する可能性があるとしている。特にカンザス州、アーカンソー州、ケンタッキー州、ヴァージニア州は、極渦(polar vortex)に見舞われる可能性がある。

極渦とは、低気圧と寒気が地球の両極を車輪のように渦巻くことであり、厳重な警戒が必要になる。嵐が米東部に移動するにつれ、中部から大西洋岸に至る30州の約6000万人に気象警報が発令され、発達中の低気圧が今後3日間に大雪と氷をもたらす恐れがあるという。

長い間、地球温暖化が叫ばれていたが、どこに行ってしまったのだろうか。

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第三次世界大戦は本当か?

12月9日の当欄に「第三次世界大戦はすでに始まっている?」というブログを書いた。 ウクライナのヴァレリー・ザルジニー 元軍事総司令官 が、 「ロシアの独裁的同盟国がウクライナ戦争に直接関与することは、第三次世界大戦が始まったことを意味する 」という言説をもとに記したのだが、内外の情報を見聞きする限り、「すでに開始された」と解釈してもいいほどの状況になってきている。

当事国はロシアとウクライナだが、戦争開始から3年近くがたったいま、紛争地にいる兵士たちから聞こえている言語はロシア語やウクライナ語だけでなく、スペイン語、ネパール語、ヒンディー語、ソマリア語、セルビア語、韓国語などで、すでに地域紛争からグローバルな戦争へと変容しつつある。

ウクライナは「民主主義」を守るために戦っているというが、ロシアは米国の覇権主義や「集団的西側諸国( the collective West )」と戦っていると主張する。モスクワはさらに「多極的世界秩序( multipolar world order )」という言葉を使い、イランからシャヘド・ドローンを提供させるだけでなく、北朝鮮には弾道ミサイルと砲弾だけでなく数千人の兵士を送り込ませている。

さらに、ロシアにとっての最大の味方は中国で、ロシアが必要とする軍事技術だけでなく、西側の制裁からロシア経済を支える重要な役割も果たしている。他方で、モスクワは西側諸国の都市を核攻撃するかもしれないとの見方もあるが、核のボタンを押すことには大きな抵抗があるようだ。

著名な歴史家、セルゲイ・ラドチェンコ氏は「米国にとって、ロシアとの核戦争を回避することがこの紛争での最優先事項だ。二番目に重要なのはウクライナに勝利をもたらすこと」と述べており、当事国だけでなく、周辺国も含めたバランスのとれた安全保障政策が肝要であることは言うまでもない。

第三次世界大戦はすでに始まっている?

日本のメディアではまだ広く報じられていないが、欧米メディアではいま「第三次世界大戦はすでに始まっている」という論調の記事が数多く発表されている。この指摘が本当であれば、恐ろしいことで、注視しなくてはいけない。

フォーブス誌のブライス・ホフマン氏は、シリアでのアサド政権の崩壊が、増え続ける世界的な紛争の関連性を浮き彫りにしていると記した上で、「深く考えたくない厳しい真実が明らかになっている。それは 第三次世界大戦がすでに始まっているということだ」と記した。

さらにウクライナのヴァレリー・ザルジニー 元軍事総司令官 は、ロシアの独裁的同盟国がウクライナ戦争に直接関与することは、第三次世界大戦が始まったことを意味すると指摘。またJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン経営最高責任者(CEO)も「第三次世界大戦はすでに始まっている。すでに複数の国家が戦闘に入っており、リスクは並大抵ではない」と発言した。

複数の地域戦争は一見するとバラバラのように見えるが、関連性があり、今後拡大の傾向があることから、多くの国がこの渦に巻き込まれていくという見立てだ。大国が直接、または間接的に関与することで、紛争が連鎖的に多くの国に影響を与え、かつての世界大戦の初期段階と同じような軌跡をあゆむ可能性があるのだ。

マクロン仏大統領を含む複数の欧州諸国のトップは今後数年以内にロシアとの本格的な戦争が起こる可能性があると警告しはじめていることも見逃せない。

「我々は戦いつづける!」

筆者撮影

11月19日午後2時、東京丸の内にある日本外国特派員協会の記者会見に現れた駐日ウクライナ特命全権大使のセルギー・コルスンスキー氏。ロシアとの戦いはウクライナ側が勝つまで続けると明言した。

2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻は、今日でちょうど1000日目を迎えた。一向に終わる気配がない戦争に、周囲からはそろそろ終戦への手立てを熟慮すべきとの声もあがるが、ウクライナ政府は「勝つまでは」との姿勢であるという。というのも、「敵が戦いを止めない以上はこちらも止めるわけにはいかない」との立場だからだ。

数日前、バイデン政権がウクライナに対し、米国製の長距離ミサイルの使用を許可するとの報道がでた。米国製兵器の使用が認められれば、ウクライナでの戦争はさらにエスカレートする可能性が強い。こうした状況について、コルスンスキー大使は「ドローンは時に充分ではない。長距離を飛ぶことができないからだ。だから我々はミサイルが必要になったのだ」と述べ、長距離ミサイルの使用を正当化してみせた。

会見の最後に、プーチン大統領について次のようにコメントしたのが印象的だった。

「彼は怪物であって人間ではない!」