中ロが練る台湾侵攻

以前から極東の政治問題の一つとして取り上げられてきたテーマではあるが、ここにきて現実味を帯びてきた。何のことかというと、中国とロシアが手をとりあって台湾を侵攻するという話だ。

というのも、米時間5月2日にバイデン政権のアブリル・ヘインズ国家情報長官が、連邦議会の上院軍事委員会で次のように発言したのだ。

「われわれ(米国)は中国とロシアが台湾(侵攻)について初めて行動を共にする可能性があることを認めている。台湾は中国がロシアに協力してほしい場所であり、そうしない理由はない」

国家情報長官という役職は、CIAを含めた米政府に16ある情報機関を統括する立場で、その人物が中ロが台湾侵攻で協調しているとの見方を示しただけに事態は深刻である。ただ、同長官は台湾侵攻の可能性も含め、中ロが連携するシナリオに対抗するため、米政府内で新たな計画を準備していることも明らかにした。

ただその計画が発動されるということは大規模な戦争を意味するので、ただ事ではない。同長官はさらに、ロシアと中国が「政治、経済、軍事、技術など、社会のあらゆる分野において『制限のない』協力関係を強めている」という情報分析結果を明らかにもした。

そうなると、日本にも大きな影響が及ぶはずで、いまから政府だけでなく市民レベルでも台湾有事を想定した研究や議論を活発化させておくべきだろう。

米CBSニュースが東京支局を閉鎖

私の仕事場である外国特派員協会で今朝、友人の外国人記者とある話題で話し込んだ。

今月に入り、米3大ネットワークのひとつであるCBSニュースが東京支局の閉鎖を発表。50年以上もつづいた支局で、東京支局を閉鎖するということは、ニュース業界がインターネットを含めた新たなニュース媒体の席捲によって大変革を迫られていることを意味する。

すでに多くの方は既存のニュース媒体が弱体化してきていることはお気づきかと思う。15年ほど前、3大ネットワークを含めたTV、新聞、雑誌等の凋落に歯止めがかからないという記事を書いた。視聴者は既存のテレビ局からケーブルテレビに移行し、紙媒体でもこれまでの大手新聞や雑誌からインターネットに移っていた。

そしていま、ネット時代でも生き残れると思っていた大手のCBSニュースが東京支局を閉鎖したのだ。同社のロンドン支局長であるアンドリュー・ロイ氏は「この地域で起こっていることを考えると白旗を揚げるようなものだ」と発言。無念さをにじませた。

関係者によるとアジアには他に支局はないという。北京支局はあるが特派員はおらず、プロデューサーとカメラマンがいるだけ。CBSは今後、ロンドンやロサンゼルスから東京を含めたアジア諸国を取材することになりそうだ。

岸田訪米:日米間の差

岸田首相がバイデン大統領と会談し、日本のメディアは大きな扱いをしている。テレビはもちろん、新聞各紙は一面で岸田訪米を取り上げた。日本にとって米国は最重要国であり、時代を越えて首相の訪米はビッグニュースである。

ましてや今回の岸田・バイデン会談は「未来のためのグローバル・パートナーシップ」と題された、新しい日米関係のあり方を模索するものであるだけに、日本の行く先が提示される重要な会談との位置づけだ。

4月11日の朝日新聞朝刊の一面トップは「日米『指揮統制』を連携:同盟強化 首脳会談合意へ」で、読売新聞も一面で「日米同盟新時代へ:防衛産業で連携 ウクライナ支援念頭」、日本経済新聞もやはり一面で「対中にらみ抑止力統合:日米同盟が軸、豪韓比と」といずれも大きく紙面を割いた。両国は今後、防衛産業の連携を視野にいれて定期協議をひらき、優先分野を決めていく予定なので、重視されて当然だろう。

ただ当ブログのタイトルにも記したように、今回の会談では「日米間の差」が改めて際立った。何のことかというと、両国の主要メディアでの扱いの差である。上記の日本の3紙は一面トップで大きく報道しただけでなく、その他のページでも同会談を大きく扱った。

しかし、である。米紙の扱いは驚くほど小さいのだ。ワシントン・ポスト紙は地元で会談が行われているにもかかわらず、一面トップどころか中のページですら会談についてはほとんど記していない。さすがにニューヨーク・タイムズ紙は一面の上段で記事を載せたが、ウォールストリート・ジャーナル紙も一面では扱わず、米国内の記事の一つとして出しただけだ。USAトゥデイ紙も一面では扱っておらず、「その他の記事」として載せている。

こうした日米メディアによるアンバランスな扱いは今に始まったことではない。80年代に私が米新聞のダイジェスト版をつくる仕事をしていた時から気づいていた。それは冒頭でもふれたが、日本にとって米国は最も重視すべき国なのだが、米国にとって日本はOne of themにすぎないということだ。米メディアにもそうした考え方があるため、日米首脳会談という重要な会議であっても、一面トップのニュースにならないのである。

ゾド来襲

ゾドという言葉を聴いて、すぐにピンとくる方はかなり世界情勢に詳しい方だろうと思う。

ゾド(dzud)というのはモンゴルで発生する自然災害のことで、豪雪・低温・強風が重層的に発生し、壊滅的な被害をもたらす。日本のメディアは大きく扱っていないが、今年のモンゴルは世界保健機関(WHO)によれば49年ぶりの大雪で、1月段階で国土の9割が雪で覆われ、気温は氷点下30度を下回ることもあるという。

Saving the Gobi Desert and Mongolian steppes from the dzud will also save  lives and livelihoods | United Nations Development Programme
photo from UNDP(国連開発計画)

CNNも今月22日、「モンゴルでは半世紀ぶりの異常寒波で、家畜470万頭以上が死亡」と報じた。特に遊牧民にとっては壊滅的な打撃で、経済活動だけでなく日常生活にも大きな支障がでている。氷点下30度という温度を想像して頂きたい。寒さには慣れている人たちであっても、この温度はすべてを凍らせるだけのものがあり、どれほど辛い日々を過ごしていることか。

ただ、ゾドのあとは「草木の生育が良く、生き残った家畜は肥る」という肯定的な話も聞かれる。家畜の総数が減ることで牧草資源が回復し、生き残った家畜が十分な牧草を食べられるようになるということのようだが、なんとか辛い冬を乗り越えて頂きたいものである。

資本主義はすでに死んだ?

ギリシャの元財務大臣であり経済学者のヤニス・バルファキス氏が『テクノ封建主義(Technofeudalism : What Killed Capitalism)』という新著をだして話題になっている(邦訳はまだ)。

この本の副題に示されているのは、冷戦が終結し、世界中がグローバリズムというものに席捲されている今、誰が資本主義を殺し、新しい時代には何が待ち受けているのかということである。

著者のバルファキス氏は資本主義は打倒されたのではなく、別のものになってしまったという。それを『テクノ封建主義』と名づけている。資本主義が終焉を迎えたのはマルクスが予言したような方法でなく、資本主義そのものに矛盾があったからで、資本と労働という対立が悪化して自滅していくという推論を展開している。

その中で興味深い指摘は「クラウド資本」というものが現在の市場を消滅させて、別のものへと移行していくということだ。つまり社会主義でも資本主義でもなく、新しい体制ができつつあるというのだ。まだ私も本書を手にとっていないので詳細はつかめていないが、是非手にとってみたい本である。