新型コロナ(4):あるコロナ患者のつぶやき

日本時間27日午前、米ロサンゼルス・タイムズ紙に新型コロナウイルスに感染した男性の記事がでていた。ジョーイ・キャンプという実名が出ていて、感染前後の生活の変化や素直な思いが記されていて興味深かった。

ジョーイは南部ジョージア州に住む30歳の調理人で、「ワッフルハウス」というレストラン・チェーンに勤務していた。南部を中心に2100店舗もある企業で、私も滞米中、何度も食べにいったことがある。

ジョーイは離婚を経験していて、2人の子どもがいる。記事中には子どもと一緒に生活しているという記述はなかった。ワッフルハウスの仕事で得られる時給は10ドル65セント(約1160円)。そのほかにバスの運転手もしているが、生活は楽ではない。

2月下旬、咳が出始めた。仕事を休むほどではなかったが、だるさが体にまとわりついていた。咳はより頻繁になり、「肺炎になっているかもしれない」との思いはあったが、すぐに病院にいくというオプションはなかった。というのも、建設労働者の父親のもとで育った彼の幼少時代は経済的に貧窮しており、医師に診てもらう選択は最後の最後だったからだ。

肺炎かもしれないとの思いと同時に「コロナかもしれない」との思いも当然、脳裏にあった。コロナであった場合、人に感染させてしまうかもしれないとの思いもあったが、友人の結婚式に出席することになっていたし、仕事を休むつもりもなかった。本当に立ち上がれないくらい容態が悪化するまでは、、、。

自宅のベッドで耐えに耐えたが寒さで体が震え、歯がガチガチと鳴るようになって初めて救急病棟にいった。診断は肺炎だった。同時にPCR検査も行った。数日後に陽性という結果がでた。

胸板の厚いラグビー選手のような体躯をしていてもコロナにかかるのだ。ジョーイはどのように新型コロナウイルスに感染したのか、まったくわからなかった。職場の同僚や友人を含め、周囲に無症状の感染者がいたかもしれないが、咳をしたり発熱していた人はいなかった。

ジョーイは4日間、病院の隔離病棟に入院した。その間に症状はよくなり、自宅に戻って外出せずに回復を待つオプションもあったが、州都アトランタから80キロほど離れた所にある特別検疫所に入ることにした。そこでは映画を観たりしてのんびり過ごし、人にうつすことがなくなったことが確認されてから退院が許可された。

ワッフルハウスに戻ると、同僚たちはまるでスーパースターが舞い戻ってきたかのように歓迎してくれた。「コロナ・キング」と呼ばれてからかわれもしたが、抱きしめてくれる人もいた。

彼がコロナで入院したというニュースを周辺で知らない人はいなかった。その影響もあってか、レストランの客入りはよくなかった。コロナの影響で外食そのものが減っていることもあったが、店長は長時間彼を働かせなかった。さらに悪いことに、彼の預金は底をついていた。ジョーイは普通預金はもたず、当座預金しかない。残高はマイナス3ドル33セントで、いつホームレスになってもおかしくない状況だった。

銃をもっている友人と顔を合わせた時、ショットガンと短銃が手元にあることを確認しあってさえいる。もちろん命を絶つというオプションが話題にでた。そんな時、ワッフルハウスの店長から電話が入った。「しばらく店を閉める」というのだ。ジョーイを取り巻く状況は悪い方へ悪い方へと流れていた。

ただ同時に、ジョーイはある種の楽観もたずさえていた。世界中がいまコロナウイルスの渦に巻き込まれているが、周囲を見渡すと何の変化もなかった。優しい春風が頬をなで、鳥たちがさえずり、梨の花が咲く光景は昨年の春と何らかわらない。

ウイルスが変異して、またコロナに罹患するかもしれないとの畏怖はあるが、そう簡単に人は死なないと達観するようになった。

「致死率は3.4%と聞いています。けれども生存率が96.6%という見方もできるのです」

ジョーイはいま、一時的に手の消毒液を製造する会社に雇用されている。(敬称略)

サンタクロースへの願い

今朝、ネット上でアメリカのニュースを読んでいると、ホッとさせられる記事にであった。ペンシルバニア州で郵便局員をしているメリッサ・スティンツマンさんという人が実際に体験した話だった。

from Youtube

アメリカではクリスマス前になると、多くの子どもたちがサンタクロースに手紙を書く。願い事を書いて、実際に切手を貼ってポストに投函するのだが、その宛先が「ノースポール(北極)」なのだ。もちろん北極に届くことはなく、郵便局が「ノースポール」宛の手紙を開封して、クリスマスカードを返送したりする。

スティンツマンさんは1通の手紙に感銘を受けた。それは9歳の男の子が書いたものだった。彼の願いは8項目あり、スマホがほしい、レゴがほしい、トランポリンがほしいといった小学生らしい項目が並んでいた。最後のほうに星印がついた願いがあった。

星印は「絶対にほしいもの」との注がつけられている。それは「家族の食べ物」と「家族の洋服」であった。文面を読んで、スティンツマンさんは目がしらが熱くなった。そして願いを叶えてあげようと考える。

彼女自身、郵便局員として富裕層にいるわけではなかったが、50ドル(約5400円)を男の子に送ることにした。さらに一般の人たちから寄付を募ると、500ドルほどが集まった。ただ、男の子が書いた手紙には名前こそあったが住所が記されていない。そこで郵便局の情報網を駆使して家を探しあて、集められた募金を自ら届けた。

質素な佇まいの家だった。玄関をノックすると男の子の母親がでてきた。スティンツマンさんが事情を説明してお金を渡すと、「夢のようです。現実とは思えないことが本当に起こるものなのですね」と茫然と立ち尽くしていたという。

久しぶりの善談に心が救われた。

トランプ弾劾!

トランプが予想どおり「連邦下院で弾劾された」。日本語では弾劾訴追、または弾劾決議案が可決されたと記載されるが、英語では「トランプ弾劾さる(Trump Impeached)」である。

記念すべき日であると同時に、悲しむべき日と言って差し支えない。年明けから連邦上院で弾劾裁判が始まる。

トランプにかけられた容疑

アメリカではいまトランプの弾劾ニュースがピークを迎えようとしている。

新聞記者は適語を使ってニュースを伝えようとしているが、もっとわかりやすく伝えられないかといつも思う。

たとえば弾劾訴追という言葉がある。日本では馴染みのない表現なので、肌感覚でパッと理解できる方はすくないのではないだろうか。「大統領を辞めさせるための訴え」と置き換えるだけで、霧が晴れたようになる。

日本時間11日早朝、アメリカの連邦下院司法委員会がトランプを訴えるための容疑を2つ発表した。2つだけ(権力乱用と議会妨害)である。「・・だけ」と書いたのは、2カ月前には6つの容疑が検討されていたからだ。

①贈賄罪、②公務執行上の詐欺罪、③選挙資金法違反、④強要罪、⑤脅迫罪、⑥司法妨害罪

6容疑は私がひねり出してきたものではない。米議会が検討していたもので、私は講演や記事で「トランプは6容疑で訴追される可能性がある」と述べてきた。だが「権力乱用」と「議会妨害」の2容疑だけになってしまった。

「権力乱用」はトランプがウクライナに対し、軍事支援を停止すると脅したり同国大統領のゼレンスキーとの会談を見送った行為にあたる。6容疑の中では④の強要罪と⑤の脅迫罪だろう。

「議会妨害」は⑥の司法妨害罪にあたり、弾劾調査の過程でトランプが政権内の人間に協力しないように指示した問題である。トランプは両容疑で訴追され、今月20日までに下院本会議で起訴されるはずだ(決議案の可決)。

ここまでは予想どおりの流れだが、私にはどうも腑に落ちないことがある。というのも、下院司法委員会に呼び出されたアメリカの憲法学者の間でも、トランプ弾劾については意見が割れているからだ。

ハーバード大やスタンフォード大の法学者はトランプが弾劾されなければ法律の意味がなくなる、と述べるほど弾劾を支持したが、一方でジョージ・ワシントン大学教授のターレイなどは反トランプの立場でありながら、弾劾を進めるだけの証拠に乏しいと述べている。

これはどういうことなのだろうか。人間が不完全である以上、法律にも完全というものはなく、トランプの行動を違法と捉える者と違法ではないと捉える憲法学者がいて、議論を尽くしたところで「絶対的」な結論には辿りつかないことが見えたという思いである。

あらゆる角度から状況判断をし、冷徹に分析を試みて、有罪か無罪かの二者択一を決めるという作業は、特にトランプの場合、政治という色によって決定されることが明らかで、そこに私は落胆と諦めを感じざるを得ないのだ。(敬称略)

トランプの盲目的な支持者たち

いまアメリカではトランプを弾劾訴追して、大統領を辞めさせる動きが加速している。だがそうはなりそうにない。

このブログでも、私が書いた他の原稿でも、そして放送メディアや講演でも、「トランプは下院で弾劾訴追されるが上院の弾劾裁判では無罪になる」と言い続けている。実際にそうなる確率は8割以上だろうと思う。

というのも上下両院の共和党議員が例外なく、盲目的に、狂信的にトランプを信奉し続けているからだ。そこには虚仮の一念(こけのいちねん)という思いが見え隠れする。この言葉は「愚かものが信念を通す」という意味で、議員だけでなく、共和党の人間は真実に目を瞑り、政党政治の呪縛に埋没しているかのようだ。

議員の多くは弁護士資格をもつプロの法律家だが、問題の核心を直視していない。共和党の議員たちは過去1カ月、トランプ擁護の発言に終始してさえいる。

テキサス州の下院議員マイケル・マコールは「トランプとゼレンスキー(ウクライナ大統領)との交換条件なんてものはない」と断言。またオハイオ州下院議員のジム・ジョーダンも「2人の間には何の条件もなかったし、圧力もなかった」とトランプを疑らない。

さらにルイジアナ州上院議員のジョン・ニーリー・ケネディは「私の判断では交換条件というのは他人を惑わすための情報にすぎない」とまで言った。もう一人のオハイオ州下院議員、ブラッド・ウェンストラップは「大統領が他国のリーダーに政治的依頼をすることは適切なことだと思う」と語る始末である。

自分の政党の大将を無条件で守ることは、自分の政治生命を守ることにもつながる。共和党有権者から圧倒的に支持されているトランプを批判していては、次の選挙で自分が落選する可能性があるのだ。

だが、ウクライナ代理大使のビル・テイラーもEU大使のゴードン・ソンドランドもはっきりと交換条件があったと証言している。彼らの言葉にこそ、真実が宿っているように思える。というのも、2人は勇気をだして自分を任命してくれたトランプに逆らう形で証言をしたからだ。

こうなると、法律などというものは自身が信じるものを正当化させるための道具にすぎなくなってしまう。少なくとも、共和党議員はトランプを擁護することに専心するあまり、客観的に真偽を判断する力を失っている。

当件で、私はアメリカの議員に本当に失望した。メディアが吠えても、何も変わらないことも落胆の度合いを深めている。(敬称略)