大統領選挙の取材でワシントンに短期間もどっていた。
時差のせいで、朝5時ごろに目がさめる。ボーッとしていてもいけないので体を動かすことにした。今回泊まったホテルは日本にも進出している「ゴールドジム」と契約していて、宿泊客は無制限で使用できる計らいがされていた。
営業時間を調べると、平日は午前5時からオープンだという。別に「ゴールドジム」の宣伝をするわけではないが、朝5時からという時間に「やってくれるものである」と感心してしまった。ちなみに、東京の表参道店を調べると午前7時からだった。
ただ、その時間帯に行ってどれほどの人がエクササイズしているか疑問だった。私は自分が汗を流すことよりも、ウィークデーのまだ夜も明けていない時間からジムにくるアメリカ人に興味をもち、出かけてみた。
午前5時40分。広大なジムに入ってすぐに口が半開きになった。60人ほどの老若男女が蠢(うごめ)いていた。勤めに行く前に汗を流す人が多いことは知っていたが、これだけの人数が集まっているとは考えなかった。
20歳前後の女性から頭部が薄くなった60代と思われる男性まで本当に老若男女で、トレッドミル(ランニングマシーン)やサイクル式マシーン、ウェイトトレーニングなどでみな黙々と汗をながしている。誰も話をせず、一人で悦にいっているような印象である。
アメリカの肥満度は近年ますます上昇しているが、その日、日の出前から汗をながしていた彼らのほとんどは引き締まった体をしており、取り付かれたように自身の体を磨きこんでいた。肥満の人たちが増え続ける一方で、確実に「エクササイズ・エリート」が増加しているのもアメリカの今の姿である。
収入の社会格差が拡大しているのと同じで、体型格差も拡大しているのだ。日本では「ビリーズ・ブートキャンプ」が話題になり、再びアメリカ型のエクササイズが話題だが、日本はまだアメリカほどの体型格差はない。
私はその日、常連の「エクササイズ・エリート」たちに圧倒されながら、少しばかり手に汗をかいたところでホテルに戻った。