悲観論が先行する米国経済

私は一応ジャーナリストという肩書きで仕事をしているので、毎日広い分野のニュースをチェックしている。特に米国に長く滞在していたので、米国関連のニュースには敏感に反応してしまう。

米国からのニュースで、「インフレとガソリン価格の高騰が労働者を限界まで追い詰めている」という見出しが目にとまった。記事の中にでてきたのは57歳の看護師の女性。数カ月前まで看護師として働いていたが、背中の手術を受けたあとは仕事をしばらく休んでいたため預金が底をついてしまったという。原油供給の逼迫、インフレ波及リスクの増大、ガソリン価格の急騰など、消費者心理に重くのしかかる諸事が重なり、経済的な窮地に立たされている。

米国民はいま、ベトナム戦争、1970年代の石油危機、9.11同時多発テロ、世界金融危機、新型コロナウイルス後のインフレ時よりも経済に対する不安感を募らせているという。前出の看護師の女性は「今はただ、何とか持ちこたられればいい」と心境を語ったが、多くの国民は同じような経済状況にあるようだ。

5月の消費者信頼感指数は過去最低の44.8まで落ち込んだ。すでに米国では5年以上もインフレが続いているので、多くの国民は「限界に近づきつつある」との思いを抱いているという。米商務省が28日に発表した4月の個人貯蓄率も2.6%という約4年ぶりの低さで、これ以上状況が悪くならないことを祈りたい。

増える億万長者

昨日(13日)付けのワシントン・ポスト紙に「米国では億万長者が増えているが、彼らは裕福だと感じていない」という記事が載った。

連邦準備制度理事会(FRB)のデータによると、約6世帯に1軒は純資産が100万ドル(約1億5900万円)を超えており、その数は増えてきている。ただ、新たに100万ドル以上の資産を手にした人たちの多くは自分達が裕福であると感じておらず、「自分たちは紛れもなく中流である」という意識でいるという。

中西部カンザス州やミネソタ州、ジョージア州を含む200以上の都市で、平均的な住宅価格はすでに100万ドルを超えており、数字の上ではミリオンではあるが、以前のような億万長者ではなくなってきている。労働統計局(BLS)のデータによると100万ドルの価値は目減りしていて、現在の100万ドルは30年前の48万ドルと同じとの試算がある。

高所得者は住宅価格の上昇や株価の高騰、そして所得の増加で資産を増やしている一方、低所得者や中間所得者の人たちは物価上昇に苦しむだけでなく、光熱費や住宅・自動車ローンの支払いなどで滞納するケースも増えている。ワシントン・ポスト紙が最近億万長者になった10人にインタビューをすると、「自分が裕福である」と感じている人は一人もいなかった。

例えば、ケンタッキー州に住む土木技師のメッシンジャーさん(68)は42歳の時、退職金口座の残高はゼロだったが、そこからコツコツと積み立て、近年の株式市場の活況もあり、過去5年で貯蓄を倍増させて億万長者の仲間入りを果たした。

日本ではいったい何割の人が億万長者というカテゴリーに入るのだろうか。

新ニューヨーク市長

こういう人物を待ち望んでいた――。

これまで社会のマイノリティーという立場にいた人物がトップに立つ姿は清々しいばかりか達成感が広がるので、4日のニューヨーク市長選に勝利したゾーラン・マムダニ氏(以下マムダニ)には拍手を送りたい。

Thank you, New York City. Last night we made history. Now we get to work.,  Comment MayorElect to learn about the transition. Comment DonateNow to make  a contribution.
from Instagram

アフリカのウガンダで1991年に生まれたマムダニはイスラム教徒で、自らを「 民主社会主義者 ( Democratic Socialist )」と呼んでおり、これまで軽視されてきた市民に光をあてていくと述べる。 「ニューヨークは移民が築き、移民が支え、これからは移民が先導する都市になる」という言葉からも、社会を下から支えて いく前向きな政治姿勢は好感がもてる。

さらに当選を果たしたあと、「希望は生きている(Hope is alive)」と肯定的な発言を繰り返しのべて、市民に勇気を与えた。まだ34歳なので、市長として本当にどれだけの政治力を発揮して政策を形にしていけるかは未知数の部分が大きいが、少なくとも本人の言動からは期待がもてる。

私はマムダニが当選を果たした直後、「かれの最終目標は米大統領に違いない」と思ったが、すぐにウガンダ生まれであることがわかったので、そのオプションは消えた。というのも、米大統領になるためには3つの要件が憲法で定められているからだ。

(1)米国生まれの米国民、(2)35歳以上であること、(3)米国に14年以上居住 。マムダニはウガンダ生まれなので最初の要件に当てはまらず、大統領になるというオプションはない。けれども、ニューヨーク市長として画期的な政策を打ち出して名を残すことはできる。期待したい。

際限のない銃乱射事件

「またしても・・・」という言葉は使いたくないのだが、米国では過去2日間、5カ所で銃撃事件が起きた。死傷者数は計39人にのぼり、あらためて米国の銃社会の現実を突きつけられた思いがする。

当サイトでは、過去何度も銃乱射事件を取り上げてきたが、事件が起こるたびに心のどこかで「いつかは無くなってほしい」と願ってきた。だが、こうした事件を目の当たりにするたびに、「無理かもしれない」との思いが頭をもたげてくる。

これまで銃を取り締まるためにブレイディ法をはじめとするいくつもの法律が米国では成立してきた。だが、数えきれないほどの銃砲が米社会に出回っているかぎり、事件がなくなるとは思えない。その数は私がジャーナリストを始めた時(1990年)よりもさらに増えており、現在は約3億9500万丁(コンスーマー・シールド)で人口よりも多い。

全米ライフル協会の強力なロビイング活動により、銃規制の強化にブレーキがかけられているだけでなく、市民に根付いた銃を所有する法的な権利、さらには伝統的に銃による護身の必要性が支持されている。銃が家のなかにあるということが多くの米国人の安心と心の支えになっていることは確かで、この銃文化は銃乱射事件が増えてもたぶん色褪せないのだろうと思う。

米国でもっとも稼ぐCEO

240億円!

米国でもっとも稼ぐ企業人の年収である。正確には1億6500万ドル(約239億5832万円)で、アクソン・エンタープライズという電気兵器類やソフトウェア・センサーシステムを開発・製造・販売する企業の共同創業者兼CEO 、リック・スミス氏の1年分の稼ぎである。

昨年度、 S&P500上場企業 の中で1億ドル以上の年俸を受け取ったのはスミス氏一人だけだった。

これだけの金額を受け取れたのは、株式補償プログラムという特別のシステムがあったせいもある。役員が今後7年間、給与の一部や全てを株式に転換できる選択権が付与されており、成果を出せば報酬が数倍増えると言われている。さらに同社の株価が過去1年で170%も急騰したことも大きい。

米国のCEOの報酬額が増えているのは最近のトレンドで、この傾向は企業の業績や役割の複雑さ、競争の激しい業界における優秀な人材の需要の高さなど、いくつかの要因が合わさった結果である。アクソン・エンタープライズの場合、スミス氏のリーダーシップのもとで、製品の成功と会社の戦略的方向性が、この報酬増のベースになっている。