昨今、日本のアカデミズムで問題視されているのが、日本では社会を変えるような技術革新がなかなか起きないということである。世界の著名な大学と比較すると、研究論文の本数や内容で遅れをとっている。国家の経済力は世界有数であっても、研究分野では世界のトップを歩いていないというのだ。
英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」による世界大学ランキング(2024年版)を眺めると、1位はオックスフォード大学(英)で2位はスタンフォード大学(米)、以下3位マサチューセッツ工科大学(米)、4位ハーバード大学(米)、5位ケンブリッジ大学とつづき、日本の大学は10以内にも入ってこない。東京大学がようやく29位で登場し、京都大学は55位、東京工業大学は191位というありさまだ。
世界の大学から遅れをとっている最大の理由が財務基盤の脆弱さである。たとえばマサチューセッツ工科大学の予算は東京工業大学のほぼ10倍の約5000億円である。学生数はほとんど変わらないのに、財政面で圧倒的な差がついている。当たり前のことだが、研究にはカネがかかるのであって、まず財力を準備できなければ世界をリードするだけの研究は叶わないということだ。
こうしたこともあり、東京工業大学と東京医科歯科大学が今月1日に統合し、「東京科学大学」を創設した。財力もさることながら、世界に負けない最先端の研究をするにはセレンディピティー(serendipity)が必要であるといわれる。セレンディピティーというのは予想外の発見を獲得する力で、既存の組織ではなかなか生み出せないものなので、新しい環境で財力を活かし、世界をアッといわせるような発見をしてほしいと思う。