目を見張りました!

何に目を見張ったかと言えば、ある男性にである。

先日、ランチを食べに自宅近くの中華料理店に入った。いわゆる「町中華」である。私のテーブルの斜め前に、白髪を綺麗に整えた70代半ばと思える男性が文庫本を読みながら座っていた。

すでに大ジョッキの生ビールを注文していて、一人で飲んでいる。ランチに一杯やることは悪くないが、大ジョッキを昼間からグイグイやっていたので、少しだけ「飲むなあ」という思いがあった。すぐに男性のところに水餃子が運ばれてきた。ウェイトレスが言った。

「ハイ、水餃子2人前」

私は「この人は水餃子とビールをランチにしているのかもしれない」と勝手に思った。大ジョッキが空になる頃になって、ウィイトレスが今度は焼酎のボトルと氷を運んできた。私はまた「昼間から飲むなあ」と心の中で呟いた。

斜め前の席だったので、視界にすべてが入る。男性は水割りではなくオンザロックで焼酎をグイグイやり始めた。顔色ひとつ変えずに飲んでいる。アルコールに強いことは歴然としているが、私が目を見張ったのは、餃子が食べ終わった頃に大皿の八宝菜とドンブリご飯、そして味噌汁と杏仁豆腐が運ばれてきたことだ。

その間も男性は文庫本も読みながら、ひたすら飲み、食べ続けていた。しかもどうみても私よりは高齢であるし、まったく太っていないのだ。やってくれるものである。しかも飲みっぷりだけでなく、食べっぷりもいいので、久しぶりに人の食べる姿を見て感動を覚えたほとである。

帰り道、あの人に『飲みすぎはよくない』といった陳腐な忠告は必要ないと思った。すべてを理解していて、このままでいいという達観があるように思えたからである。参りました!