政治家が本当にやるべきこと

今年1月28日の当ブログで、文藝評論家の小林秀雄と作家横光利一の対談について触れた (日本の政治が停滞しつづける理由)。今日、小林が違う対談でノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹と語り合っているものを読んだ。

学生時代から小林のファンだった私はいまでも彼の書いたものをたまに読み返す。湯川は1981年に他界しているので、40年以上前に行われた対談だが、2人が語る内容には時代を超えた普遍性があり、いまだに納得させられることが多い。

小林は政治のイデオロギーの矛盾についてこう話している。

「なぜ現代の政治家がイデオロギーなどという陳腐な曖昧なものの力を過信するのか」と問いかける。そしてこう述べる。「民主主義だとか共産主義だとかという曖昧模糊としたイデオロギーをどうしてめいめいが掲げて争うのか、どうも僕にはよくわかりません。(中略)平和を保つ技術、政治技術の問題が重要であるとどうして政治家は考えないのか」

考えてみれば、しごく当然のことのように思える。小林は政治家が本来やるべきことは戦争を起こさない技術を身につけることであると説く。そして次のように断言する。

「政治は人間精神の深い問題に干渉できる性質の仕事ではない。精神の浅い部分、言葉を代えれば人間の物質的生活の調整だけをもっぱら目的とすればよい。そうはっきり意識した政治技術専門家が現れることが一番必要なのではないでしょうか」

真理を看破する力がここにある。

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