「この人は本当に真っ当な人物なのだろう」
今週16日に行われたバイデン大統領と市民との対話集会を、ユーチューブで観たあとの率直な感想である。大統領に向かって「真っ当な人物」と述べることは失礼かもしれないが、距離を置いてみてもそうした思いがあった。
CNNが主催した対話集会は、いまのバイデン氏のありのままをさらすのに十分な効果と価値があった。同氏は約75分の集会で、まったくペーパーに頼らず、数十人の市民から投げかけられる質問に壇上で実直に答えていた。
もちろん質問内容は事前にホワイトハウス側に伝えらえていただろうし、その答えも用意されていたはずである。だが78歳の大統領はほとんど淀みなく、何も見ずに受け答えをした。むしろ想定問答集を覚えてその通りに話すことの方が難しかったかもしれない。いまの自分の思いをその場で表現する方が、テレビの視聴者の胸に刺さることをよく理解していたと思われる。
内容はコロナのことから教育、最低時給賃金、トランプ前政権、移民の問題まで多岐におよんだ。政権誕生からまだ1カ月だが、すでに大統領を数年やってきたかのような沈着で泰然とした受け答えで、誠実さがにじみ出ていた。
「私はホワイトハウスで寝起きしたいから大統領になったのではありません。この国の将来のためになる決断をするためになったのです。大統領として皆さんに仕えられることは本当に名誉なことです」
少なくともバイデン氏は心をこめてそう述べていた。1973年から連邦上院議員を務めてきた政治家である。いま自分が何をすべきかを熟知しているはずである。そしていま国家が必要としているものは前向きな姿勢であることを示した。それは次の言葉に表れていた。
「いま国は分断されているといいます。でも明確に分断されているわけではない。外にでて、いろいろな人と話をしてみてください。両極にいる人たちでさえ、話し合いができる余地を残しています。はっきりと分断されているわけではないので、私はまとめることができると思っています」
久しぶりに期待のできるリーダーが登場したと言っていいかもしれない。