自動車産業の聖地、デトロイトがITとEVで大変身

「デトロイト」という都市名を聞いて、何を思われるだろうか。

米中西部ミシガン州最大の都市で、メジャーリーグ、デトロイト・タイガースの本拠地であり、「モーターシティ」と呼ばれる自動車産業のメッカでもある。米自動車メーカーが同地で興隆を極めたのは数十年も前のことで、実は人口が185万のピークに達したのは1950年代であり、2020年には64万にまで減少している。

日本車に押されて自動車産業の雇用が奪われ、「デトロイトは不可逆的な都市崩壊の状態にある」という形容さえ使われるようになった。

さらに犯罪率も高く、2022年の「世界人口調査(ワールド・ポピュレーション・レビュー)」によると、デトロイトは全米で2番目に危険な都市にランクされている。何しろ中・大都市で唯一、人口10万人あたりの暴行罪の発生件数が2000件を超えているのだ(続きは・・・自動車産業の聖地、デトロイトがITとEVで大変身)。

資本主義の次に来る世界

資本主義の次に来る世界

いま注目している新刊本である。『資本主義の次に来る世界』というすぐにでも読みたくなるタイトルがついている。実はまだ購入していないのだが、買う前に当ブログを読まれている方にもお知らせしておこうと思い、ご紹介した次第。

この書籍のオリジナルは2020年8月に英語で出版されていて、日本語版は先月、東洋経済新報社からだされたばかり。著者のジェイソン・ヒッケル氏は エスワティニ(旧スワジランド)出身 の経済人類学者で、英王立芸術家協会のフェローでもある。

英語版でよく売れている書籍ということで、日本語版をだしたのだろうが、オリジナルのタイトルは『Less is More:脱成長で世界は救われるのか』。「資本主義の次に来る世界」というフレーズは英語版にはない。出版社が「いかにも売れそうな」タイトルをつけたのだろうと思う。いずれにしても、手にとる価値はありそうだ。

日本経済の元凶:供給過剰

今日(6月3日)の日本経済新聞のオピニオン欄に、在英経営者のデービッド・アトキンソン氏のコラムが載っていた。同氏はいま小西美術工藝社の社長だが、菅内閣時代はブレーンの一人として首相に助言していた経済通の人物だ。

日経のコラムではまず、日本の生産年齢人口(15から64歳)が減り続けているために経済成長率が下がらざるを得ないことを指摘。ピークの1995年から2020年までに1271万人も人口が減っているので、日本経済に力がないのは当然であるとの論理を展開する。しかも生産年齢人口が減って困るのは労働力が減るからではなく、消費が活発な層の人口が減ることで経済力が落ちることにあるという。

モノを買う人口が減れば自然に供給過剰の状況に陥ることになる。

日本経済が最近成長しないのは需要が不足しているからだとの言い分もあるが、お金がないからモノを買わないのではなく、社会全体から見ると人口が減ったから需要が伸びていないのだ。

アトキンソン氏の処方箋は「イノベーションに尽きる」と断言する。新しい商品を開発し、新しい需要を掘り起こす。それを積極財政で支えるていくべきだと記す。それができないので「新しい資本主義」といった絵空事が議論されると説く。

このままでは「日本国民は窮乏し、希望が見えないままになる」と警告する。

稼ぐことにもっと貪欲に

このところ日本人の平均賃金が諸外国と比較して、低水準なままで増えていないことが指摘されている。経済協力開発機構(OECD)の調査(2020年)によると、日本の平均賃金(年収)は424万円(1ドル110円)で、35カ国中22位となっている。

1位は米国で763万円。1990年の数字と比較すると、米国は247万円も増えているのに対して日本は18万円増でしかない。その間に日本は韓国に抜かれている。朝日新聞はこの件で、「日本経済の現在値」という特集を組んですらいる。

日本で賃金が上がらない理由はいくつかある。ひとつは企業が人件費の安い非正規の雇用を増やしてきたことだ。90年代のバブル崩壊時、雇用者の約2割が非正規だったがいまでは4割近い。さらにバブル時、多くの企業が大量解雇や大幅な賃下げをおこなって批判された。その時の否定的な過去があるため、次の不況に備えて日本企業は業績がいい時期であっても賃金を低く抑えるようになったというのだ。

さらに労働組合は雇用維持を優先するあまり、賃上げを強く要求しなくなった。そして日本人は雇用者に対して、他国と比べると賃上げを要求しないという。また日本企業は「稼ぐ力」を向上させる企業戦略に失敗しているとの見方もある。

コロナが収束しつつあるなかで、日本は国全体としてかつてのように稼ぐことにもう少し貪欲になっていい。

9月の見通し

9月に入り、世界経済の見通しはいまだに不透明なままだ。株価は乱高下しており、リセッション(不況)に突入する前段階にさしかかったかに見える。

9月2日はアメリカではレーバーデー(労働者の日)という祝日で市場は休みだったが、休み明け3日のニューヨークダウは反落して前週比285ドル安だった(下落率1.01%)。半月前の8月14日には800ドル安(3.05%安)、23日にも623ドル安(2.37%安)という急落があり、3番目の下落ということになる。

その間、株価が持ち直す日もあったが、株価は下り坂を少しずつ、ゆっくりと降りているように見える。経済学者や金融関係者がよく引き合いに出すISM(製造業景況感指数=Institute for Supply Management)が3年ぶりに50を割り込んだというニュースもある。

ISMは製造業企業の担当者に新規受注や雇用、雇用など多岐にわたる項目を調査した結果で、50を下回ると景気が悪いと感じる人が多いということで、もう右肩上がりの時期は過ぎたという印象がある。最大の要因は米中貿易戦争で、トランプと習近平の突っ張り合いの着地点が見えないことにある。

実は1929年の大恐慌が起きたときもレーバーデー明けから始まった。2008年のリーマンショックもレーバーデーの後で、9月15日にリーマン・ブラザーズが破産申請をだした。日経平均も9月12日に大暴落して26年ぶりの安値をつけている。

夏休み明けの9月は希望を抱く人がいる一方で、暗い気持ちになっている人がいるのも事実で、「世界経済の気持ち」を訊くことができたとするならば、きっと「上は向けないなあ」というのが本音だろうと思う。(敬称略)