稼ぐことにもっと貪欲に

このところ日本人の平均賃金が諸外国と比較して、低水準なままで増えていないことが指摘されている。経済協力開発機構(OECD)の調査(2020年)によると、日本の平均賃金(年収)は424万円(1ドル110円)で、35カ国中22位となっている。

1位は米国で763万円。1990年の数字と比較すると、米国は247万円も増えているのに対して日本は18万円増でしかない。その間に日本は韓国に抜かれている。朝日新聞はこの件で、「日本経済の現在値」という特集を組んですらいる。

日本で賃金が上がらない理由はいくつかある。ひとつは企業が人件費の安い非正規の雇用を増やしてきたことだ。90年代のバブル崩壊時、雇用者の約2割が非正規だったがいまでは4割近い。さらにバブル時、多くの企業が大量解雇や大幅な賃下げをおこなって批判された。その時の否定的な過去があるため、次の不況に備えて日本企業は業績がいい時期であっても賃金を低く抑えるようになったというのだ。

さらに労働組合は雇用維持を優先するあまり、賃上げを強く要求しなくなった。そして日本人は雇用者に対して、他国と比べると賃上げを要求しないという。また日本企業は「稼ぐ力」を向上させる企業戦略に失敗しているとの見方もある。

コロナが収束しつつあるなかで、日本は国全体としてかつてのように稼ぐことにもう少し貪欲になっていい。

9月の見通し

9月に入り、世界経済の見通しはいまだに不透明なままだ。株価は乱高下しており、リセッション(不況)に突入する前段階にさしかかったかに見える。

9月2日はアメリカではレーバーデー(労働者の日)という祝日で市場は休みだったが、休み明け3日のニューヨークダウは反落して前週比285ドル安だった(下落率1.01%)。半月前の8月14日には800ドル安(3.05%安)、23日にも623ドル安(2.37%安)という急落があり、3番目の下落ということになる。

その間、株価が持ち直す日もあったが、株価は下り坂を少しずつ、ゆっくりと降りているように見える。経済学者や金融関係者がよく引き合いに出すISM(製造業景況感指数=Institute for Supply Management)が3年ぶりに50を割り込んだというニュースもある。

ISMは製造業企業の担当者に新規受注や雇用、雇用など多岐にわたる項目を調査した結果で、50を下回ると景気が悪いと感じる人が多いということで、もう右肩上がりの時期は過ぎたという印象がある。最大の要因は米中貿易戦争で、トランプと習近平の突っ張り合いの着地点が見えないことにある。

実は1929年の大恐慌が起きたときもレーバーデー明けから始まった。2008年のリーマンショックもレーバーデーの後で、9月15日にリーマン・ブラザーズが破産申請をだした。日経平均も9月12日に大暴落して26年ぶりの安値をつけている。

夏休み明けの9月は希望を抱く人がいる一方で、暗い気持ちになっている人がいるのも事実で、「世界経済の気持ち」を訊くことができたとするならば、きっと「上は向けないなあ」というのが本音だろうと思う。(敬称略)

トランプ社会主義国?

いよいよ米中は本格的な貿易戦争に足を踏み入れてしまった。

トランプはフランスで開催されるG7に出席するため、米時間23日夜にワシントンを発ったが、その前にツイッターで強烈なパンチを習近平におみまいしている。

ここまで習とは制裁関税の打ち合いをしてきたが、習はトランプの脅しにまったく怯まない。怯まないどころか、強気の姿勢をさらに強めている。トランプも同じである。

23日、トランプは中国でビジネスをする米企業に対し、「中国の代替先をすぐに探すように命じる。米国にビジネスを戻して米国内で製造することも考えるべき」と書いた。さらに中国に商品をとどけているフェデックスやUPS、アマゾンに宅配を中止するようにも呼びかけた。

常識ではほとんど考えられないほど横暴な言い分である。もちろん、いくらトランプであっても民間企業のビジネス慣行に口出しすることはできないし、あってはならない行為である。従う必要はない。

しかしトランプが真剣に「政府の命令」と捉えるならば、アメリカは「トランプ社会主義国」になりつつあるということに等しい。トランプの負けず嫌いの性格は、習にも見てとれるので、短期的に両者のどちらかが歩み寄るとは思えない。

トランプ不況はいよいよ現実になりそうな気配である。(敬称略)

ベイスターズを黒字化した男

ikejun1

若干35歳で横浜DeNAベイスターズの社長になってから5年目のシーズンを過ごす池田純社長(40:写真)。就任時(2011年)には24億円の赤字だった同球団を5年で黒字に転換させた。

観客動員数も110万人から190万超に拡大。スポーツ界を越えて財界からも経営手腕が注目されている(ベイスターズを黒字化した男)。

 

(当ブログの8月5日(ベイスターズとイケジュン)に登場したイケジュンです。日経ビジネス・オンラインでインタビュー記事を載せました。)

国家のウソ

ほとんどの人は長い人生の中で、ウソをつく。それが人間の性(さが)と言っていいかもしれない。

国家もまた同じである。民主主義国家であっても、すべてを国民にさらしたりしない。言い方を変えたり、数字をいじったり、あるいは故意に事実と反することを発表したりする。つまりはウソである。

ただ中国は極端である。経済成長率(GDP)の数値が好例だ。経済学者だけでなく、多くの人が「おかしい」と述べている。

過去1年間の数値を記してみたい。

2014年7~9月GDP(前年比)   +7.3%
2014年4~6月GDP(前年比)   +7.5%
2014年1~3月GDP(前年比)    +7.4%
2013年10~12月GDP(前年比)+7.7%

見事に7%台で推移している。経済成長がこれほど安定して持続することはあり得ない。ちなみに日本は以下の通りである。

2014年7~9月GDP(前年比年率)     -1.6%
2014年4~6月GDP(前年比年率)     -6.8%
2014年1~3月GDP(前年比年率)     +5.9%
2013年10~12月GDP(前年比 年率)+1.0%

数値はジグザグに推移している。マクロの経済活動を考慮すると、極めて真っ当な変化であると思われる。アメリカやイギリスも過去1年、プラスとマイナスが入り乱れている。中国経済のように数値が7%で安定するなどということはほとんど考えられない。

いくら好況が続いているとはいえ、「こうあってほしい」という希望的数値であってはいけないことは誰の眼にもあきらかだ。もちろん日本を含めた先進国がまったく間違いのない数字を公表しているかにも疑問を投げなくてはいけないが、少なくとも中国政府のようなウソではない。

共産党が瓦解する日はくるのだろうか。