高市首相誕生:世界との比較

高市早苗—。

「女性で最初の首相」ということが強調されているが、それは日本だからであって、世界を見渡すと女性のリーダーは少なくない。

昨日(21日)午後、日本外国特派員協会のワークルームで仕事をしていると、横に座ったドイツ人記者が高市の話を投げてきた。

「女性が首相になるまでに随分時間がかかったけれども、アメリカはまだ女性大統領を選出できてないわけだから、日本が一歩先を行った感がある」

私はそれを受けて、「ドイツのメルケルさんが首相になったのは随分前だったよね」と返すと、彼はすぐに「2005年から16年もやったよ。なんかもう遠い昔という感じがする」と言った。そして、こう続けた。

「『女性首相誕生』ということがニュースにならなくなる日が早くくるといい」

ちなみにインドのインディラ・ガンディーが首相になったのは1966年である。イギリスのマーガレット・サッチャーが首相に就任したのは1979年。フランスのエディット・クレッソン首相は1991年、パキスタンのベーナズィール・ブットー首相は1993年、ウクライナのユーリヤ・ティモシェンコ首相は2007年、といった具合で、大勢いるのである。

日本もいまは「日本初」という言葉がついているが、普通に「今度の首相は女性です」くらいのレベルになるといいのではないか。いずれにしても、重責に押しつぶされずに職務を全うしてほしいと思う。(敬称略)

世界は自民党総裁選をどう見ているか

自民党の総裁選が10月4日に行われるが、日本では連日大きなニュースになっているなか、世界では総裁選をいったいどう見ているのだろうか。

世界のメディアを眺めると、自民党総裁選を扱った報道は意外にも少なく、関心は低い。まだ投票日まで1週間ほどあるので、これから増えてくると思われるが、他国の国内選挙なので、米国大統領選などと比較すると興味の度合いは低くなる。

高市早苗氏(以下敬称略)が選ばれれば女性として最初の首相になることから、一部メディアでは高市にフォーカスさせた記事もある。米外交誌「ザ・ディプロマット(The Diplomat)」は「鉄の女と称される高市早苗は日本で最初の女性首相になるのだろうか」というタイトルの長文記事を掲載。

「彼女が経験豊富な保守派政治家であり、保守派の象徴である故・安倍晋三元首相の直系の後継者であるという事実は大きい」と記したあと、「10年以内に日本経済の規模を倍増させる基本計画を約束した。重要なのは成長だ。日本を再び活力ある日の出ずる国にする」と紹介した。

ただ、実際の選挙では小泉進次郎が優勢であるとし、「党内の保守派を味方につけることで、早い段階で勝利を収めたようだ」と小泉が次期首相になる可能性が高いことを示唆。予測市場を紹介する米メディア「ポリマーケット(Polymarket)」は小泉が71%でトップを走り、高市は26%、林芳正はわずか3%であるので、小泉が勝つだろうと予測。

米ブルームバーグは「小泉は昨年の党首選で、構造改革の加速、スタートアップやライドシェアリングなどの新産業の促進を公約に掲げたが、激しい批判を浴びた」としたあと、「この出来事は政治的未熟さを露呈したとする見方がある一方、自民党が切実に必要とする大胆なリーダーシップの表れだと評価する声もある」として、小泉が次期首相になる可能性を示唆。その通りになれば、104代目の首相になる。

石破退陣

7日夜、石破首相は記者会見を開いて首相を辞任すると表明。昨年10月から首相の座にすわっていたので、ほぼ1年間の総理大臣職だったわけだが、もっと早い段階で辞任すると思っていたので、「意外に長く続いたな」というのが私の正直な感想である。

忌憚なく記せば、総理になった時点から「この冴えない人が日本国の代表であってはいけない」と思っていたので、辞任のニュースは個人的には喜ばしいことである。こう考えているのは私一人だけではないはずである。政治家の外見に文句をつけることは御法度かもしれないが、つねにしかめっ面で、心の底からの笑顔というものを見た記憶がない。それは心が晴れやかでないことを裏付けてもいるかと思う。

ニューヨーク・タイムズ紙は辞任直後の記事で、「自民党は支持基盤の高齢化が進み、若年層や都市部の有権者の意見から乖離してきている」と記したあと、「7月の選挙(参院選)のあと、国の政治を変容させる世代間の亀裂が深刻化した」と核心をつく指摘をした。

さらに英フィナンシャル・タイムズ紙は「自民党は1955年以来、途切れることなく日本を統治してきたが、急激なインフレ、人口減少、悪化する地政学環境といった局面をどう乗り切るかをめぐり、穏健派と保守派が対立することで次第に党内の亀裂が深まっていった」と自民党の弱体化の原因を分析している。

今後日本はどういう方向に進むべきなのか。石破退陣後、 高市早苗前経済安全保障担当相や小泉進次郎農相、林芳正官房長官、小林鷹之元経済安保相、茂木敏充前幹事長 などの名前が挙がっているが、強く推挙したい候補はいない。首相の公選制を求めている私としては「この人物であれば日本を任せられる」という人の登場を待っているが、そう簡単には現れないのである。

比較第一党という詭弁

なんとも見苦しい会見だった。

参議院選挙で自民党が負けることは事前に予想されていたが、与党過半数という目標も達成できなかった。石破首相は「比較第一党」という言葉をつかって自民党が権力を握り続けるべきであるとして21日、続投を表明した。

良識ある政治家であれば、ここは辞任するところだが、石破氏はトップにしがみついたまま首相という座から降りない。「政治空白をつくってはいけない」という理由を述べたが、次の首相はすぐに見つかるはずである。一度手にいれた政界の頂点への執着が強すぎて、逆に国民はしらけてしまう。個人的には石破氏ほど人間的な魅力に欠けた首相は近年いないとの印象で、このあたりで退場頂きたいと思っている。

報道によると、参院選投票日前夜、都内のホテルに村上総務大臣、岩谷外務大臣、中谷防衛大臣、青木官房副長官が集まり、与党過半数割れという事態になっても石破氏を支えつづけるという方針で一致し、「頑張りましょう」と首相に伝えたという。それを受けたことで、石破氏は選挙に負けても「辞めます」とはいわずに続投を表明したようだ。

これはある意味で、有権者と国家のトップとの間に明らかな意識のズレがあるということで、国民の声に耳を傾けられず、真摯に対応できない首相は去るべきなのではないだろうか。

野田佳彦登場

今日(6月9日)午前、日本外国特派員協会の記者会見に現れた立憲民主党の野田佳彦代表。

筆者撮影

話の内容は今夏の参議院選挙だった。立憲民主党が選挙で自民党を負かしたいという強い思いがあることはわかるが、特派員協会にきてドメスティックな話題に終始するところに野田氏の矮小さを感じざるを得ない。

こうした場であれば、選挙前であっても自分の世界観を外国メディアに語ることで評価があがるかと思うが、目先の票集めが気なってしかたがないといった言説で、落胆してしまう。目先のことだけにとらわれて、全体像が抜け落ちている。

「ポイントは32ある一人区。ここではなかなか野党が勝てない。 前回は青森と長野だけ 。だから一人区では他党と一本化するという方針」

元首相だけあって、多くの問題に精通してはいるが、それが圧倒的な支持につながらないのは、彼の外見が見劣りするだけでなく、すべてを包み込むような愛が伝わってこないからなのではないだろうかと感じた。