またしても「なんとかならないか」

30年ぶりのソウルは、唖然とさせられることの連続だった。

都市人口はすでに1000万人に達し、町の煩雑ぐあいは東京と違いがない。高いビルもあるが、ニューヨークや上海ほど高層ビルが乱立しているわけでもない。

30年前、町を上から見下ろすと茶色い瓦屋根が並んでいて、山々に囲まれた城下町のような風情があった。だが現在、その面影はない。建築物に統一感はなく、町に新しい建物が少しずつ付け足されていっている。

勝手気ままに好きなように建てるという文化は日本を含めたアジアの特質と呼んでいいかもしれない。和合の民と思われるアジア人だが、建築物については周囲の色調に合わせるとか環境を配慮してという意識がいまだに低い。

ただ食についてはそれぞれの国や地域が独自の色をもつ。それは他では真似できない強靱さで迫ってくる。焼き肉を含めた韓国料理は、日本ではもう食べない方がいいと思えるほどの力強さだ。

今回、ソウル在住の友人に案内されたこともあり、あらためて隣国でありながら日本の韓国料理が「こうも違うか」と思わされる店の数々、料理の数々で参ってしまった。

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これは以前のコラム(フォーリンフード )でも書いたとおりで、本国を越える食べ物は他国では食せないということだ。

どの国でも大多数の顧客を満足させることでレストランの経営が成り立っているので、「本場の品」でなくとも構わない。いや、日本では日本人の味覚に合ったメニューでないと経営は成り立たない。

それはよく承知しているつもりだが、「なんとかならないのか」という思いがまたしても募るのである。

なぜ日本は後手に回るのか

これは日本だけに限ったことではない。アメリカ以外のすべての国と述べた方がいいだろう。

日本を含めた世界中の人からアメリカほど嫌悪感をもたれる国はないが、同時に潜在的羨望を抱かれる国もない。IT業界だけでなく医療から音楽にいたるまで、じつに多くの分野でアメリカは主導的立場を維持している。これは紛れもない事実である。

日本でも近年、30歳前後の起業家がITを使った新ビジネスや生き方を提唱してメディアから注目されているが、アメリカを越えていない。申し訳ないが「その程度ですか」といったところだ。

なにしろ彼らはヨーロッパや中南米の国々に影響をおよぼしていない。もちろんアメリカの特定市場を席巻するような新進企業にも個人にも成長していない。

これは書くことを生業とする私も同様なので、他人を責めてばかりはいられない。英語で書かれた本が何万部も売れているわけではない。以前、英語でエッセイや評論を書いていたこともあるが、英語市場では敗者といっていい。

言うまでもないが、タブレットもアメリカに先を越されている。2003年にソニーや松下電器(現パナソニック)がタブレット市場に本格参入していたことはよく知られるが、その先見性はアメリカを始めとする世界のユーザーをつかみきれず、08年に撤退した。

アップルやアマゾンはその後を受け継ぐようにして成功を収めた。日本は結局、後手に回ったのである。

なにが違うのか。企業のマーケティング戦略よりは、一言でいえば個人がもつ世界観の違いだろう。地球を懐におさめてビジネスをするかどうか、生きているかどうかの違いであろうと思う。

一部企業は日本よりも世界市場に力点を置いているが、地球を意識している人はどれだけいるだろうか。

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メディアができること

インターネットの「日常化」によって、一般的な情報だけでなく世界中のニュースがとめどなく入ってくる。

テレビや新聞のニュースには時間と紙面に大きな制約があるので、印象としては世界のニュースの30分の1くらいしか大手メディアでは報道されていない。

たとえば昨日だけでも、イラクではアルカイダの新たな攻撃で106人が死亡し、シリアの内戦では77人が犠牲になった。そしてメキシコでは麻薬マフィアの抗争によって49人が殺害されている。

3国では人が殺害されることがあまりにも日常的になってしまったので、計200名以上が亡くなっても日米では大きく取り上げられもしない。それよりもアメリカのコロラド州銃乱射事件で12人が亡くなったニュースの方が扱いが大きい。

しかし、イラクやシリア、メキシコでの被害者の背後には家族や友人・知人がおり、人が他界するという憂事において、その悲嘆のレベルは日本と同じである。ニュースが伝えるのは悲劇という事実だけだ。

報道機関の中には、そこから何かできるとの意識を抱えるところもある。しかしそれはほとんどの場合、幻想に過ぎない。

メディアは世の中を変えはしない。今起きていることを報道することで、次へのステップを呼び起こすお囃子の役割を担っているに過ぎない。

世の中を変えるのはただ実践あるのみである。

大震災がカンバン方式を襲う

東日本大震災から半月が経った。傷痕は癒えるどころかますます傷口が広がり、深くなってさえいる。

原発事故による放射線漏れが最も深刻な問題だが、長期的に世界経済に与える影響は計り知れない。過剰なまでの拒否反応から、アメリカでは原発そのものに対する違う津波が押し寄せていることを前号で記した。

壊滅的な打撃を受けた東北地方を復興するため、建設業を中心にした産業需要が増し、資本が多角的に投下されて日本経済が押し上げられるのは当分先のことだ。その前に、大震災は日本のGDPを2.5%以上は押し下げるだろう。

日本だけではない。すでに大震災の「マイナス波」は地球の裏側に及んでいる。日本企業が蓄積してきた独自のビジネス戦術に今、大きな疑念が持たれている。その一つが、トヨタが体系化して世界中の企業に取り入れられたカンバン方式である、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

                 

    

21世紀版:死の商人(2)―新しいビジネスモデル

オバマ大統領の武器バザールが開店―。

首都ワシントンの辛口批評家の間から、オバマ大統領の武器ビジネスを揶揄する言葉が漏れ伝わってくる。

前回(3 月1日)、アメリカはサウジアラビアに対して600億ドル(約5兆円)の武器売却を決めたことを記した。今後15年間に及ぶ取引だが、特定国に対する武器売却としては史上最高額だ。

サウジアラビアは地政学的に中東の要所であり、多くの国にとって最も重要な産油国であるが、武器を売るという点で、オバマ氏はまるで死の商人になったかのようにさえ見える。ただ武器を売る相手はもちろんサウジだけではない。

昨年11月、オバマ大統領はインドに出向き、大型輸送機C-17グローブマスターを10機、売却する最終章に立ち会った。総額41億ドル(約3400億円)の取引である。サウジとの600億ドルと比較すると桁が一つ違うが、対インドへの武器売却としては過去最大である。サウジだけでなく、こちらでも確実に増額の流れが見られる、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。