21世紀版:死の商人(2)―新しいビジネスモデル

オバマ大統領の武器バザールが開店―。

首都ワシントンの辛口批評家の間から、オバマ大統領の武器ビジネスを揶揄する言葉が漏れ伝わってくる。

前回(3 月1日)、アメリカはサウジアラビアに対して600億ドル(約5兆円)の武器売却を決めたことを記した。今後15年間に及ぶ取引だが、特定国に対する武器売却としては史上最高額だ。

サウジアラビアは地政学的に中東の要所であり、多くの国にとって最も重要な産油国であるが、武器を売るという点で、オバマ氏はまるで死の商人になったかのようにさえ見える。ただ武器を売る相手はもちろんサウジだけではない。

昨年11月、オバマ大統領はインドに出向き、大型輸送機C-17グローブマスターを10機、売却する最終章に立ち会った。総額41億ドル(約3400億円)の取引である。サウジとの600億ドルと比較すると桁が一つ違うが、対インドへの武器売却としては過去最大である。サウジだけでなく、こちらでも確実に増額の流れが見られる、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

ビンラディン・ハンティング

外遊中の国務長官ヒラリー・クリントンがパキスタンに立ち寄った時、こう発言している。

「パキスタン国内の誰かはオサマ・ビンラディンがどこに潜伏しているか知っているはず。告白すべき」

「9.11」からすでに9年の歳月がたとうとしている。首謀者であるビンラディンがパキスタンかアフガニスタンに潜伏しているだろうことは、ヒラリーでなくとも誰もが考える仮説である。

ただ、ヒラリーはアメリカの閣僚としてパキスタンを公式訪問し、「ビンラディンがいるだろう。出せ」と言っているに等しく、これは一般の人がブログで潜伏推測先を述べるのとはわけが違う。

by the White House

それに対し、パキスタンの首相であるユースフ・ラザー・ギーラーニーは「パキスタン国内にはいません」ときっぱりと反発した。このやり取りは双方が面と向かっている時に交わされたわけではないが、ヒラリーは10年近くも抱える懇望を述べた。

それはほとんど不可能はないと思われたCIAを中心とするアメリカ政府機関の捜査能力の限界を示すものでもある。地球上から1人の人間を探しだすことは特定の条件下ではたやすいが、パキスタンやアフガニスタンという国家においてはIT技術を駆使してもできないことが証明されている。

目撃者や情報提供者がいない限り、ピンポイントな場所を特定できない。まして、両国の山間部に住む人間がアメリカ側に情報を渡すことはないだろう。それだけに今後も捜索は困難を極める。

先月、ギャリー・フォークナーというアメリカ人がパキスタンからアフガニスタンへ越境しようとして地元の官憲に検挙され、10日間拘置された。すでにアメリカに送還されたが、フォークナーは短銃と刀、暗視ゴーグルを携行し、ビンラディンを殺害するためにパキスタン山間部を捜索していたという。

51歳の男はこれまでプロの捜索活動経験はなく、一般人としてビンラディンの拘束・殺害を企てていた。その背景にはビンラディン拘束の有力情報提供者に対し2500万ドルの懸賞金が支払われる事実も大きい。

フォークナーだけでなく、賞金めあてのビンラディン・ハンターが何人もパキスタンやアフガニスタンの山間部に進入しているはずだ。

ただ山間部に住む人間がカネで動かないことも証明されている。(敬称略)

米兵の自殺

暗い話題で申し訳ないが、今回は米兵の自殺についてである。

米軍の新聞『スターズ・アンド・ストライプス(星条旗)』を読んでいると、日曜版(18日)一面トップに、今年6月の米兵による自殺者数が過去最高を記録したとあった。

1か月だけで32人である。2007年の1年間の米兵自殺者が99人という数字を記憶している。その時点では史上最高と言われていた。しかし、今年6月だけで32人という数字はさすがに多い。

いったいどうしたのか。

アメリカはいまだにイラクとアフガニスタンの二国で戦争を続けている。日本で生活している限り、兵士が死と隣り合わせの状況で銃を手にしていることを想像するのは難しい。

                        

                  by the Pentagon

                                  

両国に派兵された米兵の約20%は躁鬱病を病んでいるという報告がある。それだけではない。軍隊内での人間関係や規律、さらに個人的な経済状況が加味されて数字が上向いているという。

ペンタゴンは「自殺防止タスクフォース」を設立して兵士が命を絶つことを阻止しようとしているが、兵士1人ひとりの心の内面にまで踏み込んで問題を解決するまでには至っていない。

99人という数字を、国際比較でよく使用する10万人あたりの自殺率に置き換えると17.3人になる。一般アメリカ人の平均が11人なので高い数字である。

ちなみに日本は07年の数字で24.4人。トップはベラルーシの35.1人。下位ではフィリピンの2.1人、ジャマイカの0.1人など、地理的にトロピカルな地域の方が自殺率が低い傾向がある。

ついこの間まで自宅のリビングでコンピューターゲームに興じていた20歳の若者が、経済的な理由から兵役に志願し、訓練を受けた後にアフガニスタンに派兵されてタリバンと戦闘をする。そこでの戦いはリセットが効かない死をかけた闘争である。

オバマ政権は2011年7月からアフガニスタンの撤退を開始するとしているが、流動的である。

中国からの「ああしろこうしろ」

今朝(4月26日)の日経を読んでいて、気づいたことがあった。それは中国から学ぶという姿勢である。

経済指標を見れば明らかだが、日本は何年も前から中国に多くの分野で超されることはわかっていた。数字上ですでに抜かれた分野は多い。同時に、中国は日本にアドバイスをするようになった。今朝の朝刊にも2つあった。

日本はこれまで、外国から学ぶという時にヨーロッパやアメリカに目をむける傾向が強かった。けれども、いまは中国や韓国から学んでくるという流れができてきた。10年前にはほとんどなかったことである。

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朝刊には精華大学国情研究センターの胡鞍鋼(こ・あんこう)と野村資本市場研究所の関志雄(かん・しゆう)が持論を展開していた。

持論の展開というより、日経の記者が「ご意見を拝聴する」という姿勢の記事であり、2人は日本に辛口の意見を述べている。いささか被害妄想的かもしれないが、2人には「もう中国の方が日本よりも上だから、よく聴くように」と言われている気がする。

胡鞍鋼は日米の社会格差を比較している。両国の格差は広がっているが、中国の方は経済のパイが大きくなる中での格差なので低所得者も頑張ればよい生活が送れるという主張だ。一方、日本は収入が増えない中での格差なので「悪性の格差拡大」であり、解決策がないとまで言う。

また関志雄は日本の英語教育へきわめて現実的な論考をくだしている。私も英語教育には自分なりの思いがあり、実は関の主張とほぼ同じなので異論はない。けれども、関の口調には日本人への蔑みが隠されているようですらある。

日本人が英語を話せないのは、多くの教員が英語を話せないからところに一因がある。

「一向に改善されないのは、日本経済が変われないのと同じで、英語教員が既得権益化し、改革に反対するからです。(中略)中国には来日経験がなくとも、大学で日本語を専攻しただけで、日本語がぺらぺらの人がたくさんいます。でも日本の大学で中国語を専攻しても、なかなか中国語を話せない。この差は何なのでしょうか」

2人の意見を耳にして、今後中国から「日本はああしろこうしろ」と言われる機会が増えるとの観測がある。今朝の記事内容については、冷静によめば正しい現状分析であることがわかるが、読者の中には感情論を持ち出す人もいるだろう。

日本政府は戦後ずっとアメリカの「ああしろこうしろ」といった要求を飲んできた。賛否のほどはともかくとして、アメリカ従属論を堅持することで日本経済が長年上向いてきたことはある意味で事実である。

けれどもアメリカ従属論に食らいついているだけではもはや日本経済の復活がないことが分かってきた今、今度は中国からの「ああしろこうしろ」といった声に耳を傾けることになるだろうかとの問いがある。答えはたぶん「ノー」だろう。

それは日本人が潜在下で抱えるメンツに触れるからである。その摩擦機会が増えると、今後、日中両国で感情的な軋轢が大きくなる可能性もある。

それとも若い世代は中国からの「ああしろこうしろ」に従順にうなづくのだろうか。(敬称略)

猫とアヒルが力をあわせて・・

やはりテレビの力は馬鹿にできない―。

アメリカのある経済誌を読んでいると、保険会社アフラックのCEO、ダニエル・アモスの記事が載っていた。署名は本人になっている。大手企業のCEOが自分で雑誌に執筆することは稀で、ライターが背後にいると考えるべきだが、文章を読む限り、こなれていないので彼が書いた可能性がある。

アフラックはアメリカの保険会社だが、日本のテレビCMに登場するまねきネコとアヒルのキャラクターが人気を集め、高い知名度を得ている。記事の中では日本の4世帯に1軒がアフラックの保険契約者だと書かれている。

                

本当かどうか調べると、確かに保有契約件数は国内で2000万件を超し、長年業界1位だった日本生命を抜いてトップの座についていた。会社本体の売上(08年)の70%以上は日本からである。

アメリカの保険会社がここまで伸びるとは10年前には考えられなかった。保険市場が国外企業にも開放された結果であると同時に、「♪ネコとアヒルが力をあわせてみんなのしあわせを・・・」のテレビCMに力の源泉があると思われる。記事では、CEOのアモスもその点を強調していた。

インターネット時代であってもテレビの力はすさまじい。黙っていても映像が流れでてくる強さはネットにはない。インターネットは世界中をつなぎ、数十億単位のサイトへの選択が可能だが、こちらからアクセスしないかぎり感受できない。

アフラックのアヒルのテレビCMがアメリカで放映されたのは2000年のことである。90年代後半、コマーシャル制作の担当者が「アフラック」という社名が、アヒルの鳴き声(英語)「クワック」に似ていたことから、アヒルをCMに登場させるアイデアを発案した。

以来、いくつものバージョンを制作したが、いずれもアヒルを登場させ、徐々にネームバリューが広がっていった。初年度は、100人中27人しかアフラックという名前を覚えていなかったが、2年後にはその数字は67人になった。

いまでは90%以上の人がアフラックという社名を知っている。アモスは記事の中で6500万ドル(約58億5000万円)を(広告宣伝費に)割いていると書いている。

もちろんネコが登場するのは日本のCMだけで、アモスはいまネコとアヒルのコンビをアメリカにも使おうとしている。(敬称略)