ゴーンは本当に罪を犯したのか(4)

2日前にカルロス・ゴーンの弁護士である弘中惇一郎の会見があったばかりだが、今日(4日)も午後3時15分から会見が組まれた。

もちろん今朝、ゴーンが再逮捕されたからである。会場になった外国特派員協会からは午前11時過ぎに「弘中の会見を行う」との一報が入っていた。

会見時間は2日前が1時間半で、今日は30分のみ。弘中は「追起訴はあるかもしれないと思っていたが、今日の逮捕はありえない」と検察を責めた。怒りをぶちまけたという表現がふさわしいかと思う。

今後、ゴーンがふたたび起訴されることは十分にある。その時は再び保釈を求めるという。ただ記者たちと話をすると、ゴーンは「初公判までもう塀の中から出てこられない」というのが優勢な見方である。

だが弘中は「人質司法だと思う」と言った。

弘中はメディアを使うことに長けた人である。見事に主要メディアを集めて、弁護側の主張を世界に拡散することに成功している。そして検察側を悪者にしたてあげている。

「ゴーン夫人の携帯や公判で必要な資料も押収していった」

これはあってはいけない行為なので、弘中の言い分に耳を傾ける人がこれから出てくるかもしれない。

しかしゴーンにとって不利になる情報が次から次へとでてきているので、客観的にみたゴーンの現在の立ち位置は「ひじょうに黒に近い場所」と言わざるを得ない。ウルトラCがなければ無罪は勝ち取れないように思える。(敬称略)

ゴーンは本当に罪を犯したのか(3)

カルロス・ゴーンが保釈されてから1カ月近くたつが、いまだに記者会見は行われていない。その代わり、4月2日午後3時から弁護士の弘中惇一郎が再び会見を行った。

hironaka4.2.19

「日産は被告人ではなく検察官です」

本来であれば被告側にいるはずの日産が、検察と結託して検察調書を作成する手伝いをしたと弘中は言った。日産社内の人間が検察に情報をリークしたことはほぼ明らかだが、「誰がやったかはわからない」と述べた。

私はゴーンが保釈後、部分的にでも罪を認め始めているのか、それとも逮捕・起訴は不当であり全面的に起訴事実を否認しつづけているのかを訊いた。

「ゴーンさんは自分が無実であるという考え方を変えていない」と答え、公判では検察側と全面対決する構図が容易に想像できる。

9月に公判が始まると言われているが、遅くなる可能性は高いし、公判も1年から2年の歳月が費やされるという。

弘中は弁護士である。ゴーンの立場を守り、裁判での勝利を目指す。「ゴーンさんの無実以外、認められるものはありまません」と断言し、不利な状況をひっくり返すことに尽力する。

しかしジャーナリストとして、弘中の言い分だけを聴いては片手落ちで、検察側の証拠や言い分も聞かないと客観的な判断はできない。

現時点でゴーンが無罪判決を受ける可能性は極めて低いと言わざるをえないが、もし弘中チームが無罪を勝ち取ったとしたら、「カミソリ弘中」は別の異名を得るに違いない。(敬称略)

ゴーンは本当に罪を犯したのか

fccj1.8.19

日本外国特派員協会の会見室は9日午後3時、記者で埋まった。

「最高記録に近いですね。なにしろテレビカメラ34台ですから」と特派員協会の人がつぶやいた。記者数は約230人。

主役であるはずのカルロス・ゴーンがいないにもかかわらず、この混雑である。それほどカルロス・ゴーン事件は世界を巻き込んでいる。

この日、弁護士の大鶴基成は沈着冷静で、理路整然とした論理展開をしたことにより、国内外の記者たちの中には「ゴーンは無実かもしれない」という思いを強くした者もいただろう。

だが金融商品取引法違反容疑と特別背任容疑により、ゴーンはたぶん11日に起訴される。断定はできないが、起訴される可能性が高くなっている。大鶴もそう推察している。なにしろ東京地検特捜部長を務めた人物である。今後ゴーンがどうなるのかを最も読める人だ。

ただ検察側と弁護側の両方を知り尽くした人物であっても、検察が握っているすべての証拠を大鶴が了承しているわけではない。本人も会見でその点を強調していた。さらに司法取引があったかどうも、現時点では「わらからない」と大鶴は述べた。

ゴーン逮捕が示す日本の美点)で私見を述べた通り、私は依然として検察に分があるとみている。つまり、ゴーンは無実ではなく罪を犯したということだ。

昨日の会見で大鶴は、「ゴーンさんは全面否認しているので、起訴された時は初公判まで勾留されるだろう」と言った。罪を認めれば保釈もありうるが、否認しつづけると厳しい処遇がまっているということだ。

起訴されれば公判までは少なくとも半年の準備が必要になるので、ゴーンは捕らえられたままということになる。(敬称略)

信頼を回復させるために

「いま彼女をつかまえられればスクープですよ、堀田さん」

知り合いのテレビ局プロデューサーは「見つけて下さい」といわんばかりだった。

彼女というのは、STAP細胞を発表した小保方晴子のことである。大々的に記者会見をしたあと、まったくメディアのインタビューに出てきていない。画像の再利用や論文の一部のコピペ等の問題が表面化する前から、彼女はメディアの前から姿を消していた。

メディアのインタビュー依頼にすべて応える必要はないし、その義務もない。研究者にとって、研究の継続の方が大事だからだ。だが彼女はメディアから逃げるように行方をくらました。

大手メディアが自宅や職場に張り込んでもつかまらない。それは単にインタビュー拒否というより、逃亡という言葉があたっているようにさえ思えた。博士論文も含めて、盗用や使い回しが明るみにでることを恐れていたのだろうか。

ネイチャーに掲載された論文は、マウスの細胞ではあるが、弱酸性の液体で刺激を与えるだけで万能細胞に変化するという画期的な内容だった。しかし研究者として、いや一般社会であっても倫理的に問題となる行為をしたことで、論文の本質にまで大きな疑問符がついてしまった。

データを改ざんして無理に結果をだしたとしたら、研究者としての信頼を失墜させただけでなく、理化学研究所や大学の名誉、さらには日本の細胞生物学の評判さえも落とすことになる。

私が唯一願うのは、STAP細胞の研究成果だけは本物であってほしいということだ。

以前、エイズ研究者の半生を描いた単行本を出版した。その時に学んだのは、多くの科学論文には実験のすべての行程が事細かに書かれていないということだ。論文で発表された実験は世界中の研究者によって追試される。だが、論文の指示だけで実験が成功するとは限らない。

たとえば、「試験管を振る」と書かれていても、激しく振るべきなのか、2回左右に振るだけなのか、それとも赤子が寝ているゆりかごを揺するようにするかは判別できない。実験は時に、その一振りで失敗する。

本当にSTAP細胞が誕生しているのであれば、小保方はその手法を世界に出向いて公開すべきである。それでしか失墜した信頼を回復させることはできない。(敬称略)

日本人はもっと怒っていい

AIJ投資顧問事件の浅川和彦を覚えていらっしゃるだろうか。

浅川は厚生年金を中心に、顧客から預かった資金の大半にあたる1092億円を損失させた。全国17の基金から248億円をだまし取ってもいる。基金に加入する企業数は3000社にのぼり、一部しか返済できていない。

浅川と共犯2名は昨年6月に逮捕。今月2日、東京地裁で検察側の求刑があり、浅川に懲役15年、3被告に計218億円の追徴金を求めた。もちろん求刑の段階であり、実際の量刑がどれくらいになるかはわからない。

実刑は間違いないだろうが、「この程度でいいのか」というのが個人的な感想である。

またアメリカとの比較で申し訳ないが、2008年12月に詐欺罪で逮捕されたバーナード・マドフという男がいる。ナスダック元会長であり、自ら証券会社を起こして投資家をだました。手口が浅川に似ている。

ただマドフ事件の場合、被害総額が3兆円を超えていたこともあり、裁判所は日本ではあり得ない量刑を言いわたす。禁固150年である。71歳の時に言い渡されたので終身刑という意味である。

しかも懲役ではなく禁固、つまり「死ぬまで独房にいろ」というメッセージだ。それくらい重い罰だった。

アメリカでは禁固100年を超える量刑が言い渡されることがしばしばある。懲罰的な意味合いが含まれる。民事事件でも同様である。被害額が1000万円であるのに対し、懲らしめるという意味で1億円ほどの損害賠償を言い渡したりする。

その背景には、極悪な犯罪者に関しては更生などという悠長なものは念頭にないということだ。それよりも、再び社会に出してはいけないと考える。私はこの論理の方が正しいと思う。日本の量刑はあまい。

マドフは現在、ノースカロライナ州の刑務所に服役中だ。09年、同じ受刑者に殴られて鼻の骨と肋骨を折られている。マドフの証券会社に投資し、損害を被った男だという。