日本外国特派員協会の会見室は9日午後3時、記者で埋まった。
「最高記録に近いですね。なにしろテレビカメラ34台ですから」と特派員協会の人がつぶやいた。記者数は約230人。
主役であるはずのカルロス・ゴーンがいないにもかかわらず、この混雑である。それほどカルロス・ゴーン事件は世界を巻き込んでいる。
この日、弁護士の大鶴基成は沈着冷静で、理路整然とした論理展開をしたことにより、国内外の記者たちの中には「ゴーンは無実かもしれない」という思いを強くした者もいただろう。
だが金融商品取引法違反容疑と特別背任容疑により、ゴーンはたぶん11日に起訴される。断定はできないが、起訴される可能性が高くなっている。大鶴もそう推察している。なにしろ東京地検特捜部長を務めた人物である。今後ゴーンがどうなるのかを最も読める人だ。
ただ検察側と弁護側の両方を知り尽くした人物であっても、検察が握っているすべての証拠を大鶴が了承しているわけではない。本人も会見でその点を強調していた。さらに司法取引があったかどうも、現時点では「わらからない」と大鶴は述べた。
(ゴーン逮捕が示す日本の美点)で私見を述べた通り、私は依然として検察に分があるとみている。つまり、ゴーンは無実ではなく罪を犯したということだ。
昨日の会見で大鶴は、「ゴーンさんは全面否認しているので、起訴された時は初公判まで勾留されるだろう」と言った。罪を認めれば保釈もありうるが、否認しつづけると厳しい処遇がまっているということだ。
起訴されれば公判までは少なくとも半年の準備が必要になるので、ゴーンは捕らえられたままということになる。(敬称略)