米大統領選挙はこれまで、「より多くの選挙資金を集めた候補が勝つ」と言われてきた。それほどカネとホワイトハウスには密接なつながりがあった。カネで大統領職が買えるわけではないが、1988年の大統領選から2016年までの30年間、ライバル候補よりも多くの資金を集めた候補が勝ってきた。例外はない。
ただ2016年、ある人物がそのジンクスを破る。それがドナルド・トランプだった。同年の大統領選はトランプ対ヒラリーの戦いで、トランプの選挙資金総額はヒラリーが集めた額のほぼ半分だったが、トランプが勝つのである。それまでの選挙であれば、トランプが勝つ可能性は極めて低かったはずだが、、、。
米大統領選は日本よりもはるかに自由闊達に選挙活動を行える。それはテレビやラジオ等を使った政治広告費に制限がないことから、集めた選挙資金を無尽蔵に使うことができるためだ。テレビの政治CM本数にも制限がなく、より多くのCMを放映することで、その候補の名前や政策などを視聴者に伝えられる。獲得できる票数は使途した選挙資金にほぼ比例する形で伸びるため、より多くの資金を集めた候補が勝つという、ある意味で単純な流れがあった。
ところが、インターネットがそれを変えた。多額の資金を割かなくとも、ネット上で有権者に候補のよさを伝えられれば、テレビの影響力を凌駕できる。それを成し遂げたのがトランプだった。
今年の選挙ではそのトランプがまた復活する可能性がある。現職バイデンの4月までの選挙資金は約1億8200万ドル(約285億円)であるのに対し、トランプ陣営の方は約1億2400万ドル(約195億円)でしかない。11月の本選挙までトランプは巻き返しを図って集金に力を入れてくるだろうが、仮にトランプが資金面で遅れをとっても、2016年を再現できれば・・・。(敬称略)