生まれ故郷

私は東京中野で生まれ育った。ただ最近は、東京に住んでいてもなかなか中野に行く機会がない。すでに両親は他界し、実家も処分してしまったのでなおさらだ。だが今日、戸籍謄本を入手するために、久しぶりに中野区役所に出向いた。

帰りにJR中野駅から北に伸びるブロードウェイというアーケードを歩いた。私が小学生の頃にできたショッピングモールで、今でもかなりの賑わいがある。

ただ50年も経つと、8割ほどの店は代わってしまっていて、新しい店ばかりになっている。それでも、お気に入りのラーメン店が今でも路地裏で営業しているのを見つけた時は、瞬時にして心の中に華が咲いた。

「青葉」。今でも変わらぬ美味しさだった。

遅れる人材誘致

昨日(7月5日)の日本経済新聞の朝刊一面に、ロシアの頭脳流出が深刻な状況にあるという記事が出ていた。プーチン氏によるウクライナ侵攻は国外からの批判に晒されているが、国内にいるロシア人にとっても反プーチンの流れは止まらず、「もうロシアには居られない」として今年2月、3月だけで30万人がロシアを去ったという。高学歴、高収入な人ほど脱出する傾向が強いという。

ロシア国内にある非政府調査機関の調査によると、24歳以下の若者で国外永住を希望するロシア人は今、なんと50%を超えているという。頭脳流出という事態は国家にとっては大変深刻なことで、このままではロシアは成長が止まり、競争力を失った敗者となりうる。それほどプーチン氏がウクライナでやっている暴挙は悪影響があるということだ。

ただ日経新聞の記事の狙いは他にもある。ロシアを脱出した優秀な人材を受け入れるのが、スウェーデンや米国、オーストラリアといった国々が中心で、日本は高度人材の誘致指数を眺めると先進国33カ国中25位に沈んでいるというのだ。もちろん、日本語というある意味で特異な言語体系のせいで、国外から優秀な人材を誘致しにくいという理由はある。

ただそれ以上に、日本社会は国際的に実質賃金が低いだけでなく、移民の受け入れ体制が十分ではない上、社会の寛容性も他国と比較すると低いという。例えば実質賃金を眺めると、日本はアメリカの56%でしかなく、報酬面で他国と比較すると見劣りがする。また移民に対する差別撤廃の法律の整備も遅れている。こうした点は以前から繰り返し指摘されてきたことだが、政府をはじめ民間レベルでも深刻に改善していこうという意識が低い。

これは日本社会の国際性の低さということにもつながっており、日本の将来に対して暗い影を落とす。海外に出ていくことも大切だが、本当の国際性というのは、どれほど国内で外国人を受け入れられるかということだろうと思う。

自己満足で、、、

スミマセン。

2015年に出版した拙著、『エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明』(文春文庫)が過去数日、アマゾンのエイズ関連書籍の第1位にきており「ベストセラー1位」というフレーズが打たれた(エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明 (文春文庫))。ある人に言われて気づいた。

今日、7月4日はアメリカの独立記念日。私にとっては思い入れのある国だけに、なんとなく喜ばしい。7年前にでた本ではあるが、拙著がこうした形で再び注目されるのは嬉しい限りだ。皆さま、ありがとうございます。

ロシア:追い詰められたあと

ロシアがウクライナに軍事侵攻して4ヵ月が過ぎたという話は6月30日のブログでも記したが、プーチン氏の暴挙といえる行動は、ロシアが西側諸国に押され続けてきた結果でもある。同氏が長いあいだ圧力を感じてきたということだ。

北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が30日に終わり、そこでの最大関心事もロシアで、参加国はロシアを「もっとも重大かつ直接の脅威」と捉えた。フィンランドとスウェーデンがNATOに加わったのも、ロシアの脅威を単独ではなく複数国で受け止める方がより効果的という意味がある。それほどロシアという国はいま、ヨーロッパ諸国にとって脅威なのだ。

それは同時にNATOが首脳会議でロシアを敵国と認定したため、敵対関係がより如実に浮き上がってきたということでもある。もちろん、誰も戦争を望んではいないだろう。ごく少数の政治家だけが戦争によって得られるモノを期待しているだけである。プーチン氏にこれ以上、暴挙を起こさせないためには何をすればいいのかを、西側諸国は考えなくてはいけない。

昨日、外国特派員協会のワークルームで、ヨーロッパからの特派員とこのあたりのことを話し合った。ヨーロッパ諸国内ではいま、対ロシア政策が統一されているわけではないが、反ロシアという意識は今後さらに強まるはずだとの見方では一致していた。話し合いの中で一人の記者が語気を強めて言い放った「プーチンは決して信用できない」という言葉が今も耳に残っている。ただそこからプーチン氏を暴発させないための妙策はなかなか出てこない。

大きな戦闘に発展しないように対話をし、将来を見据えた政策を熟考することは当然だが、確実に具現化できる策がない。ここが国際関係の難しさでもある。