新しい時代に

クリスマスが終わって「新しい時代に」というタイトルをつけたわけではない。25日に中国が空母「遼寧」を西太平洋に突き進ませたことが「新しい時代」なのである。

ウクライナから中古の空母を中国が買ったという記事を書いた記憶がある。90年代の終わりだ。

購入した時はまだ空母として機能しておらず、それから年月をかけて手を入れて改造し、2012年に就役させている。中国にとっては初の空母である。

その遼寧が第一列島線を越えて西太平洋にでてきたのが「初めて=新しい時代」なのである。

中国が第一列島線から第二列島線までの制海権を手中にする構想を発表したのは随分まえのことだ。最初に聞いたときは「どこまで本気なのか」と思ったが、着々と構想どおりの軍事行動をとっているかに見える。

さらにトランプ政権を意識しての動きであろうから、西太平洋にでると同時に、尖閣への軍事的挑発にでて日米の出方をうかがうという見方がますます現実味を帯びてきた。

何もないことを望むが、軍事的衝突に備えることも極めて重要で、「中国軍、尖閣に上陸!」というニュースに驚かないことである。外交的に解決する努力も必要だが、交戦になる可能性にも十分に備えるべきである。

2017年は経済的には上向く年になると読むが、軍事的にはキナ臭さがついて回る年になるはずだ。

北方領土は戻らない

奪ったものは返さない・・・ロシアの北方領土への姿勢である。

今回のプーチンの訪日で日本があらためて思い知らされた事実だ。ロシア政府が何十年も前から返すつもりのないことは、多くの人はわかっていた。

だが安倍を含めた日本政府は「北方領土はもう返ってきません」と、今でも断言しない。それは日本側の敗北を認めることになり、メンツを失うことにつながるからだろう。

「返還の可能性はいまでもあります。むしろこれからの交渉にかかっている」というのが安倍のスタンスである。

この姿勢は国民へのウソにつながるし、将来もっと大きな落胆をもたらすことになる。

過去500年ほどの世界の領土問題を眺めると、実効支配が揺るぎない強さをもってきたことがわかる。「日本固有の領土」といった論理は脆弱で、イマこの瞬間に実効支配している事実こそが国際関係で最大の力を発揮する。

だから私は今後も北方領土が返ることはないと思っている。私がロシア人だったら返さない。

日本がそれほど取り戻したいのなら、奇襲を仕掛けて武力で制圧するという選択肢がある。しかし第2次世界大戦で牙をもがれた日本人はそのオプションをとらない。

あとは漁業を含めて、北方領土で日本側に経済的利益を呼びおこす交渉をまとめることが実利的な外交なのだと思う。

季節労働者の終わり?

今年は年頭からアメリカ大統領選のおかげで、いろいろなところから声をかけて頂いた。

自分では4年に1度の「季節労働者」と認識してきた。イチゴ摘み、ぶどう摘み、りんご摘みが終わり、ようやく冬がきたという印象である。

1月からここまで、テレビとラジオの出演回数は計82回におよんだ。

ただトランプが大統領になったことで、まだまだ短期労働者として借り出されそうである。

トランプがホワイトハウスに入り、自らが言っているように4%の経済成長率を達成できれば「名大統領」になる可能性もある。一方で、言動不一致が災いし、暴言や失言も繰り返されて弾劾裁判にいたるような「最悪な大統領」になることもある。

まあまあの大統領という路線はないように思う。これからもまだまだ眼が離せない人物である。

坊主になって2週間

「ヒラリーが負けたら坊主になります」とテレビ番組で発言したので、髪の毛を切った。あれから2週間。

会う人はみな髪の毛についてヒトコト、フタコト発言してくれる。私の眼の前で「似合わない」と言う人はいない。

心の中ではそう思っていても、「若くなった」「結構いいですよ」と褒め言葉を探してくれる。

特に女性は5ミリの頭に抵抗がある人がかなりいて、「見たくない」との思いを抱いている人が少なくない。似合うか似合わないかという前に、罰ゲームのようにして髪の毛を切ることに合理性を見いだせないのかもしれない。

しかも「負けたから坊主になる」という発想は21世紀のものではない。戦前、戦中の発想である。嫌悪感さえ抱かせるのだ。

ただ私はヒラリーが負けたあと、髪の毛を切らずにいるというオプションはなかったと思う。言った以上、切るつもりでいた。

しかも切ったことで、実に多くのひとがコメントをくれたり関心をよせてくれた。

個人のマーケティングという点ではプラスしかない。ましてやメディアで情報を発信する仕事をしている以上、これくらいインパクトのあることは定期的にやる方がいいかもしれないとも思っている。

あるテレビ番組で一緒になった評論家、宮崎哲弥は「堀田さん、テレビ的にはすごくいいですよ。プラスです」と言った。

別の番組で共演したデーブ・スペクターは「エッ、BSの番組でやったの。BSでやっちゃダメ。地上波でやらないと。ギリギリでMX。僕に聞いてくれないきゃ」と、業界に通じた人らしいコメントをくれた。

私はといえば「いまは楽しんでいる」というのが正直な心持ちだ。しかし今後、「坊主にします」という約束は2度としないと思う。(敬称略)

少しだけ哀しい季節

christmastree11-20-16

東京都千代田区丸の内にある三菱一号館美術館前に現れたクリスマスツリー。

世の中は師走に向かってまっすぐ走っているが、ツリーが町のいたるところに登場すると、どことなく哀しい気分になる。

ネオンが瞬けば瞬くほど、心には切なさが去来するような気もする。クリスマスが今年最後の大きなイベントであるということに、寂寥感を抱くのかもしれない。

せいぜい心が喜ぶことをたくさんしたいと思う。