予想通りのマティス国防長官

いまは少しだけ安堵が降りてきている。

何かというと、トランプ政権発足後、放送メディアや講演で私が口にしたことが外れていなかったからだ。

国防長官に就任したジェームズ・マティスが来日して安倍や稲田と会談することが決まった直後、主要メディアは、マティスがどういう態度で2人に望むかわからないと報道した。

無理もない。トランプは同盟国であるメキシコやオーストラリアに対して喧嘩をふっかけた。日本でさえもわからない、というのが大方の見立てだった。

しかもトランプは昨年3月、ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、日本に対して「米軍の全面撤退」をほのめかしていた。日本の核武装のオプションさえ口にしていた。

だがその後は日本の安全保障問題にはほとんど触れなかった。あの発言のあと、専門家にさとされたのだと思った。「日米同盟を軽視してはいけない」という教えである。

トランプは従軍経験がない。軍事教練をほどこす中高にこそ通ったが、安全保障問題は素人である。東アジア問題に精通しているとは思えなかった。

すでにマティスやCIA長官のマイク・ホンペオに、テロ容疑者に対する拷問の是非では「彼らの判断に任せる」と発言していたこともあった。つまり日米同盟を堅持するというマティスの意向がトランプ政権の対日政策になるということだ。

過去2週間で、テレビとラジオ、講演で何度もこの点を述べた。テレビは少なくとも数百万単位の人が観ている。ラジオも全国ネットで流れるので、活字メディアの比ではない。

いまは当たってよかったというのが正直な気持ちであるが、同時に放送メディアの面白さと影響力の大きさ、そして怖さも感じている。(敬称略)

オリバー・ストーンという人物

映画監督というより真実の探求者ーー。

都内のホテルでインタビューしたあとの思いである。ストーン監督が来日したのは新作映画『スノーデン』のプロモーションのためだが、私の狙いは監督がいだくアメリカ政府と世界情勢への思いを訊くことだった。

19日午前のテレビ朝日の番組でインタビューの抜粋が放映された。だが30分のインタビュー時間のうち、映像で使われたのは10分も満たない。テレビという媒体の性質上いたし方ない。

テレビで紹介されなかったところで、監督はハッとさせられるようなことをいくつも口にした。

「DNC(民主党全国委員会)のメールがウィキリークスによって漏洩されました。ウィキリークスは一切どこからメールを入手したかを言わなかった。あれは民主党内部に密告者がいてウィキリークスに渡したのです。ロシアではない」

昨年の大統領選でヒラリー・クリントンに不利になるようなメール内容である。ロシアが関与していると言われてきたが、実は党内部に内通者がいたのだ。

DNCが不法行為を行っているから怒りを覚えて密告したというのだ。

監督はスノーデンが亡命しているモスクワに9回も行って、長時間のインタビューを行っている。さらにプーチンにもインタビューしている。現在はプーチンのドキュメンタリーを制作中だ。

ジャーナリスト以上にジャーナリストらしい姿勢で真実を追求しようとしている。70歳になっても活力は衰えていない。久しぶりにインタビュー後に清々しい心持ちになった。

オレ流を貫いたトランプ

相変わらずの言動だった。

当選後、初めての記者会見で、トランプは好き勝手に振舞った。嫌いな記者には質問をさせず、女性弁護士にビジネスと政治を切り離す段取りを説明させ、自分のことを「神が創生した最高の雇用創出者だ。本当のこと」とうそぶいた。

力ずくでねじ伏せるスタイルの政治家になるだろう。しかも、アメリカが抱くべき明るいビジョンや夢を語れない大統領になりそうだ。

期待は抱けない・・・それが正直な感想である。

病床で思ったこと

病気になると「健康のありがたみが分かる」とよく言われる。

インフルエンザにかかったので正月はずっと家にいた。体よりも心が脆弱になり、テレビに映し出された人がいつも以上に健康にみえて、歩いて人と話ができるだけでも幸せという思いにかられた。

けれども、病気が治って普通の生活にもどると、もうそんな気持ちは失せている。

2年前に他界した母は7年半ほど病床にいた。見舞いにいくたびに自身の健康のありがたさを痛感した。しかし普段から健康でいられることに感謝すべきではあるが、逆の思いもある。

単に仕事ができることに感謝するくらいではだめで、そこから自分を最前線まで引っ張り上げないと仕事にならないことも真理なのである。

その領域で仕事をしている間は健康のありがたさに思いをはせることはない。むしろ「健康はありがたい」という自意識を抱かないときこそが健康なのかもしれないとも思う。

ただ朝から何もせずに家にいると、時間の経つのがあまりにも遅くてとまどった。おせちを食べて、ソファでテレビを観ながらウトウトして爆睡。起きて時計をみるとまだ午前10時半という時間経過はいったいどうしたことか。

普段であればテレビと新聞、さらにネットニュースに目を這わせ、メールの送受信をしているだけでもすぐに10時半になる。

歳をとると時間の経つのが早いというが、あれは忙しいからなのだろうか。

アメリカでは1月8日が「全米バブルバスの日」である。今日は泡風呂に入りたいところだが、泡がたつソープがない・・・

bubblebathday1-9-17

Photo by iStok

新しい時代に

クリスマスが終わって「新しい時代に」というタイトルをつけたわけではない。25日に中国が空母「遼寧」を西太平洋に突き進ませたことが「新しい時代」なのである。

ウクライナから中古の空母を中国が買ったという記事を書いた記憶がある。90年代の終わりだ。

購入した時はまだ空母として機能しておらず、それから年月をかけて手を入れて改造し、2012年に就役させている。中国にとっては初の空母である。

その遼寧が第一列島線を越えて西太平洋にでてきたのが「初めて=新しい時代」なのである。

中国が第一列島線から第二列島線までの制海権を手中にする構想を発表したのは随分まえのことだ。最初に聞いたときは「どこまで本気なのか」と思ったが、着々と構想どおりの軍事行動をとっているかに見える。

さらにトランプ政権を意識しての動きであろうから、西太平洋にでると同時に、尖閣への軍事的挑発にでて日米の出方をうかがうという見方がますます現実味を帯びてきた。

何もないことを望むが、軍事的衝突に備えることも極めて重要で、「中国軍、尖閣に上陸!」というニュースに驚かないことである。外交的に解決する努力も必要だが、交戦になる可能性にも十分に備えるべきである。

2017年は経済的には上向く年になると読むが、軍事的にはキナ臭さがついて回る年になるはずだ。