アメリカの分断

久しぶりに首都ワシントンにもどっていろいろな人と話をすると、トランプ政権への怒りを通り越した「あきらめ」と「虚無感」を感じる。

「暗殺されてほしい」と言った人もいたが、それは日本でも同じだ。だがアメリカ人のほぼ半分はトランプ支持者である。

「オバマの8年間はひどかったからね。トランプがなんとか経済が立て直してくれると思う」

スタバでであったケンタッキー州ルイビル市出身の男性はトランプを推していた。すぐに訊いた。

「それでは昨年11月には、トランプに一票を入れたわけですね」

「ああ入れたよ。ビジネスマンとして成功しているから、ワシントンでも成功するだろう」

「大統領として、あの乱暴な言動はどう思いますか」とぶつけた。

「俺はあのエクストリーム(極限)さが好きなんだ」

まるで身内の自慢話を聴いているようだった。最後に「トランプには期待している」と口にすると、綺麗にならんだ歯をのぞかせた。

学者や専門家の話にも耳をかたむけるが、市民の話が興味深い。

アメリカの分断ーー。

融合させようとする力学はいまのところ存在していないかに見える。

私の憧れ

これまで出会ってきた人の中で、感銘を受けた人が3人いる。その1人がスターバックス社長のハワード・シュルツである。

ちょうど20年前、西海岸ワシントン州シアトルにあるスタバ本社でインタビューした。いまでも当時を思い出すと胸が高鳴る。

本社はまるで美術館のようで、ありあまる空間の中で若い社員たちが眼を輝かせて仕事をしていた。彼の表情も活気に満ちていた。

私はフリーランスになって7年目。自由に仕事をしていたが、彼のためだけなら会社員に戻ってもいいとさえ思ったほどだ。

その時のインタビューで一番印象に残っているのは、「スターバックスという会社の寿命を20章だての本にしたら、まだ3章でしかない」と言ったことだった。

1997年当時、すでに大成功を収めていて店舗数は世界で6500を超えていた。にもかかわらず第3章目である。

実は今日、最新号の米『フォーチュン』誌を読んでいたら、シュルツの話がでていた。20章立ての本のたとえを再び口にしている。

驚いたのは「今はまだ4章目か5章目」と発言したことである。20年たっても1、2章しか進んでいないのだ。

現在、スタバは世界75カ国に進出し、店舗数も2万6000超まで増えた。にもかかわらず4章目か5章目、である。

実は、シュルツは100年思想という考え方をもっていて、自分は生きていないが、100年後にスタバはこうあってほしいとの実像が思い描けているのだ。

それに向かって着々と世界戦略は展開されているのである。当面の目標は2021年にマクドナルドの店舗数を抜くということだ。

先日、今年4月でCEOを辞めると発表したが、私にとってはずっと憧れのビジネスマンなのである。(敬称略)

HowardSchultz

Howard Schultz: photo from Twitter

偽証罪にあたいするオバマの嘘

オバマ政権末期の昨年10月、オバマがトランプの自宅(トランプ・タワー)の電話盗聴を命じたと伝えられる問題が浮上している。

トランプは、盗聴を命じたオバマを「悪党か異常者」呼ばわりして糾弾している。一方、トランプの広報官は「オバマを含めた政権担当者が米市民への監視を命じたことは一切ない」と反論した。

だがオバマが国家安全保障局(NSA)に米市民だけでなく、世界中で盗聴をおこなうように指示していたことはエドワード・スノーデンのアメリカ政府の内情の暴露を待たなくとも、よく知られた事実である。

オバマは2009年の政権発足当初、盗聴を含むスパイ活動に懐疑的だったが、しだいに諜報活動の重要性を認めて盗聴活動を指示するようになる。

だから昨年10月、トランプの自宅を盗聴していたとしても何の驚きもない。

私は心情的には反トランプであり、トランプのこれまでの虚言や暴言に眉をひそめてきたが、今回の盗聴問題だけはトランプの言うとおりだろうと思っている。

任期を終えたオバマとしては、「しらばっくれる」つもりなのだろうが、トランプは徹底的に調査を命じるべきである。

場合によっては、前大統領が法廷にひっぱりだされることもある。(敬称略)

「鮨と指輪は自分で買おう」

久しぶりに大きくうなずく記事を読んだ。

漫画家の西原理恵子が朝日新聞電子版の取材にこたえた「鮨と指輪は自分で買おう(「鮨と指輪は自分で買おう」)である。

これまでまったく耳にしたことのない内容ではない。だが鮨と指輪という、高価であるが故に男に出させてゲットするといった姑息な女子になるのではなく、鮨と指輪くらい自分で面倒みなさいという意見はすばらしい。

いまだに男権社会であるという現実をものともせず、女子に自立しろと鼓舞する。

西原は壮絶な家庭環境を明かしている。それがひとり語りの文章に力強さを持たせている。説得力がある。

これは成功者だからこその意見ではない。誰しもが持つべき考え方である。(敬称略)

トランプからのツイート

毎朝起きると,スマホの緑色のライトが点滅している。寝ている間にツイートかメールが入った証拠だ。

トランプが大統領に就任してから、トランプがツイッターでつぶやく度にスマホを震える設定にしてある。今朝は4本のツイートが入っていた。

もっとも新しいつぶやきは、「フェイク・ニュース・メディアは真実を伝えない。アメリカにとって危険なことだ。ニューヨーク・タイムズの内容は冗談レベルだし、CNNは悲しいくらいに酷い!」というものである。

そして報道官スパイサーは24日、両メディアとロサンゼルス・タイムズ、ハフィントン・ポスト等の記者をホワイトハウスの記者会見から閉め出した。とんでもない暴挙である。

米メディアのおよそ8割は左寄りである。当然、彼らは共和党のトランプ政権には対決姿勢をしめす。

彼らの伝える内容が本当に虚偽であれば、それを指摘すればいい。しかしオピニオンとしての論調を修正する権利は誰にもない。

トランプもスパイサーも、単に「気にくわない」報道をされただけでメディアを閉め出した。自滅行為と言わざるをえない。

先が思いやられるというより、先がないとしか言えない。(敬称略)