ある書店の倒産

崖っぷちから向こう側へ―。

アメリカの小売書店業界第2位のボーダーズが今週中にも倒産する可能性が高い。日本でいえば、紀伊國屋書店に次ぐ業界2位のジュンク堂書店が潰れることに等しい。

個人的には、25年間住んだ首都ワシントンの店舗を随分利用させてもらったので、連邦破産法第11条の申請というニュースは残念である。しかしビジネスに感傷は必要ない。すでに紙の時代は過ぎたと言われて久しい。単行本だけでなく、新聞や雑誌も含めた紙媒体の上り調子ならぬ「下り調子」は続いていた。ある意味では判り切った結末だ。

アメリカで起きたことが10年後には日本でも起こると言われて久しいが、近年はそのサイクルが早まっている。近い将来、日本の大手書店が倒産というニュースは何も驚くべきことではない。

けれどもすべての書店が傾いているわけではない。業界トップのバーンズ&ノブルは健全な経営体制を維持している。それであれば、ボーダーズの経営戦略のどこかにミスがあったと考えてしかるべきだ。ビジネス上の意思決定に間違いはなかったのか、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

新しい波:ライフスタイル・ビジネス

「ライフスタイル・ビジネス」

また新しいビジネス・コンセプトがアメリカから上陸してきている。日本ではデビュー前と述べて差し支えない。というのも、いまだにアメリカでも「ライフスタイル・ビジネス」の定義が定まっていない段階だからだ。

言葉自体は平易であるが、大多数のアメリカ人でさえ真意は理解されていない。ビジネス界では数年前から使われてはいるが、今年1月、ニューヨーク・タイムズが「ライフスタイル・ビジネス」というコンセプトを新語として扱い、特集した段階である。

あえて言葉の定義をすると「利益至上主義に反旗を翻し、自分たちのライフスタイルに沿ったビジネス活動を実践すること」となる。それは生き方の追求であり、利益を優先せず、起業者のライフスタイルを維持するためのビジネスということだ。

たとえば脱サラでコンビニエンス・ストアのオーナーとして店舗を切り盛りすることを「ライフスタイル・ビジネス」とは呼ばない。主体的に趣味や生き方に根ざした業種を選択する一方で、利益追求型のビジネスモデルを追求しないのが特徴だ。それは組織に対するアンチテージでもある、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

ある中国企業のアメリカ進出

胡錦濤国家主席がホワイトハウスでオバマ大統領と会談した今月19日、アメリカ側は大手企業14社のCEOを招いていた。

マイクロソフトのバルマー氏、ゼネラル・エレクトリック(GE)のイメルト氏、ボーイングのマクナニー氏、ゴールドマンのブランクファイン氏といった財界の重鎮である。人権問題や為替問題、朝鮮半島の安全保障問題などで米中は依然として対立姿勢を崩さないが、「両国間のビジネスは大いに拡大していきましょう」という点で一致していた。

世界最大の中国市場への参入はアメリカの多国籍企業だけでなく、諸外国の企業にとっても右肩上がりで拡大している。2010年の対中直接投資額は09年比で17.4%増の1057億ドルに達している。逆の流れの中国による対外直接投資額も前年比で36.3%も伸び、590億ドルという巨費になっている。

各国企業が中国市場に血まなこになる姿は十分に理解できる。同時に中国が世界各国の資源や技術を求めてマネー外交を繰り広げている点も周知の事実だ。ただここにきて、中国企業によるアメリカ市場への「正当な進出」にも注目が集まっている。

                    
「正当な進出」とは、カネに任せて買いあさるのではなく、周到な準備から土地を買って工場を建て、近隣の雇用を拡大させてアメリカ経済へのプラス要因を生み出す進出だ、、、、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

オバマ経済学

オバマ大統領がホワイトハウスの住人になった2009年の秋、ワシントンで取材中、シンクタンクの研究者が言った。

「オバマ氏はカネ儲けを邪悪と考えているようだ。基本的に理念の人だし、市民活動家としてこれまで反ビジネスの立場にいた。その証拠に誰一人として財界人を閣僚に抜擢していない」

あれから2年。その話は研究者の話というレベルでは収まらなくなった。企業の営業活動はオバマ政権による規制により多少なりとも抑制された。大企業のCEOで構成されるビジネス・ラウンドテーブルは昨年、そうしたオバマ大統領への苦言と提案をリポートにまとめ、ホワイトハウスに提出した。そこには米財界のフラストレーションが綴られていた。

しかし中間選挙で民主党が大敗し、連邦下院の過半数を共和党に奪われたことで状況は一変した。オバマ大統領は共和党と妥協しなくてはワシントンの政治が前に進まない。手を組まなければ法案を通過させることはできない。

状況がよく把握できない人たちはこの「ねじれ」をワシントン政治のさらなる劣化と呼んだ。財政赤字と経常赤字の双子の赤字はすぐに解消せず、失業率も9%台で高止まりしている。経済成長率が鈍化する中で、オバマ政権は身動きができないと捉える。けれども状況は逆である、、、、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

2011年、中国企業との新しいつき合い方

中国とどうビジネスをするのか―。

中国進出への新しいトレンドが浮かび上がってきている。特に欧米企業の中国関与の施策が時代とともに移り変わり、過去1年で新しい動きがある。

話を進める前に、過去における中国企業とのかかわりを総括してみたい。長年、多くの企業トップは中国市場への出方で悩み続けてきた。

BRIC’sの中でも中国が抜きん出た勢いで経済成長を続け、日本企業も何らかの形でその波に乗るべきと考えるのは当然だった。しかしこれまで、「中国とのつき合い方には気をつけないと失敗する」「狡すっからい国だ」という批判が後を絶たず、慎重論も多かった。

経済産業省が発表した統計をみても、近年は新規設立よりも撤退・移転の方が多くなっている。

04年から08年の5年間で、日系企業の新規設立は04年の211社から107社(08年)へと半減している。逆に撤退・移転企業数は04年の92社から151社に増えている、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。