新型コロナ(5):世界の中の志村けん

新型コロナウイルスで急逝された志村けんさん。日本だけでなく、海外でも訃報はさまざまな国で大きく伝えられた。CNNやABCといったアメリカのテレビから台湾、インド、パキスタン、ブラジルのメディアまで世界中に悲しいニュースが伝わった。

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特にアメリカの「Variety(ヴァラエティ) 」という雑誌が大きな写真を載せて、大きく報じていた。この雑誌は1905年創刊の芸能誌で、深みのある情報を伝えることで定評がある。

コロナで入院したことから1974年にドリフターズに入り、1人のコメディアンとしての活動が中心になっても人気をたもち続けたと書き、山田洋次監督の「キネマの神様」にも出演予定だったことまで記していた。

もう1度、ひとみ婆さんを観たかったー。

新型コロナ(4):あるコロナ患者のつぶやき

日本時間27日午前、米ロサンゼルス・タイムズ紙に新型コロナウイルスに感染した男性の記事がでていた。ジョーイ・キャンプという実名が出ていて、感染前後の生活の変化や素直な思いが記されていて興味深かった。

ジョーイは南部ジョージア州に住む30歳の調理人で、「ワッフルハウス」というレストラン・チェーンに勤務していた。南部を中心に2100店舗もある企業で、私も滞米中、何度も食べにいったことがある。

ジョーイは離婚を経験していて、2人の子どもがいる。記事中には子どもと一緒に生活しているという記述はなかった。ワッフルハウスの仕事で得られる時給は10ドル65セント(約1160円)。そのほかにバスの運転手もしているが、生活は楽ではない。

2月下旬、咳が出始めた。仕事を休むほどではなかったが、だるさが体にまとわりついていた。咳はより頻繁になり、「肺炎になっているかもしれない」との思いはあったが、すぐに病院にいくというオプションはなかった。というのも、建設労働者の父親のもとで育った彼の幼少時代は経済的に貧窮しており、医師に診てもらう選択は最後の最後だったからだ。

肺炎かもしれないとの思いと同時に「コロナかもしれない」との思いも当然、脳裏にあった。コロナであった場合、人に感染させてしまうかもしれないとの思いもあったが、友人の結婚式に出席することになっていたし、仕事を休むつもりもなかった。本当に立ち上がれないくらい容態が悪化するまでは、、、。

自宅のベッドで耐えに耐えたが寒さで体が震え、歯がガチガチと鳴るようになって初めて救急病棟にいった。診断は肺炎だった。同時にPCR検査も行った。数日後に陽性という結果がでた。

胸板の厚いラグビー選手のような体躯をしていてもコロナにかかるのだ。ジョーイはどのように新型コロナウイルスに感染したのか、まったくわからなかった。職場の同僚や友人を含め、周囲に無症状の感染者がいたかもしれないが、咳をしたり発熱していた人はいなかった。

ジョーイは4日間、病院の隔離病棟に入院した。その間に症状はよくなり、自宅に戻って外出せずに回復を待つオプションもあったが、州都アトランタから80キロほど離れた所にある特別検疫所に入ることにした。そこでは映画を観たりしてのんびり過ごし、人にうつすことがなくなったことが確認されてから退院が許可された。

ワッフルハウスに戻ると、同僚たちはまるでスーパースターが舞い戻ってきたかのように歓迎してくれた。「コロナ・キング」と呼ばれてからかわれもしたが、抱きしめてくれる人もいた。

彼がコロナで入院したというニュースを周辺で知らない人はいなかった。その影響もあってか、レストランの客入りはよくなかった。コロナの影響で外食そのものが減っていることもあったが、店長は長時間彼を働かせなかった。さらに悪いことに、彼の預金は底をついていた。ジョーイは普通預金はもたず、当座預金しかない。残高はマイナス3ドル33セントで、いつホームレスになってもおかしくない状況だった。

銃をもっている友人と顔を合わせた時、ショットガンと短銃が手元にあることを確認しあってさえいる。もちろん命を絶つというオプションが話題にでた。そんな時、ワッフルハウスの店長から電話が入った。「しばらく店を閉める」というのだ。ジョーイを取り巻く状況は悪い方へ悪い方へと流れていた。

ただ同時に、ジョーイはある種の楽観もたずさえていた。世界中がいまコロナウイルスの渦に巻き込まれているが、周囲を見渡すと何の変化もなかった。優しい春風が頬をなで、鳥たちがさえずり、梨の花が咲く光景は昨年の春と何らかわらない。

ウイルスが変異して、またコロナに罹患するかもしれないとの畏怖はあるが、そう簡単に人は死なないと達観するようになった。

「致死率は3.4%と聞いています。けれども生存率が96.6%という見方もできるのです」

ジョーイはいま、一時的に手の消毒液を製造する会社に雇用されている。(敬称略)

新型コロナ(3):90歳の米女性がコロナに勝つ

コロナのニュースが絶えない。感染者や死亡者は増え続けている国がほとんどで、出口が見えない。

それでも回復した方も大勢いる。昨日、米ニュースを読んでいると、西海岸ワシントン州シアトルの介護施設にいるウッドさんという90歳の女性が、コロナに打ち勝ったという話がでていた。

2月中から体調をくずしていたウッドさんがコロナウイルスに感染していることが判明したのが3月6日。以来、病院に移って隔離されていたが、「ウイルスと戦う。負けない」という姿勢をたもちつづけ、週末に回復したというのだ。予断を許さないが、明るいニュースである。

そうかといえば、18日にカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムがトランプに書簡を送付して、同州での状況の悪さを伝えた。

書簡の中で、同知事は今後8週間の感染者数を予測。人口約4000万人のカリフォルニア州民の56%にあたる、2550万人が感染するだろうと記したのだ。

あまりにも数字が大きいので驚かされるが、少なくともカリフォルニア州知事が大統領に送った公式書簡である。あいまいな予測でないことは確かだろう。さらに3月21日の米国内でのコロナウイルス感染者が過去最大の7207人になった。

これは1日だけの感染者数である。合計は2万6000人を超えている。

このままいえばアメリカが中国とイタリアを抜き、最大の感染者と死亡者をだす事態になる。このグラフを見る限り、ニューサム知事が示した2550万人という数字が大げさではないことが知覚できる。

どこかで反転させなくてはいけないと誰しもが思うが、いまは米国民だけでなく、世界中の人が同じように日々の手洗い等を含めた感染症対策を徹底するしかない。(敬称略)

新型コロナ(2):致死率は1.4%

新型コロナウイルスの話題が尽きない。メディアだけでなく、人と会ってもまずコロナの話題から入ることが多くなった。

日本で日常生活のなかで感染する可能性は数値から判断する限り極めて低いが、新型ウイルスなのでワクチンはなく、細心の注意をはらって感染を予防すべきであることは言うまでもない。

ドナルド・トランプはコロナの件では、すでに大雑把な性格を表すかのような発言をいくつもしている。2月27日の会見で、「消滅するでしょう。ある日、奇跡のようにコロナウイルスは消滅しますよ」と何の根拠もなく口にしたが、過去2週間でアメリカの感染者・死亡者は増え続けている。

ただ1918年に流行したスペイン風邪(インフルエンザ)のような壊滅的と呼べるような致死性がないのが救いといえば救いである。ウィキペディアによれば、スペイン風邪は当時、世界人口の27%が感染し、最大で1億人が亡くなったという。

しかし今回のコロナの致死率は、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」誌に掲載予定の論文によれば(1099人の患者調査)、1.4%である。今後、数字の変動は多少あるだろうが、誰もが死にいたる感染症でないことは明らかだ。

南カリフォルニア大学医学部の感染症疫学者、メリッサ・ノーランは「臨床的にコロナに特化した特徴的な症状はみられない」とし、8割の感染者は重症化しないため自宅療養で治癒すると判断している。

感染症そのものより、株価下落をともなった経済活動の低迷の方が世の中に与えるインパクトは大きいかもしれない。(敬称略)

中国と縁切る好機到来、米国が新型肺炎を最大活用:新型コロナ(1)

新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、経済に深刻な影響が出ている。

特に新型肺炎発生の地である中国はサプライチェーン(製品供給網)の中心拠点であるため、操業がストップするなどして大きな打撃を受けている。そんななか、コロナウイルスの痛打を逆利用して、昨今の流れを変えられないかと模索する一派が米国にいる。

まるでこのタイミングを待っていたかのような言説を展開してさえいる。その代表格がドナルド・トランプ政権のピーター・ナヴァロ国家通商会議議長である。(続きは・・・中国と縁切る好機到来米国が新型肺炎を最大活用