オバマが本当にやるべきこと

アメリカの国務長官ジョン・ケリーが11日、広島の平和記念公園を訪れた。広島でG7(先進7カ国)外相会議があったためで、他の外相と共に慰霊碑への献花を行ったが、広島で会議がなければ足を運んでいなかっただろう。

謝罪の言葉はなかった。戦後71年間、アメリカ政府が取り続けている原爆投下へのスタンスである。ケリーが個人的に謝罪したいと思っていたかはわからない。私人として「すみませんでした」との気持ちがあったとしても、公人としては政府の立場を守らざるをない。

オバマは5月に伊勢志摩で開かれるサミットのあと、広島に立ち寄って核兵器廃絶宣言をするとの情報もある。アメリカの大統領はいまだに広島にも長崎にも訪問していないのでニュースにはなるが、たとえ謝罪したとしても、私は「それで?」という思いでしかない。

実はオバマにはかなり期待していた。2009年1月に大統領に就任してから、本当に「Yes, we can」を形にできる大統領かもしれないと考えていた。しかも核兵器問題については、同年4月のプラハ演説で核兵器廃絶をはっきりと宣言し、それが評価されて同年ノーベル平和賞を受賞している。

けれどもその後の7年間、オバマが積極的に核兵器廃絶に動いたという印象はない。むしろ世界は北朝鮮をはじめとして、核拡散への方向に進みつつある。

オバマはアメリカの大統領である。言葉だけで終わらせずに、目に見えるかたちで核兵器廃絶を前に進めることができたはずだ。少なくとも、多方面で尽力しなくてはいけない。

政治はときに「言葉の格闘技」と言われるが、究極的には何がでたのか、何を成就させたのかが問われないといけない。そういう意味で、政治家は格闘技の試合の最後に「確かな勝利」をものにできないといけない。

5月に広島に数時間だけたち寄り、プラハ演説に似た雄弁な演説をするだけであれば、私は来なくてもいいと思う。謝罪よりも「確かな勝利」を世界中に示さなくてはいけない。それがアメリカ大統領の役割である。

ノーベル平和賞が泣いている。(敬称略)

Obama4.13.16

By the White House

ヘアロビクス?

Inidianman1.19.16

Photo courtesy of Sanat Kumar

インドで1000年以上もつづくマガメラという祭典で髪を振り乱す聖人。マガメラはガンジス川、ヤムナ川、サラスワティ川の合流地点であるサンガムという聖地で毎年行われている。

世界で最も視聴されている音楽(Youtube)

原稿を書いている時、いつもではないが音楽を聴いていることがある。

「その方が効率がいい」というわけではない。「それでも仕事ができるから」といった方がいいかと思う。科学的に音楽を聴きながらの方が効率があがるかどうかはわからない。ボリュームを抑えていれば、十分に仕事はできる。

そんな時、Youtubeはありがたい。自宅で仕事をする時はいつもパソコンを2台使うので、1台からは音楽が流れていることが多い。作業用のBGMによっては4時間以上もノンストップで曲が流れ続ける。

私の音楽の嗜好はかなり広範でジャズからクラッシック、そして昨日リリースされたばかりのロックといったぐあいである。ただヘビメタだけは体がうけつけない。

昔の曲も悪くはないが、最近はイマの時代のものを聴きたいという欲求が増している。昨晩、世界で最も視聴されている曲(Youtube)は何かと思って調べてみた。

2012年にリリースされたダンス・ミュージック「江南(カンナム)スタイル(GANGNAM STYLE)」(PSY:サイ)だった。いまさらこの曲の説明はいらないだろう。再生回数は現在までで24億7900万回を超えている。

韓国人歌手がここまで世界中で聴かれるとは本人も思っていなかったはずだ。

第2位がテイラー・スウィフトの「ブランク・スペース」。誰しもが知る歌姫だ。再生回数は13億5700万回。3位がウィズ・カリファの「シー・ユー・アゲイン」で12億6900万回。いま世界でもっとも聴かれているラッパーである。

第4位はジャスティン・ビーバーの「ベイビー」、12億6100万回。第5位はマーク・ロンソンとブルーノ・マーズが共演した曲「アップタウン・ファンク」。再生回数は12億2900万回。

トップ5はいずれも12億回を超えている。お気づきかもしれないが、全曲ダンス・ミュージックである。実に多くの国で音楽は体を動かすものというイメージがある。

というより、「世界中の国」といっても過言ではないほどダンスが文化の中に溶け込んでる。南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、中東からインドなど、音楽イコールダンスと呼んで差し支えないほどダンスカルチャーが根付いている。

そういう意味で、日本は沖縄などを除いてお酒がはいった時でも踊る人は少ない。

けれども、それもまた文化である。

「イラク政府はもう対処できない!」

10日午後、東京青山にある国連大学でイラクの現状についての少人数の会合があり、出席してきた。

イラクに常駐している国連の調整官リズ・グランデから話を聴きくと、イラクは来年になると今よりもさらに状況は悪化するという。17都市がいまイスラム国(IS)の支配下にあり、今後1100万人から1200万人が自分の家に住めなくなる可能性がある。

東京都の人口とほぼ同じ人数が自宅を追われるということである。シリアの難民問題も深刻だが、イラクの状況も悪化しているのだ。

1ヵ月ほど前の当ブログで、国連はイスラム国を殲滅させるような戦闘集団ではないと書いたとおり(国連は機能しているのか )、イスラム国を駆逐するという点で、国連は手立てをもたない。戦いは米英仏を中心とした有志連合に頼らざるをえない。

グランデが所属する国連開発計画(UMDP)は逃げだした無辜の市民に手を差し伸べることを使命とする。イラク政府はほとんど何の対処もできず、お手上げ状態であるという。

シリアにしてもイラクにしても、その惨状は日本で生活しているかぎり想像の外側にある。

会合が終わったあと、アメリカの特殊部隊の活動について訊いてみた。知っているはずだと思っていた。

グランデはアメリカ政府が発表する人数よりもはるかに多くの特殊部隊がイラク領内に送り込まれていると言った。そして「米軍は優勢で、イスラム国を叩いている」と口にした。

目をおおいたくなるような現状報告のなかで、それが唯一の希望と呼べるものだった。(敬称略)

TPPと「世の中こんなもの」

今朝は5時に起きて、ラジオ出演(ベイFM)の準備をする。今日のテーマはTPPだ。「いまさらながら」という感じではあるが、重要なトピックである。

2006年にTPPが始まった時はたった4カ国だけ(シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド)の貿易協定で、小さな集まりだった。10年になってアメリカやオーストラリアなどが加わり、日本は13年に参加。最終的には12カ国、世界のGDPの4割をしめる大きな体制になった。

TPPが各国にどういう影響を与えるかについては、いまでも賛否両論がある。弱肉強食を前提とする新自由主義に反対する学者たちは、頑なに反対した。国内の農業従事者のほとんども反対。

首相の安倍も当初は反対していたが、のちに賛成にまわる。日本の大企業のほとんどはTPP推進派で、業種によって支持と反対が鮮明になっている。

各国の産業と市場にどういう影響がでるのか、本当のところはわからないというのが正しい判断だろうと思う。

なぜか。興味深い話がある。1994年1月、NAFTA(ナフタ・北米自由貿易協定)という自由貿易を推進する協定がアメリカとカナダ、メキシコの3国間で発効した。

発効前、経済学者の多くはNAFTAによってアメリカは隣国の市場を自国のように使えるので、輸出量が増えると読んだ。それまでの貿易赤字は解消にむかうと推測した。

だが結果はまったく逆だった。アメリカの対2国の貿易収支は94年以来、赤字が増え続け、累計赤字は1810億ドル(約21兆円)に達している。

「世の中こんなもの」と言えばそれまでだが、アメリカ産業界の損失は大きい。雇用は100万超が奪われたといわれる。

さらに、世界最大の農業大国であるアメリカがメキシコに安価な農作物を輸出したことで、メキシコの農業が壊滅的な打撃を受けた。それによって失業したメキシコの農業従事者がアメリカで仕事をしようと国境を越えている。

大統領候補のドナルド・トランプは国境に万里の長城を築くと言っているが、大量の失業者をだすきっかけはNAFTAにあったのだ。

この帰結をNAFTA締結前に正確に読んだ人はほとんどいない。私はワシントンでNAFTAの交渉をずっと見守っていたが、反対派こそいたものの、いまのような貿易赤字の拡大を見越した人は記憶にない。

TPPでも同じように、発効後に予想外のことが起きる可能性は十分にある。

なにしろ「世の中こんなもの」なのだから。