やはりテレビの力は馬鹿にできない―。
アメリカのある経済誌を読んでいると、保険会社アフラックのCEO、ダニエル・アモスの記事が載っていた。署名は本人になっている。大手企業のCEOが自分で雑誌に執筆することは稀で、ライターが背後にいると考えるべきだが、文章を読む限り、こなれていないので彼が書いた可能性がある。
アフラックはアメリカの保険会社だが、日本のテレビCMに登場するまねきネコとアヒルのキャラクターが人気を集め、高い知名度を得ている。記事の中では日本の4世帯に1軒がアフラックの保険契約者だと書かれている。
本当かどうか調べると、確かに保有契約件数は国内で2000万件を超し、長年業界1位だった日本生命を抜いてトップの座についていた。会社本体の売上(08年)の70%以上は日本からである。
アメリカの保険会社がここまで伸びるとは10年前には考えられなかった。保険市場が国外企業にも開放された結果であると同時に、「♪ネコとアヒルが力をあわせてみんなのしあわせを・・・」のテレビCMに力の源泉があると思われる。記事では、CEOのアモスもその点を強調していた。
インターネット時代であってもテレビの力はすさまじい。黙っていても映像が流れでてくる強さはネットにはない。インターネットは世界中をつなぎ、数十億単位のサイトへの選択が可能だが、こちらからアクセスしないかぎり感受できない。
アフラックのアヒルのテレビCMがアメリカで放映されたのは2000年のことである。90年代後半、コマーシャル制作の担当者が「アフラック」という社名が、アヒルの鳴き声(英語)「クワック」に似ていたことから、アヒルをCMに登場させるアイデアを発案した。
以来、いくつものバージョンを制作したが、いずれもアヒルを登場させ、徐々にネームバリューが広がっていった。初年度は、100人中27人しかアフラックという名前を覚えていなかったが、2年後にはその数字は67人になった。
いまでは90%以上の人がアフラックという社名を知っている。アモスは記事の中で6500万ドル(約58億5000万円)を(広告宣伝費に)割いていると書いている。
もちろんネコが登場するのは日本のCMだけで、アモスはいまネコとアヒルのコンビをアメリカにも使おうとしている。(敬称略)