菅・バイデン会談

日本時間17日午前に米首都ワシントンで、菅首相とバイデン大統領が初めて対面による会談を行う。菅氏は日本を発つ前、こういうことを口にしていた。

「バイデン大統領と信頼関係を構築し、日米同盟をさらに強固なものにしていきたい。自由で開かれたインド太平洋の実現にむけて、日米のリーダーシップを世界に示したい」

この内容に何の異論もないが、「いかにも菅氏らしい」教科書的で無難な言い回しである。私にはむしろそこが心配である。菅氏だけでなく、首脳の周辺からも今回の会談の主な目的は、菅・バイデン両氏が信頼関係を築くことであるとの見方が伝わってくる。

もちろん会談では中台問題や地球温暖化問題、さらに中国の半導体問題まで話し合われるだろうが、菅氏はアメリカという同盟国で、かつ世界最強国に合わせていくという基本姿勢を崩さないのだろうと思う。

官房長官をやっていたとはいえ、外交のプロではない。1973年から上院議員をやっているバイデン氏が具体的に中台有事の際に、「いまの日本であれば、これくらいはできますよね」と約束ゴトを迫ってきた場合、菅氏はどこまで頷くのか、またどこまでノーと言えるのか、私にはわからない。

話の細部は外部には漏れないだろうが、どこまで菅氏は用意ができているのか。戦後ずっと日本の首相はほとんどの日米会談で受け身に回ってきており、こちら側からズケズケとものを言うべき時は言わなくてはいけない。菅氏はどこまで外交官としての手腕を発揮できるのだろうか。

バイデン政権の閣僚がほぼ揃う

バイデン政権が1月20日にスタートしてからほぼ2カ月がたち、ようやく閣僚が揃った。

「今ごろになって」と思われるかもしれないが、アメリカはいつの時代でもこのペースなのである。日本では新首相が誕生するとすぐに大臣の人選が行われ、新聞の一面にひな壇に並んだ大臣たちの写真が載る。だがアメリカでは11月初旬の大統領選が終わってからずいぶん時間があるにもかかわらず、各省庁の長官が連邦上院で「OKサイン(承認)」を出されるまでに時間がかかる。

国務長官や国防長官などはすぐだが、内務長官や労働長官などは政権発足後2カ月ほどして、というより「ほど経たないと」決まらない。昨日、ようやく労働長官が承認され、ボストン市長だったマーティ・ウォルシュ氏が新長官になった。

ただ、アメリカの場合は長官だけではなく、政府機関の官職(約4000)が政権交代ごとに入れ替わる。その中でも高級官職である1250人は、任命されたあとに各省長官と同じように上院での承認が必要になるため、新しい人材が要所につくまでに時間がかかるのだ。

建前の重要さ

バイデン新政権が誕生し、トランプ政権とはいろいろな点で真逆の相形を呈している。それは表面的な顔つき(人材)といったことから内面(政策)にいたるまで、同じアメリカ人であっても「これほど違うのか」と思えるほどである。

その中でもハッとさせられたのは、ホワイトハウスの新しい報道官の言葉であり、態度だった。ジェニファー・サキ(Jennifer Psaki)という報道官はオバマ政権時の広報部長であり、国務省のスポークスウーマンでもあった人だ。

from Twitter

バイデン政権初日の20日、記者会見でこう述べている。

「(バイデン)大統領の政治的目標はアメリカ政府に再び透明性と真実を取り戻すことです。耳にしたくないことであっても、皆さんとは真実を共有することを約束したい」

建前的な言説ではあるが、人としてこうした真っ当な理想を掲げられなかったトランプ氏とは目指すものが最初から違うことがわかる。100%実現できなくとも、少なくともそれに近づく努力はしますという姿勢と熱意が伝わってくる。

さらにマスク着用についてもトランプ政権時代とは真逆だ。サキ報道官は「ダブルマスク(2枚重ね)」を実践しているし、バイデン大統領もホワイトハウスのスタッフに「まず政権の人間がアメリカ人の手本となれ」と述べているという。まずはお手並み拝見である。