ペイリンの決断

アメリカの大統領選は9月に入って本格的なキャンペーンに突入した。

民主党からは再選をめざす現職大統領オバマが、共和党ではテキサス州知事リック・ペリー(リック・ペリーという候補 )、前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニーの2強にミネソタ州下院議員のミッシェル・バックマンを含めた数候補が追随するという戦いだ。

ペリーが参戦したことで、それまでのロムニーとバックマンの2強対決の図式が崩れ、ペリーとロムニーの2強対決へと変化した。8日にカリフォルニアで行われた共和党8候補による討論会をYouTubeで観ると、支持率で先頭をゆくペリーの大胆発言が目立っていた。それに他候補がかみついている。

オバマという彼らにとっての究極のライバルと戦う前に、同じ政党の候補たちをやり込めなくてはいけない。税制と雇用が当面は大きな論点になるが、これまでの何十年もの選挙戦と同じように、有権者は政策のよしあしだけで候補を決めはしない。それぞれがプラスアルファーを胸の内に秘める。むしろそのプラスアルファーの比重の方が大きいことが多い。

あとは前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが出馬するかどうかである。本人は今月末までに決断するとしている。彼女がアイオワ州で演説した映像を観ると、すでに大統領候補のように演説し、候補のようにメディアと接し、候補のように有権者と握手をしている。

アイオワ州は全米最初の党員集会(コーカス・予備選)の開催州であり、そのあとニューハンプシャー州へと移る。ペイリンはニューハンプシャー州にも足を運んで候補気取りである。立ち振る舞いを見るかぎり、出馬表明したくてしょうがないという空気が漂っている。

家族からの全面的支援があれば、半年前に出馬表明していたかもしれない。他候補が討論会を行うなかで、一人外野席にいて得な理由は少ない。まったく出馬する気がないのであれば、今のように全米行脚はしないだろう。

あきらかに探っている。ただ08年の大統領選でマケインの副大統領候補として惨敗しているだけに、もう負けたくないという意識が強いようにも思える。出馬する限りは勝てないと立候補しないというスタンスかもしれない。

小沢のようなキングメーカー的な立場からティーパーティー(茶会党)が推すペリーかバックマンを裏で支えるという見方もあるが、それは彼女の本意ではないだろう。

保守系TVのフォックス・ニュースの最新世論調査では、 共和党員の71%はペイリンに「出馬してほしくない」という数字がでている。それが彼女をますます悩ませる。(敬称略)

リック・ペリーという候補

アメリカ大統領選の共和党候補選びが面白くなってきた。ここまで前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニーが世論調査ではトップを走り、2番手に下院議員ミッシェル・バックマンがつけている。

前回の大統領選ブログで、このままでは来年11月オバマ対ロムニーという凡常な戦いになる可能性があり、テキサス州知事のリック・ペリーか前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが参戦すれば候補選びという点で興味の深度は増すとかいた(オバマ対ロムニー )。

13日、大方の予想どおり、ペリーが出馬表明をした。ペイリンも個人的には参戦したいはずだが、家族、特に子供たちのプライバシー等を憂慮していまだに決断がついていない。

ペリーという政治家はアメリカの政界ではよく知られた人物である。直接インタビューしたことはないが、アメリカのメディアの受け答えを聞いたことがある。シャープな切り返しができず、論客とはほど遠い印象を受けた。 

「宗教色が強すぎるよ、彼は。親切に見えるけどかなり傲慢だな」

記者仲間の評である。

            

     

                           

外見は保守派の中高年に好まれそうで、壇上に立って笑顔を振りまくだけでニュート・ギングリッチやロン・ポールよりも票が伸びそうな手合いだ。前大統領のブッシュがテキサス州知事時代にずっと副知事を務め、ブッシュがホワイトハウスに来てからはテキサス州知事である。

減税の主張者で、もちろんビジネス優先。同性愛の結婚には反対で、死刑支持者という保守本流の政治家といってさしつかえない。オバマにとってはペリーのような対抗馬の方が攻撃しやすく、戦いがいがあるかもしれない。ただ、オバマの支持率は初めて40%を切り、今後の成り行きが見ものである。(敬称略)

オバマ対ロムニー

大統領選挙を「自分のライフワーク」などと公言しておきながら、このブログで選挙について記したのは5月23日(米ロ大統領選へ) が最後である。恥ずかしい限りだ。

今日まで、共和党からはほとんど勝ち目のない候補を含めて15人ほどが出馬宣言をしている。特定の州だけで出馬宣言をしている候補もいるので実際はもっと多いが、泡沫候補が大勢いるのは日本でも投票所に行って聞いたことのない候補がリストされているのと同じである。 

来年11月6日の本選挙までずいぶん時間はあるが、候補のネームバリュー、選挙資金、選対の力、有権者の反応、世論調査、政策の良し悪しなどを考慮すると、私の見立てでは現在のところ前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー、ミネソタ州下院議員のミッシェル・バックマンの2候補しかオバマと相対するだけの力量はないだろうと思っている。

ビジネスマンのハーマン・ケイン、前駐中国大使のジョン・ハンツマン、元下院議長ニュート・ギングリッチ、テキサス州下院議員ロン・ポール、前ミネソタ州知事ティム・ポーレンティーといった候補たちがこれからロムニーを追い上げ、予備選をトップで通過するようには思えない。

アメリカ政界の事情を熟知していない人でさえ、たとえばギングリッチやポールにほとんどチャンスがないことくらいはわかる。だが、新聞やテレビははっきりと言わない。

日本で政治記者が政局を外したら左遷である。「客観性を重視する」というセリフと「上部からの強い自制」によって選挙報道にはブレーキがかかる。本気で候補を平等に扱う姿勢を貫くのなら、泡沫候補すべてを報道すべきであるが、そうはならない。同時に大胆な予測もしない。

私はどこからの影響も受けないので、これまでの経験と分析ではっきりとモノを書いていくつもりである。

2012年の大統領選が熱を帯びてくるには前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが選挙戦に入ってくるか、テキサス州知事のリック・ペリーが出馬するかだろうと思う。ペリーは出馬していないが、いくつかの世論調査では2位につけている。

もし両者が選挙戦に加わらない場合、共和党の予備選はつまらないレースになる。このまま大きな波風が立たずに来年11月、オバマ対ロムニーの戦いになる可能性もある。(敬称略)

    

                               by the White House

米ロ大統領選へ

日本では相変わらず関心が薄い米ロ両国の大統領選が、にわかに活気づいてきている。

アメリカもロシアも2012年が大統領選で、ロシアではプーチンが再び大統領選に出馬する意向を固めたとのニュースが入ってきた。だが、現職メドベージェフは18日の会見でプーチンと「対決する可能性はまったくない」と断言したばかりで、この言葉が真意であれば、もう一期大統領を務める気はないということである。

プーチンはやる気まんまんで、すでに8年間大統領を務めて今は首相として3年目。来年からの大統領任期は一期6年に改正されたため、当選すれば2期12年の長期政権となる可能性がある。すると首相も含めると24年間も大国のトップとして君臨することになり、ある意味での独裁といってさしつかえない。

プーチンが、「子分」として仕えてきたメドベージェフを追いやって大統領選に出馬し、再びロシアのトップに返り咲こうという権力への執着をみるにつけ、最高権力にすがっていたいという今の菅にも見られる我欲のすさまじさにあきれる。

エッ?「切れてないですよっ」て、、、。

アメリカのオバマも、もちろん8年間ホワイトハウスにいるつもりだ。今月12日にも書いたが(2012年大統領選: レディー・ゴー! )、出馬予定だった共和党候補の半数以上は過去10日間で進退をあきらかにした。

・ロン・ポール(下院議員・テキサス州) In (5.13.11)

・マイク・ハッカビー(前アーカンソー州知事) Out (5.14.11)

・ドナルド・トランプ(実業家) Out (5.16.11)

・ミッチ・ダニエルズ(インディアナ州知事) Out (5.22.11)

・ティム・ポーレンティ(前ミネソタ州知事) In (5.22.11)

・ミット・ロムニー(前マサチューセッツ州知事)In (6.2.11)

・サラ・ペイリン(前アラスカ州知事)

このままの顔ぶれで上記の誰かが来年オバマと戦うとなると、過去30年でもっともつまらぬ選挙になりそうである。ロムニーは直に正式に出馬表明をするだろうが、ペイリンは未定だ。

ハッカビーは「内なる自分が『辞めておけ』といったから」と牧師らしい辞退宣言をし、実業家のトランプはテレビ番組を続けるためなどと言葉を濁し、本当の辞退理由は語っていない。ダニエルズは家族が反対したためで、アメリカではよくある理由だ。泡沫候補も数人出馬しているが、オバマががっぷり四つ相撲をとる相手はいない。

1996年、クリントンの再選時、共和党からはボブ・ドールという地味な政治家が対抗馬として登場していた。堅実な上院議員だったが、選挙人数で379対159という大差でクリントンに負けた。このままではあの年のような盛り上がらない選挙になるかもしれない。

選対組織、カネ、政策、カリスマ性といった必要不可欠の要素を比較して、いまオバマに勝てそうな共和党候補は見当たらない。(敬称略)

2012年大統領選: レディー・ゴー!

日本では大きな話題になっていないが、2012年の大統領選挙が幕を開けた。

現職大統領オバマは4月5日、再選をめざすと正式に表明したが(アメリカの祭り、カミングバック!)、共和党からの”主要候補”は出遅れ気味だった。しかし5月11日、元下院議長のニュート・ギングリッチが出馬を表明し、事実上の選挙戦がはじまった(”主要候補”としたのは泡沫候補がすでに何人か出馬表明をしているため)。

本選挙は2012年11月6日とまだ先だが、前回の選挙とくらべると出足は遅い。2007年の5月といえば、民主党では主要8候補が登場して第1回討論会が終わっていた。オバマ、ヒラリー、バイデン、エドワーズ、リチャードソンといった顔ぶれである。

だが、今年はギングリッチが宣言どおりにフェイスブックとツイッターで出馬表明したものの、他の共和党候補はいまだに出馬のタイミングを見計らっている。アメリカの選挙には選挙期間が定められていないため、いつ出馬しても構わないからだ。極端な例では前回の大統領選挙が終わってすぐに出馬表明することもできる。

早く選挙戦をはじめれば有利であるとは限らない。なにごともタイミングが大切である。長期間選挙をしていても、有権者は強い関心を示さない。対抗馬がいないところで選挙活動をつづけても盛り上がらず、メディアも関心を払わない。

しかも早い時期に有権者から広い支持を集めてしまうと、あとから出馬する候補たちの格好の標的になり、1対複数候補の構図になって終盤で失墜してしまう可能性がある。ただ出馬表明すれば連邦選挙管理委員会の監視のもとで選挙資金を集めることができる。

オバマは今回の選挙で10億ドル(約800億円)を集めるつもりで4月から集金活動を行っている。共和党候補はすでに現時点でカネ集めでは遅れをとってしまった。

ギングリッチは私がアメリカに住み始めた1982年、すでに下院議員になっていた男で95年から99年までは下院議長をつとめている。ビル・クリントンがモニカ・ルインスキーとホワイトハウス内でみだらな行為を行っていたことを糾弾しつづけたが、同じ時期に22歳下の女性と不倫していたことが後になって発覚し、すっかり信用を失った。ただその女性が現在の妻である。

                                     

   

                  

政治家としても私が知るギングリッチは矛盾だらけの男で、彼にチャンスはないと思っている。(敬称略)

共和党から出馬すると思われる他人物:

・ミット・ロムニー(前マサチューセッツ州知事)In  (6.2.11)

・マイク・ハッカビー(前アーカンソー州知事) Out (5.14.11)

・ドナルド・トランプ(実業家) Out (5.16.11)

・ティム・ポーレンティ(前ミネソタ州知事) In  (5.22.11)

・ロン・ポール(下院議員・テキサス州) In  (5.13.11)

・ミッチ・ダニエルズ(インディアナ州知事) Out (5.22.11)

・サラ・ペイリン(前アラスカ州知事)他