再びオバマ対ロムニー

アメリカ大統領選は、各州の予備選が着々と進んでいる。

4月3日。ウィスコンシン、メリーランド両州と首都ワシントンの3ヵ所で行われ、前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニーがすべてで勝利を収めた。代議員数はすでに600を超えている。

これまでも書いてきた通り、共和党の代表候補はロムニーで決まるだろう(オバマ対ロムニー )。今後はオバマ、ロムニー両陣営が互いをどう攻撃していくかに関心がシフトされる。すでにロムニーは共和党ライバルより、対オバマを意識した発言を増やしている。

いまはまだ前上院議員サントラムや元下院議長ギングリッチがロムニー批判を弱めていないが、今後1ヵ月ほどで共和党はロムニーに候補を一本化することになるだろう。そうなれば、これまでロムニー支持でなかった共和党保守の福音派の人たちも彼を推すことになる。

彼らにしてみれば、「オバマよりはロムニーの方がまだまし」であり、オバマを倒せるかもしれないとの願望がある。

私の予想は昨年からオバマ有利で変わっていない。いや、最近になってオバマ再選の可能性がより高くなっているとの判断だ。(敬称略)

by the  White House

米大統領選:予想どおりの展開

アメリカ大統領選の共和党の戦いは、予想どおり前マサチューセッツ州知事のロムニーが党の代表候補となりそうだ。

日米の主要メディアは前ペンシルバニア州上院議員のサントラムの躍進をしきりに説いたが、「時すでに遅し」というより最初から可能性はなかった(残りカスのサントラム )。

新聞・テレビは大胆な予想はしないし、外せば問題になるので無難な表現しかしない。だが、今年の選挙はスタートからほとんど結果が読めていたという点で、つまらない戦いだった。自慢ではないが、昨夏の時点でロムニー以外の候補に圧倒的な強さはなかった(オバマ対ロムニー )。

「いくらなんでも判断が早過ぎないか」

そう思われる方がいるかもしれない。確かに予備選は6月下旬まで続く。共和党からの指名を受けるためには、各州から代議員数を1144人以上集めないといけない。ロムニーは3月20日時点で560人。ほぼ半数である。

だが2番手につけているサントラムは246人。ギングリッチは141人。ロン・ポールは66人。今後サントラムが指名を受けるためには残りの州で、代議員を4分の3以上も獲得する必要がある。事実上、もう勝負はついてしまった。ギングリッチに至っては残りの9割を獲得しなくてはいけないので、早く撤退した方がいい。

それでも、敗者にもそれぞれの思いがあるのが選挙で、客観的にもう勝ち目がないとわかっていても、すぐに辞める決断はできない。4年前、オバマと戦って負けたマケインは2000年の選挙でもブッシュに負けた。その頃を振り返り言っていた。

「頭では勝てないこととわかっていた。でも周囲の熱烈なサポーターは『行け、行け!』と言うし、自身の心も『まだ行けるかもしれない』との思いがあった」

当事者でなくてはわからない辛さである。(敬称略)

スーパーチューズデーから見えるもの

やはり取材は現場にでてみないとわからない。

全米10州で同日予備選が行われた大統領選のスーパーチューズデー。渡米してTVニュースを観ても、新聞を地元紙からウォールストリート・ジャーナル、USAトゥデイまで眺めても選挙の話でもちきりである。

まして予備選の激戦地と言われたオハイオの州都であれば、選挙で揺れているかと思った。だが、町に取材にでて拍子抜けする。

静かなのである。候補の名前が書かれたサイン(アメリカでは顔写真のポスターは貼らない)はほとんど見られず、候補のボランティアたちは集会にはかり出されるが、町中での目立った活動はない。

アイオワやニューハンプシャーは凄まじいが、オハイオはその他の州の一つのようだ。コロンバスではロムニーの選挙事務所も中心部から離れた場所にあり、1階にもかかわらず道路から判別できないような計らいがなされている。

予備選当日。オハイオ州は午前6時半から投票所が開く。コロンバス市内と郊外の2カ所に足を運んだが、出足が悪い。有権者は喜んで誰に一票入れたかを話してくれるが、CNNやFOXニュースの騒ぎ過ぎと実際の州民との間にはあまりにもかけ離れた温度差がある。

選挙結果は、都市部で票を伸ばしたロムニーがサントラムを押さえて辛くも勝った。選挙区別にみると、ロムニーは08年にオバマが押さえたところを獲っている。ヒラリーは農村部を奪ったが負けた。サントラムはヒラリーの轍を踏んだことになる。

ロムニーはこのまま他州で代議員数を伸ばして共和党の代表候補になる確率が高い。だが候補として、政治家として脆弱である。エリート意識の強さも鼻につく。

何度も書いているが、11月の本選挙で勝てる候補には思えない。(敬称略)

オバマの新たな敵

負けることはほとんど考えられない、くらいである。

誰がかと言えば、オバマがである。

共和党の予備選で候補同士が傷つけ合っている中、オバマは平然と選挙資金集めに奔走している。3月1日、ニューヨークではオバマの支援者が1人3万5800ドルというディナーパーティーを開く。

長年大統領選をみていると、ごくごく普通の催しなのだが、オバマの選対は水面下でこうした献金活動を繰り返しているのだ。オバマがこれまでに集めたカネは、共和党のトップを走る前マサチューセッツ州知事ロムニーの約2倍である。

戦後67年の米国史で、こうした状況で現職が負けた例はない。より多くの選挙資金を集めた候補が勝つ。逆に私はこの法則が、誰かに破られてほしいくらいである。カネで票が買えるという流れを誰かに断ち切ってほしい。

28日早朝、ロムニーの選対委員長マット・ローデスからメールが入った。ローデスと個人的に知り合いなわけではない。単にジャーナリストとしてメルアドを先方に伝えてあるだけだ。

メールには驚くべき内容が書かれていた。

オバマ選対がロムニーを攻撃する選挙活動をスタートさせたというのだ。28日にはミシガン州で予備選がある。そこでロムニーのライバルのリック・サントラムを勝たせるために、オバマ側が動いているというのだ。

オバマが共和党の特定候補を間接的にでも支持する動きは前代未聞である。仮にも大統領だ。それだけ、11月の本選挙ではロムニーと戦いたくないということだろう。(敬称略)

残りカスのサントラム

アメリカ大統領選の共和党レースで、元ペンシルバニア州上院議員のリック・サントラムがミット・ロムニーを抜いて、支持率でトップに躍り出ている。

昨年末まで支持率で5%を超えることはなかった候補である。1月末でも15%前後をさまよっていた。だが元下院議長のニュート・ギングリッチの支持率が急下降したのと反比例するように、サントラム支持が急拡大。

共和党保守は穏健派のロムニー以外で候補を擁立したいとの思いが強い。つい数週間前まではギングリッチにその思いをたくしていたが、ロムニー陣営によるネガティブキャンペーンによってギングリッチは命を取られたといえるほど打撃を受けた。もう復活はない。

それに代わって登場したのが若いサントラムだ。

       

                            

ブッシュ前大統領と似た外交路線を信奉し、保守本流とよべる社会政策を主張している。そこに共和党右派勢力は、「我々の意見を代弁してくれる候補がいた」といった安堵感を覚えもする。

だが全米レベルでの選挙基盤は脆弱だ。選対のホームページも大統領候補としてはあまりにもお粗末な出来である。資金もロムニーやオバマに比較すると無きに等しい。消去法の最後に残った候補という印象だ。

本当に優れた候補であれば、昨夏の時点で頭角を現してしかるべきだった。だが、ミシェル・バックマンが消え、リック・ペリーが辞退し、ハーマン・ケインも脱落し、ギングリッチが終焉を迎えて、まるで「残りカス」のようにそこにいたというのがサントラムである。

個人的な思いを書かせて頂ければ、ロムニーが勝ち進んで今年11月にオバマと対戦することの方がオバマ陣営にとっては喜ばしいはずだ。というのも、オバマ陣営は過去1年、いかにロムニーをたたき落とすかの戦略を練り込んできているからだ。

サントラムは未知数が大きい。その分、捕らえにくい。(敬称略)