依然として僅差の米大統領選

11月6日のアメリカ大統領選投票日まで3ヵ月ほどになった。

今月27日からはフロリダ州タンパで共和党が夏の党大会を、9月3日からはノースカロライナ州シャーロッテで民主党が党大会を開く。そこからが現職オバマと挑戦者ミット・ロムニーによるエンジン全開の戦いが始まる。

相変わらず僅差の戦いが続いているので、大手メディアや学者は大胆に予測しない。私は僅差の戦いでありながら、オバマ再選と書き続けているので、今でもそのスタンスは変わらない。 

確かにオバマの支持率は高くない。というよりも落ちてから留まっているという表現がふさわしい。ギャラップ社の最新世論調査では、オバマの支持率は45%。不支持率が48%で、4年前の熱狂はない。

政府が多くの規制をつくり、社会に関与しすぎるとの考えは保守層だけでなく穏健派の人たちにも広がっている。ただ、それだからといってロムニーの支持率がオバマを圧倒する状況にはなっていない。

全米レベルの失業率は8.3%で高止まりしているが、インフレ率は安定している。昨年8月に3.8%だったインフレ率は最新の数値(6月)では1.7%まで落ちている。

失業率が高くてスーパーの棚にならぶ商品がどんどん値上がりしていたら、市民は必然的に現職大統領を見捨てる選択をするが、物価上昇は見られない。これは現職には追い風だ。

さらに選挙対策本部がこれまでに集めた資金総額をみると、オバマ陣営が約3億ドル(約234億円)に対し、ロムニー陣営は約1億5300万ドル(約120億円)と相変わらず2対1の比率である。カネという要因だけをみると「オバマが負けるわけがない」ということになる。

けれども専門家によっては今、アメリカの経済成長率が鈍化しているので、僅差でロムニーが制すると予測する人も出ている。今月末まで大統領選は「盛り下がり」の時期だが、党大会以降はいよいよ本格始動する。(敬称略)

オバマ家の愛犬「ボー」。   by the White House

なかなか大変なこと

私にとってはかなり大変なことが進行している。

何がかというと大統領選である。昨夏頃から、今年の選挙は現職オバマと共和党ロムニーの戦いになり、たぶんオバマ再選という流れになると書いてきた。

早くから予測することに大きな意味はないが、さまざまな要因からそう導きだせていた。その一つが選挙資金である。現在でも集金総額ではオバマ陣営の方が勝っているが、5月と6月の集金額はロムニーがより多く集めている。

この時期に2ヵ月連続で、現職大統領がライバル候補に集金額で負けるということは異例である。拙著『大統領はカネで買えるか』(角川SSC新書)で戦後67年間の大統領選挙の歴史で、より多くの選挙資金を集めた候補が勝つという現実を示した。

「カネですべてが買える」という考え方は好きではないが、多額のカネで莫大な政治的影響力を手中にできることは疑いようのない事実である。

6月、オバマ陣営(スーパーPACを含まず)は約7500万ドル(約60億円)を集めたのに対し、ロムニー陣営はなんと約1億600万ドル(約84億8000万円)も調達している。

これは何を示しているのか。

テレビやラジオ広告による批判広告の本数が増加し、ロムニー側による攻撃機会が増えるということである。

現時点ではオバマが依然として僅差でリードを保っているが、今後4ヵ月でロムニーがいまのペースでカネ集めを続けると結果はわからない。

11月は接戦である。(敬称略)

大統領選、いまだオバマ有利

しばらくアメリカ大統領選の話題を書かずにいた。

というのも、共和党の代表候補が実質的にロムニーになり、11月6日の戦いがオバマ対ロムニーに決まったので、夏の党大会まで大きな動きがないからだ。

ただ過去1週間で、私はオバマ陣営とロムニー陣営の両方から献金をうながす電子メールを受けとった。オバマ陣営は「5ドルでいいですから献金してください」というお願いだった。

一方のロムニー陣営のメールは「3ドルでいいですから」と切実で、その裏には「このままではオバマに負けてしまいます」という言葉がついているようにさえ思えた。

昨年から、誰が共和党の候補になるのか大手メディアは騒いだが、私は昨年7月にすでに両者の対決になると踏んでいた(オバマ対ロムニー )。選挙資金から選対の組織力、候補のカリスマ性、政策など多面的に選挙を追い、アメリカ国内の息づかいを感じれば、誰が候補になるかは自ずと見えてくる(テレビ効果 )。

現時点で11月の選挙を予想しろと言われれば、「オバマ再選」と書く。ただ僅差だ。オバマの得票率は51%前後になるだろう。

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共和党の人間は最初から反オバマで動かないし、民主党の人間がロムニーに票を入れるわけもないので、無党派層の人たちがどう動くかで決まる。ただロムニーには現職オバマを圧倒するだけの資金力もなければ政界に一大旋風を起こすだけの疾風力もない。

ここまでの集金力はオバマ陣営の約175億円に対し、ロムニー陣営は約80億円。比較にならない。戦後67年、集金力にこれほど差があって現職が負けたことはない。

大統領選の予測分野におけるプロであるイェール大学のレイ・フェア、バージニア大学のラリー・サバト、エモリー大学のアラン・アブラモウィッツといった専門家も現段階ですべてオバマ再選を予測している。

すべて当たってしまうとつまらないが、学究的な当選予想モデルなので意外なほど当たるのである。(敬称略)

米大統領選:中だるみの季節

共和党レースから前ペンシルバニア州上院議員のリック・サントラムが撤退した。これで11月6日の本選挙はオバマ対ロムニーの戦いになる(再びオバマ対ロムニー )。

予備選はまだカリフォルニア州やニューヨーク州など大州が残っているが、代表候補がほぼ確定したことで有権者の関心は急激にうすれ、残りの予備選は形だけのものになっていく。投票率も10%を切るだろう。

例外的に第3政党や独立候補が登場する余地も残されているが、その可能性は大変低い。

そうなるとメディアの関心も夏の党大会(共和党は8月27日から、民主党は9月3日から)が開催されるまで低下し、大統領選は中だるみの季節へと突入していく。

インターネットの時代でありながら、この悠長さはいったいどうしたことだろう。200年前であれば、ネットどころかテレビもラジオもなかったので、長い時間をかけて候補の考え方や人物を知るために長期間の選挙期間は価値があった。

だが、光の速度で動く時代に昔ながらのペースは合わない。いまはネットでありあまるほどの情報も入手できる。3ヵ月もあれば候補を知り、討論会を何度か開いて政治家としての力量を計ることができる。期間を限定すれば選挙資金も少なくてすむ。

アメリカは「革新」が好きな国だが、大統領を選ぶプロセスだけは改革されないままだ。実際は、政治学者が数え切れないくらい改革案を提示し、議員が法案を提出しているが、法律を修正するまでにはいたっていない。

今後、オバマとロムニーの政策の違いを少しずつ記していきたい。(敬称略)

再びオバマ対ロムニー

アメリカ大統領選は、各州の予備選が着々と進んでいる。

4月3日。ウィスコンシン、メリーランド両州と首都ワシントンの3ヵ所で行われ、前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニーがすべてで勝利を収めた。代議員数はすでに600を超えている。

これまでも書いてきた通り、共和党の代表候補はロムニーで決まるだろう(オバマ対ロムニー )。今後はオバマ、ロムニー両陣営が互いをどう攻撃していくかに関心がシフトされる。すでにロムニーは共和党ライバルより、対オバマを意識した発言を増やしている。

いまはまだ前上院議員サントラムや元下院議長ギングリッチがロムニー批判を弱めていないが、今後1ヵ月ほどで共和党はロムニーに候補を一本化することになるだろう。そうなれば、これまでロムニー支持でなかった共和党保守の福音派の人たちも彼を推すことになる。

彼らにしてみれば、「オバマよりはロムニーの方がまだまし」であり、オバマを倒せるかもしれないとの願望がある。

私の予想は昨年からオバマ有利で変わっていない。いや、最近になってオバマ再選の可能性がより高くなっているとの判断だ。(敬称略)

by the  White House